第三十九話 世界を脅かす者達
『ふむ。大分データは集まった。これで次の段階に移行できる』
仮面の男は、円柱形の入れ物を差し込み口へ入れる。
すると、周囲のいくつも設置されてある巨大な入れ物が振動する。
『これでいい。ん?』
その時、一際巨大な入れ物からビー! と音が鳴り響く。
『ようやくか』
待ち望んでいたとばかりに仮面の男は入れ物へ近づく。
『おはよう。気分はどうだ? マギア―』
開かれた巨大な入れ物からは、大量の蒸気が噴出する。
中に入っていたのは、真っ白な髪の毛に真っ白な鋼鉄の体を持った女性のような人形。
『……ええ。悪くない気分だわ』
マギア―は、身を起こし何度も体の節々を確かめる。
『前回の戦いで大分壊れていたけど、あれからどれくらい経ったの?』
『さあな。我らにとって時間など意味のないもの。だが、少なくとも数百万年は経っているんじゃないか?』
『あら、そんなに経ってたのね。随分と寝坊しちゃったわ』
『私も、最近目覚めたばかりだがな』
『それで、ご主人様は? ロヴィウス』
マギア―の言葉に仮面の男―――ロヴィウスは、被りを振る。
『まだ時間がかかりそうだ』
『はあ……もっとうまくいくはずだったのにね。本当にやられたわ。まあ、もうあの厄介な女はいないだろうし。後は』
『そうもいかない。まだ炎の意思は残っている』
その言葉を聞きマギア―はへえっと呟く。
『それは良いことを聞いたわ。また遊べるのね』
『現状は、纏めたデータをインプットしろ。お前が思っているほど、今の世界はあの時より変わっているぞ』
踵を返し、ロヴィウスはその場から去ろうとする。
『あら? どこに行くの? もう少し、わたくしとお話しましょうよ』
『私も暇ではないのでな。我らが神のために、やることが山積みなんだ』
『ひどいわね。まるでわたくしが暇みたいに』
不満げに言うマギア―だったが、すぐ自分の体を撫で天を仰ぐ。
『待っていなさい。今度こそ、吹き消してあげるわ』
・・・・
「おお! 本当に転移できたぞ! さすがミウだな!!」
「ふふん! ミウに不可能はない! ただし! 使い手が一度訪れたところにしか転移できず、使用回数は二回! 二回使い切れば、しばらくの魔力チャージが必要となる」
「どれくらいかかるんだ?」
「丸一日だ!!」
「おいおい。長いな」
「馬鹿を言え! 幻とも言える空間転移を魔道具ひとつで二回も使えるんだぞ! 一日ぐらい我慢しろ!!」
天才発明家であるミウのおかげで、消費が激しい空間転移を使える魔道具が完成した。今は、それを使ってファルク王がミウの居る島へと転移してきたのだ。
今は、エルミーの協力のもと大量とはいかないが、同じものを生産している。
魔道具の名前は一瞬でとべるくんである。何度も思うが、ミウのネーミングセンスは独特だ。本人が言うには、最後にくんをつけるとしっくりくるんだそうだ。
ちなみに、一瞬でとべるとべるくんの使い方は簡単。
円柱形の魔道具なのだが、上下をしっかり掴み開く。
すると、中にある特殊な魔石に刻まれた術式が発動し、使い手の思い浮かべた場所へ転移することができるのだ。
「悪かった、悪かったって。そう怒鳴るな。さて、ヤミノ。新たな闇の炎の力を得て、空間転移ができる魔道具も完成したわけだが」
「はい」
ミウはまだ言いたいことがあるようで、むっとしながらファルク王を睨んでいる。
しかし、それを無視してファルク王は話を続けた。
「決めなくちゃならないことがある」
「決めなくちゃならないこと?」
覚悟、はもう決めた。
これから、どうするかも決めた。
まずは、今確認されている全ての闇の炎と一体化をし、永炎の絆でイア・アーゴントへ対抗する術を世界中に広げる。
そのためにも、ファルク王やマルクスさんの協力の下、ことを進めている。
後、決めることと言えば……なんだ?
「大事なことがあるだろ」
「す、すみません。まったく思い浮かばなくて。お教えいただいてもいいですか?」
俺の問いかけに、良いだろうとばかりにマントを翻す。
「お前達の組織名だ!!」
「組織名?」
「そうだ。やはりやるからには徹底しなくてはならない。そこで、ちゃんとした組織として形作る必要がある。その方が、色々と動きやすいってものだ」
そうか。なんだかんだでただの集まりみたいな感じでやっていたけど。これから世界中で協力し合うなら、そういうのもちゃんとしないといけないか。
「ちなみに、お前がリーダーだ」
「俺が」
「なに、リーダーだからって全てを押し付けるわけじゃない。俺達も、協力する」
もの凄い重圧だ。世界を守るための組織。そのリーダーをやるというのは。
けど、やるって決めたんだ。それに、俺は一人じゃない。それがわかっているからか……落ち着いている。
「……よし」
「決まったか?」
自然と頭に思い浮かんだ名前。
それを俺は。
「俺達の組織名は――――」
これにて第二章は終わりです。一章より早いような気がしますが。次回からは、第三章が始まります!