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第七話 その頃、勇者一行

「な、なんなんだこの化け物は」

「将太様! 今回復を!」

「俺が相手をする! その間に、回復しろ!」


 ヤミノが闇の炎を使いこなし、鋼鉄の獣を撃退した次の日。

 異世界より召喚された勇者将太とその一行は、演習中に鋼鉄の獣と遭遇した。将太達は、一目で世界の脅威だと感じた。

 

 将太達は、訓練の成果を見せる時。

 こんな相手余裕で倒して見せると武器を構えて挑んだ。


 しかし、四人がかりでも苦戦を強いられた。

 右腕を切り飛ばし、相当のダメージを負わせたが、まだ倒せない。一番ダメージを負っている将太を一旦下がらせ回復させるために、戦士ダルーゴが身の丈よりも大きい戦斧を構える。


「は、はい!」

「ダルーゴ。あなただけに任せられないわ。私もやるわよ!」


 突撃していくダルーゴに続くように、魔法使いティリンが杖を構え魔力を込める。


「さっさと倒れやがれ!! 化け物が!!」


 鍛え上げられた隆々とした筋肉で振るう戦斧と鋼鉄の鉤爪がぶつかる。

 どちらも一歩も引かない攻防。

 その間に、将太は聖女ミュレットから回復を受け、ティリンは魔力を込め続ける。


「いいわ! 少し引きなさい! ダルーゴ!!」

「ああ!!」

「【ライトニング・ブラスト】!!」


 ダルーゴが後方に下がると同時に、鋼鉄の体に雷が貫く。

 しかし。


「はあ? 効いてないの?」


 ダメージはあるようだが、倒せるほどではなかった。


「二人とも、下がるんだ! トドメは僕がやる!!」


 回復を終えた将太は、勇者のみが扱えるとされる聖剣シャイニルの刃に光を収束させる。


「この一撃で沈め! 【光刃斬】!!!」

「――――」


 右腕を切り飛ばした技にて、鋼鉄の獣は一刀両断。

 完全に沈黙した。

 

「はあ……はあ……」

「やりました! さすが将太様です!!」

「俺らの攻撃も効いていないわけじゃなかったが、やっぱり勇者の攻撃が一番効果的だったな」

「とりあえず、これで脅威は去ったのね。はー、疲れた」


 多少の負傷はあったものの勝利を収めた勇者一行。

 その後、共に行動していた兵士達により、活躍は王都中に広められる。それは次第に、世界へ……。


「聞いたか! 最近噂になってる化け物を勇者様一行が倒したんだってよ!」

「マジかよ。どんな武器も魔法も通用しないって奴だろ?」


 鋼鉄の獣を倒した日から数日。

 今でも、王都では勇者一行の話がそこら中で流れている。


「……」

「どうかしましたか? 将太様」


 王都で有名な喫茶店のラウンジで将太は、その話をどこか浮かない表情で聞いていた。

 それに気づいたミュレットは、心配そうに問いかける。


「まだあの話をしていますね。当然と言えば当然ですが。あれだけの化け物を倒したのですから」


 浮かない表情の将太に対し、ミュレットは自分のことのように笑みを浮かべる。


「だめだ」

「将太様?」


 持った紅茶のカップを置き、頭を抱える。


「僕は、勇者じゃないのか……勇者ならもっと……」


 将太の脳裏に浮かぶのは、鋼鉄の獣と戦った時の映像。

 自分は勇者。

 選ばれし存在。

 だと言うのに、あの戦いでは苦戦を強いられた。確かに、攻撃は効き、倒せはした。だが、最初の戦いで苦戦しているようでは、この先どうなる。


(……いや、違う。僕はまだ勇者として覚醒していないだけなんだ。そうだよ。ゲームでだって最初はレベルが低いから苦戦する時があるじゃないか。そうだ。そうに違いない)


 今回苦戦したのは、まだ本当の意味で勇者に至っていないから。

 ならば、苦戦するのも頷ける。

 

「将太様。体調が悪いようでしたら、今日は城に戻った方が」

「いや、大丈夫だミュレット。心配かけたね。さあ、デートを続けよう。今日は、高級レストランを予約しているんだ。時間まで散歩でもして過ごそう」


 気持ちを切り替えた将太は、心配してくれるミュレットの手をそっと取り笑顔を向ける。


「はい。将太様」


 自分は勇者。選ばれし存在。

 まだまだ強くなれるはずだ。

 

(それに、苦戦したとはいえ誰も倒せなかった相手を僕が倒したんだ。よく考えれば、凄いことじゃないか……)


 だが、将太は……いや、世界はまだ知らない。

 知らぬ間に、鋼鉄の獣を倒した者がもう一人居ることを。


「そういえば、故郷に居る幼馴染。ヤミノくんだったかな? 手紙の返事はきたのかな」

「はい。あっちは変わりないみたいです。こっちは、そろそろ救済の旅をしなくちゃなりません。だから、一度会おうと思ってます」

「それは良い。どうせなら王都へ呼ぶのはどうかな? その方が、彼も喜ぶだろう」

「ふふ、確かにそうですね。ヤミノも一度王都に行って見たいって言ってましたから」

「そうと決まれば、招待状を書かないといけない。どうする? ミュレット」

「そうですね……帰った後で、書こうと思います」

「じゃあ、デートの続きをしようか」

「はい」


 そう言って、将太とミュレットは会計を済ませ喫茶店を後にした。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白いです!
[一言] 性格が悪いとしか思えん2人組。 まあ子供の頃の約束で正式に婚約してた訳ではない様だが(この世界の婚姻システムどんなかは有るにしても)、何も無ければ、田舎の村で結婚してた可能性有る幼馴染いるの…
[一言] えーと、ここまで遠くへ北問題児な輩を甘屋カス流れもよくわからんのだが。(• ▽ •;)(やっぱりここの作者の中の人は、何処園蛇の手羽先な御方のようで)
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