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第三十六話 かるいけどかたい娘ちゃん

「これで三度目……」


 リムエスの試練を乗り越え信頼を得たことにより一体化を果たした俺は、天井を見上げた状態で目覚めた。

 そして、このパターンは。


「お目覚めですか、主」

「ああ。はは、やっぱり小さくなってるな。リムエス」

「不思議です。このような珍妙な姿になるとは」


 俺の目覚めを待っていたようで、ヴィオレットとエメーラのようにミニサイズになったリムエスが左で控えていた。

 兜はなく、素顔を晒している。

 表情を引き締めてはいるが、ミニサイズになっているがゆえに可愛らしく見えてしまう。


「それで」


 俺は、身を起こし次なる人物へ視線を向ける。

 すでのその者は起きており、服も身に纏っている。


「君が……リムエスとの」


 じっと俺のことを見詰める少女。

 身長は、アメリアとララーナの間ぐらいで、黄金と白銀が入り混じった長い髪の毛をツーサイドアップに纏めている。肌はリムエスとは違い褐色で、低い身長に似つかないほど大きな胸を持っている。

 

 身に纏っている白い服は、袖が長く、肩の部分は露出しており、どういうわけか胸元の下に穴が空いている。

 スカートは短すぎず長すぎず、絶妙な感じで、そこから伸びる太ももはかなりむちっとしている。

 

「そーでーす! あたしがリムエスお母様から生まれた可愛い! 娘ちゃんでーーす!!」

「……」


 これまでのパターンから母親とは真逆な性格になるということは予想していたが……これは、最初の二人よりも、なんていうか。


「あ、ありえません……どうして、子供が生まれるんですか!? そして、どうしてこんな……こんな!!」

「あれー? どうしちゃったのぉ? お・か・あ・さ・ま? ほらほら、にかーって笑って笑って!」

「はっはっは。わかるよ、リムエス。僕もそんな感じだったからね」

「大丈夫、だよ。私達も、居るから」

「くう……!」


 ララーナとは違った元気のいい子だ。

 まあ、リムエスにとっては簡単に受け入れがたい現象だろうから、慣れるまで時間はかかりそうだけど。

 なんだかんだエメーラもララーナとは仲良くできているし……大丈夫、だよな?


「そもそも! なんですか! その防御の薄い服は!!」

「えー? だって、可愛いじゃん」

「どこかです! 肌を露出し過ぎです! 特に胸! どうしてそんなところに穴が空いているんですか!? 自分の娘だというのならもっと慎みを持ちなさい!!」


 確かに、リムエスの言う通りまるで誘惑でもしているかのような露出具合だ。

 これは父親としてもかなり心配だ。

 よし、ここは父親として注意をしなくては……っと、その前に名前を決めなくちゃだな。


「…………そうだぞ、エルミー」

「エルミー? それがあたしの名前なの? お父様」

「ああ。どうだ?」

「うん! とっても可愛い名前! ありがとー!! 愛してるー!!」

「おっと」


 感極まったのか。可愛らしい笑顔で抱き着いてくるエルミー。

 さっきまでどこか不安な感じがあったけど、こうしていると普通に可愛い娘って感じがするな。思わず、そのまま頭を撫でてしまうほどに。

 

「なっ!? は、離れなさい! 主に失礼ですよ!! マジで!!」

「えー? なんでー? あたし達親子なんだから、スキンシップは普通じゃないの?」


 リムエスに注意されたエルミーは、不思議そうに首を傾げる。

 

「あなたはそうやって主を堕落させるつもりではないのですか?」

「堕落?」

「そうです。そうやってエッチな体を押し付けて男を誘惑する。……ふ、ふしだらです!!」


 あれ? なんか一瞬、自分の胸を見ていたような。


「いやん! もー! お母様ったら可愛い過ぎー!!」

「な、なにをするのですか!? は、放しなさい! いくら娘と言えど、容赦しませんよ! マジですからですからね! ガチですからね!?」


 怒ってはいるようだが、今の姿ではそこまでの怖さは感じない。エルミーも、小さな姿で必死に怒っている姿を可愛いと思ったのか、ぬいぐるみかのようにリムエスを抱き締める。

 必死に訴えかけ、抵抗しようとするもなかなか手を出さない。

 言葉ではあーだこーだ言っているが、ちゃんと娘と認識しているんだろう。


「そこまでです!」

「にゃ?」


 リムエスを揉みくちゃにしていると、それを止めるかのようにララーナが叫ぶ。


「だめですよ、お母さんを困らせちゃ!」


 これは……まさにお姉ちゃんを実行しようとしているのか。いつものララーナとはどこか雰囲気が違う。その後ろでは、頑張れとばかりアメリアがヴィオレットを抱きかかえながら見守っている。


「だって、可愛いんだもん」

「それでもだめです。お母さんの言うことはちゃんと聞かないといけません!」

「……むふ。はーい、わかりましたー」


 どこか引っかかる感じはあるもののリムエスを愛でるのを止めるエルミー。

 

「それでいいんです。いい子ですね。よしよし」

「にゃはは」


 なんだろう。ララーナがちゃんとお姉ちゃんをしているように見えるんだが……エルミーの表情が気になる。

 なんていうかこう……微笑ましそうにしているというか。


「あー、これはあれだね」

「あれ?」


 ちょこちょこと寄ってきたエメーラを抱きかかえながら、俺は首を傾げる。


「背伸びをして大人ぶっているララーナちゃん可愛いーって感じだーね、あれは」

「あー、なるほど」


 それで納得した。

 確かに、背伸びをして大人ぶっているように見えるからな。


「はふぅ……」

「む? どうしたんですか?」


 すると、エルミーが突然その場にへたり込んでしまう。


「なんだかちょっと疲れちゃったかも……」

「むむ! それはいけません! すぐに回復を!」

「それに、はしゃぎ過ぎちゃって足が動かないのぉ」

「お姉ちゃんにお任せです! さあ、私の背中に!」

「ありがとー。お姉ちゃんは頼りになるねー」

「はい! お姉ちゃんですから!!」


 あ、うん。これは完全にそうだな。

 まあ、仲が良さそうだから、これはこれでいいのかな?

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