第三十八話 天才職人エルミーちゃん
ついに一万を突破しました。
またひとつ壁を越えたということで、更に気合いを入れて書いていきたいと思います!
トードでの騒動から早三日。
あれから、イア・アーゴントが現れたという情報はない。相手も、力を蓄えているのだろうか。それとももっと他の……どちらにしろ、この三日の間で目的のものは完成した。
「はーっはっはっは!! 見ろ! さすがミウだ!! 天才!! ついに空間転移を使える魔道具を完成させたぞ!!」
この三日の間、俺達はミウのところに滞在していた。
当然、ただ滞在していたわけじゃない。
魔道具制作の手伝いを始め、新たな戦いに向けての訓練をしていた。島に滞在している間は、ファルク王やマルクスさんから常に情報を聞いているので、何かがあった場合はすぐに駆け付けられる。
「おお、これが」
「なんだか細長いね」
「ちなみに、この天才発明家の手伝いをしてくれた天才助手が居る!」
「天才助手?」
いったい誰のことだ? と視線を向ける。
そこに居たのは……エルミーだった。
「やほやほー。天才助手ちゃんでーす」
「エルミー。よく姿を消すと思ったら、ミウの手伝いをしていたのか」
「もー! どこかに行くときは、言わないとだめですよ!」
「ごめんねぇ、ララーナお姉ちゃん。反省してるから、許して? それに、お父様の役に立ちたかったの」
本当に反省しているのかよくわからない謝り方だ。
しかし、そんなエルミーの言葉にララーナは。
「なら、許します!」
「やぁん。ありがとう、ララーナお姉ちゃん! 大好きー!」
「お父さんのためなら仕方ないですね。ですが、次からは一言知らせること。良いですね?」
「はーい!」
「いい返事です!」
初めてできた妹が可愛いのか。それとも姉として慕ってもらえるのが嬉しいのか。エルミーのことを簡単に許してしまうのだった。
「それで、エルミーちゃん。どんな手伝いをしてたの?」
「まあ、実際に見ればわかる」
ミウは、どこからともなく青色の鉱石を採り出し、エルミーに手渡す。
「それじゃあ、まずは点火!」
何をするのかと注目していたら、両手に黄炎を纏わせた。
「いや、そんなことしたら鉱石が」
「大丈夫大丈夫。そーれーで! 熱した鉱石を伸ばしちゃうー!」
「おお!」
まるでゴムでも伸ばしているかのように鉱石が伸びる。
そこから、エルミーは粘土かのように鉱石をあっという間に花の形に生成してしまう。
「じゃーん!」
「わあ、綺麗なお花だね」
「えへへ。はい、アメリアお姉ちゃんにプレゼント」
「ありがとう。大事にするね」
「わ、私には!? 私にはないんですか!?」
「だいじょーぶ。ちゃんと作るから」
「約束ですからね!」
娘達の微笑ましい光景を見た後、ミウに視線を移すと、ものすごくドヤっていた。まるで、自分のことのように。よほどエルミーの力を認めているんだな。
「そんなことできたんだな」
「まーね。武器や防具なんか作る時、もっとも大事なのってなーんだ?」
「えっと、えっと……職人さんです!」
「確かにそーだけど、もっと大事なのがあるんだなぁ」
「炎、だね」
「正解! 職人が居ても、作るための道具があっても、硬い鉱石なんか形作るためには、高温の炎で熱しないとだめ」
確かに、硬いものをハンマーなどでただ叩いたとしても弾かれるか、砕けるだけ。武器や防具を形作るには、炎で熱して叩いて、熱して叩いてを繰り返す。
そうすることで、より硬く、より鋭く、より良いものが作れる。
「よーするに。あたしは、それを一人でやってるわけなのです。そして、あたしの能力は硬質化。黄炎は鉱石なんかに影響を与える。これを組み合わせることで、手早く作れるのです」
なるほど。黄炎により数段パワーアップした鉱石を熱しながら形作って、硬質化により固定しているのか。
「あれ? でも熱して叩いた後、冷やしたりもしませんでしたっけ?」
「おー、さすがララーナお姉ちゃん。良いところに気が付いたね」
「えっへん!」
「でもね。それは普通の作り方。あたしの普通じゃないから」
「なるほど! つまり、エルミーは凄いってことですね!」
「そーいうこと!」
細かいことは気にしないようで。まあ、実際できているから良いと言えば良いんだろう。
「彼女の協力により、効率が一気に上がった! しかも闇の炎の影響を受けているものだ。通常のものより頑丈にできている!! 今後の戦いに必ずや役立つ!!」
「でも、大丈夫か? エルミー一人じゃ大変じゃ」
俺も手伝ってやりたいが、エルミーのようにできるかどうか。
「心配してくれてありがとう、お父様。でもね、大丈夫だよ。あたしってば、こー見えて誰かのために役立つって結構好きなんだよねぇ。だから、気にしないで。それに、お父様はまだまだ黄炎に慣れてないし。お母様は不器用だから無理。ここは、エルミーちゃんにお任せあれー!」
「そっか……」
「あ、でもぉ。我儘を言えばー」
軽い足取りで近づいてきたエルミーは、そっと俺に頭を差し出す。
「たくさん褒めて。お父様。そーすれば、元気もやる気も段違いだから」
「ああ。それぐらいならいくらでも」
最初は、周囲を引っ掻き回す感じの子だと思っていたが。なんだかんだ可愛くて、いい子だった。頭を撫でられているエルミーは、満足げに目を細めている。
俺も父親としてついつい気持ちを込めて撫でまわし続けるのだった。
「あー! お父さん! 私も! 私も!!」
「だめだよ、ララーナちゃん。今はエルミーちゃんの番なんだから。お姉ちゃんとして、我慢我慢」
「う、うぅ……」
そういうアメリアも、どこかうずうずしているようだ。結局、エルミーの後に二人もたくさん撫でてやった。