第二話 親子の交流?
「というわけで、ミウはさっそく魔道具制作に取り掛かる」
「あ、じゃあ後で手伝いにいくねー」
さっそく仕事をしようとするミウにエルミーは手を振る。
俺達も、これから住むことになる屋敷内を探索しようと、入れ替わるように中へ入ろうとすると。
「そうそう。屋敷を探索するなら、色々注意しておくんだぞ」
「注意?」
ミウに呼び止められる。
「この屋敷は、普通じゃない。いくつか特殊な結界で厳重に守られている部屋があった。なんというか……うん。まあ無理に入ろうとしなければ大丈夫だ」
うん、大丈夫だろう! と言いながら去って行くミウを見詰めながら、俺は思った。
「いや、そう言われたら余計に心配になってくるんだが」
その時、俺の脳裏にはミウの屋敷にもある扉が浮かぶ。
無理に入ろうとすれば、攻撃を受けるという扉。
そういうものが、この屋敷内にもあるということなんだろう。確かに、結界で隠すほどの屋敷だ。普通じゃないっていうのは承知していたが……。
「くふふ。なんだか楽しくなりそう。ね? お父様」
「なにが楽しいものですか。もし、それが主に害するものであるなら即刻排除しなければなりません」
と、楽しむエルミーと違って、リムエスはいつでも俺のことを護れるように前に出た。
「ご安心ください、主。仮令、小さきこの姿であれど、お守りしてみせます!」
「やぁん! 張り切るお母様可愛いー!」
「じゃあ、僕はちょっと眠いからヤミノの中で寝るから」
「あ、お母さん! ……行っちゃいましたね」
屋敷に入る前に、大きな欠伸をして俺の中へ入ってしまうエメーラ。
「まったく……相変わらず怠惰ですね、エメーラは」
「寝るならそのままでもよかったのにね」
おそらくエメーラを抱き締めたかったのであろうエルミーは、俺の体を人差し指でつんつんと突いてくる。
「そ、それは、ヤミノの中が心地いいから、だと思うよ。エルミーちゃん」
「そうなの?」
「ママの言う通りだよ。私も何度か入ったことあるけど、とっても心地いいんだ。パパの中」
「むむ! そうだったんですか!? 私は一度も入ったことがないですから、今度……いいえ! 今すぐ入ります! とおー!!」
「ちょっ! ララーナ!?」
俺の中とやらに興味を示したララーナは、緑炎となって飛び込んでくる。
そういえば、アメリアとも精神世界のようなところで対話をしたから、一応は子供でも入れるのか。
「そうだ! 今度、お父様の体内でパーティーしちゃおうよ! 絶対楽しいから!」
「馬鹿なことを言わないでください。守るべき主の中で馬鹿騒ぎをするなんて……自分はやりませんからね」
「あ、それってつまりー。お父様を独り占めしたいってことかにゃー? お・か・あ・さ・ま?」
「なな!?」
ははは、また始まった。エルミーのリムエス弄り。
「だって、あたし達がお父様の中に入ったとして―。お母様は残るんでしょー? てことはー、お父様と二人っきりってことでしょ?」
「そ、それはそう、ですが。別にやましいことを考えてはいません! あくまで、主の盾として常に傍に居ようよしているだけで……こ、これはガチですから!」
「えー? ほんとーにー?」
「こらこら。あんまりリムエスを虐めるなって」
リムエスの反応を楽しんでいるエルミーを、俺は止めるべく頭をタップする。
「あ、主! さっきにはマジですから! 自分は主を守りたい一心でですね」
「わかってるよ。ありがとうな、俺のことを想ってくれて」
「と、当然です! 主として認めた方ですから」
ふふん、とドヤ顔をするリムエス。なんだか、犬の尻尾とかがあったらぶんぶんと振ってそうな感じで可愛く見えてしまう。
エルミーを見ると、俺と同じことを考えているのか。にやにやと高揚した表情でリムエスを見詰めていた。
「さて、いつまでも入口にいないで中に入ろう」
「だね。どんな感じなんだろう。楽しみ!」
「今日から、ここが愛の巣になるのかー。じっくり探索しなくちゃ」
「あ、愛の巣……」
「変なことを言わないでください! エルミー!!」
などと言い合いながら、俺達は屋敷内へと入っていった。