第六話 新しい武器
「やほー、来たよ。ミウちゃん」
「おお。来たか、エルミー。ヤミノも居るようだな。どうだった? 屋敷を見た感想は」
「ざっと見ただけだけど、今日からここで生活するって考えたら、慣れるまで大変だなって」
屋敷の探索は一通り終わったが、ざっと確認しただけ。
まだまだ入れない、見ていない場所は多くある。
他にも外がある。
だが、そこは後にして一度ミウのところへやってきた。ヴィオレット達と行動を共にしていたミウズから連絡を受けたんだ。
ミウが用があるから後で来てほしいと。
「ん? ヴィオレット達はどうした?」
「ヴィオレットとアメリアは、昼食の準備をしてるところだ。ミウズと一緒にな」
「おぉ、それはいい。たくさん学ばせてミウズを成長させてくれ」
「ミウちゃんは、教えないの?」
と、ミウの隣に座り込み問いかけるエルミー。
「ミウは誰かに何かを教えるのが下手なんだ」
「まあ、漫画で学ばせようとする時点で察しはついてました」
「はっはっは。言うじゃないか、黄色いの」
「誰が黄色いのですか。自分はリムエスです」
「そそ。あたしのお母様なんだから、ちゃーんと覚えておいてよ?」
そうかそうか。それは悪かった、と謝りながらミウはテーブルの上に長剣と短剣を一本ずつ置いた。
あれ、これって。
どこか、俺が以前使っていた武器に似ているなと思いながら見詰めていると。
「ヤミノ。お前を呼び出したのは、この武器をくれてやろうと思ってな。聞いた話だと、リムエスとの試練でぶっ壊れたんだろ?」
「うっ……」
別に責めているわけではないのだろうが、ミウの言葉にリムエスが表情を曇らせる。
ちなみに、あの武器が母からのプレゼントだったということをリムエスは知っている。そのためか、試練とはいえ大事なものを破壊してしまったことを悔いているんだ。
俺は、気にするなと言ったんだが。
「こいつは、エルミーと一緒に作った武器。名付けて、炎魔武装ヤミノ―!」
「……」
「む? なんだその不満そうな顔は」
「あ、いや」
「炎魔武装だけでいいのでは?」
「なにおぉ!? ヤミノ―は必須だ! というか喜べ! お前達の夫の名前が入ってるんだぞ!」
相変わらずのネーミングセンスにどう反応していいか困っていると、リムエスが代わりに言ってくれた。ミウはミウで、自分のネーミングには絶対の自信があるらしく一歩も引かない。
ま、まあ名前はともかくとして……いや、正直自分の名前が入った武器を使うとか、その……は、恥ずかしいというか。
「炎魔武装ってことは」
「察しの通りだ」
俺は実際に手に取って感触を確かめる。俺が以前使っていた長剣と短剣に似ているが……。
「ヤミノ。魔力を流し込んでみろ」
「ああ」
言われた通り魔力を二本の剣に流し込む。
すると……簡易魔剣のように魔力の刃が纏うように形成された。
「そいつに使っているのは、アグリ鉱山のダンジョン。その最深部で採れた特殊な鉱石と魔石を使っている」
「それをあたしが形作ったってわけ」
「以前の武器とは違い魔力伝達率に加え闇の炎耐性も段違いに上がっている! ちなみにこいつは現在大量生産中だ。来る戦いに向けてな」
闇の炎に耐えられる武器。
俺達が欲しているもののひとつだ。
「頼んだぞ、ミウ」
「言われなくても。そもそもミウはミウが作りたいから作っているだけだ」
そうだとしても、これからのことを考えればミウの力は必須。
「エルミーもな」
「まっかせてー!」
「さあ、作業に取り掛かるぞ! ミウズ! お前達は、素材の調達! それと簡易魔剣の制作も並列して行うんだ!!」
「了解です」
「……」
さて、邪魔にならないようにそろそろ出ようか、と思ってるとリムエスがミウのことを見詰めているのに気づいた。
「どうかしたのか? ミウを見て」
「ミウを見ているとフレッカのことをつい思い浮かべてしまうんです」
「確か、赤炎の」
「はい。自分勝手というか、子供っぽいというか。やりたいことをやり、やりたくないことはやらない。そんな感じなんです、フレッカは」
なるほど。そういう意味では、シャルルさんも似てる、のかな。
シャルルさんも、見た目は子供というか小さいし。
やりたいことをやり、やりたくないことは姿を変えてでも逃げる人だからな。まあ、結局母さんに見つかって強制的に連れ戻されてしまうんだけど。
「主。もしフレッカが主に失礼なことをしたら、自分がお仕置きをします」
「な、仲良くしような?」
「ええ。こちらはそのつもりですが、フレッカは問題ばかりを起こします。ゆえに、お仕置きは必須なのです」
赤炎のフレッカ。
現状居場所がわかっている最後の闇の炎。リムエスの反応通りなら、これまでの三人よりもかなり厄介そうだ。
しかも、彼女が居るところは……砂漠地帯、だからな。