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第十一話 ザベラ砂漠へ

「おー、ここが我らの拠点か」

「うわぁ。ファルク王からって時点で予想してたけど。想像をはるかに超えてきたわね」


 俺達の家と言う名の拠点。

 そこへ、さっそく客人が訪れた。

 永炎の絆により闇の炎を宿した仲間達。母さん、シャルルさん、ファリーさん、フェリーさんの四人。

 

「不思議なところだ。まさか空間が歪められているのか?」

「わあ、こんな大きな屋敷があるなんて。あっ、奥に森もあるよ。ファリー」


 空間転移ができる魔道具―――一瞬でとべるくんを母さん、シャルルさん、ファリーさんの三人に渡しているためここへは一瞬だ。ミウもかなり張り切っているため次々に量産されていっている。

 

「ふっふっふ。いよいよだな。我らエンフィリノスが世界に名を轟かせる時がきたのだ!!」

「別に轟かせなくともいいだろう、駄狐」

「なぁに、世界中で活動していれば自然と轟くことになる」

「こーら、シャルル? あたし達は、有名になるために活動するんじゃないわよ? そこのところ理解してる?」


 シャルルさんが子供のようにはしゃいでいると母さんとファリーさんが、呆れた様子で声を漏らす。

 

「心配はない。我は、このうえなく高揚している! 願わくは、鍛え上げたこの炎でイア・アーゴントを燃やす尽くしたい気分だ!!」


 本当に大丈夫なのか? と思う返しをしながら右手から紫炎を生み出すシャルルさん。炎の大きさから、相当成長したんだということがわかる。

 さすが、炎の扱いに長けた仙狐族と言ったところだろうか。


「はあ……まったく、学園の仕事よりも楽しそうね」

「こいつ。なんで学園なんて創設したんだ?」

「あ、あははは。そ、それよりもヤミノくん達は、これからザベラ砂漠に行くんだよね?」


 ファリーさんの言葉には、苦笑いをしながらもフェリーさんは、話題を切り替える。

 そう。これから俺達は、次に所在がわかっている闇の炎の化身であるフレッカのところへ行くことになっている。

 これまでの三人と違って、どうやら動いているようだ。なにが原因なのかは、三人もわかっていないようだ。


「はい。今、行けるのはザベラ砂漠だけですので」


 ザベラ砂漠はまったくの無法地帯。

 過酷な地であり、何が起こってもこちらのルールなど関係ない。仮令、人が死んでも……。


「あんた達なら大丈夫だろうけど、気をつけなさいよ?」

「わかってる。母さんも、敵がまた攻めてくるかもだから」

「はいはい。無理はしないわよ」

「私達は、ここに残る。森を調べたいからな」


 そう言って、ファリーさんは奥にある森林地帯を見詰める。確かに、俺達も調べていない場所だし。エルフだったら、色々わかることもあるかもしれない。

 

「お願いします。それと」

「わかっている。救援要請が来た場合は、私達が行こう」

「ファリーさんもよろしくお願いします」

「うん。まだ炎をうまく扱えないけど、頑張るね」

「安心するがいい! 我もここで待機している!!」


 むふん! と腰に両手を当てながら言い放つシャルルさん。が、そんなことは許さないとばかりに母さんが、背後に回り込み笑顔を作る。


「シャルルー?」

「ぴょっ!?」


 これで何度目か。母さんに怯えたように声を上げるシャルルさんの姿を見るのは。


「だめよ」

「し、しかしカーリーよ! 我もエンフィリノスの一員! 多少のことは許されるだろう!?」

「そう言って書類仕事から逃げたいだけじゃないの?」

「そそそ、そんなことはないぞ?」


 なんてわかりやすい反応なんだ。

 

「それに、書類仕事ならば、ここでもできるだろう? な? ヤミノくん!!」


 そこで俺に振るんですか?


「いや、まあ……その通り、ですけど」

「ほれ! それに最近は真面目にやっているだろう?」

「それが当たり前なの。……まったく、しょうがないわね」


 一応、立場的にも年齢的にもシャルルさんの方が上なはずなんだけど。どうにも母さんには、弱いようだ。とはいえ、二人の仲は良好だから、嫌っているわけじゃないというのは確かだ。


「パパ―! そろそろ出発だよー!」

「ああ!!」


 母さん達と話しているうえに、時間になった。

 準備を終えた妻子達が屋敷から出てくる。


「なんだか家族旅行にでも行くみたいな雰囲気だな。これから向かうのは、無法地帯なんだろ?」

「ははは……」


 確かに、そう言われると。

 本来なら、あんな明るい雰囲気にはならない。これから向かうのは、こちらのルールが通用しない無法地帯なのだから。

 とはいえ、彼女達にとっては仲間に会いに行くみたいな感じなんだろう。


「馬鹿め! 暗いよりは明るい方がよいだろう!」

「馬鹿はお前だ、駄狐。遊びに行くわけじゃないんだぞ」

「と、とりあえず。俺達は、行きますから。後のことは頼みましたよ」

「うむ! 任せてくれたまえ! もし、イア・アーゴントが現れようとも我が掃討してやろう!!」

「私も今度は後れを取らない。まあ、とりあえずはここの森を調べるのに専念だな」

「気を付けてね、ヤミノくん」

「頑張りなさいよ」


 仲間達に見送られ、俺は赤炎の化身たるフレッカが居るザベラ砂漠へと向かうのだった。

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