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第三十四話 ぶつかり合う炎

「到着です!!」


 ヤミノがリムエスと激しい攻防を繰り広げている最中。

 騒がしい乱入者が現れる。

 

「ララーナちゃん?」

「お? なんだなんだ。大好きなお父さんを応援にでも来たのか?」


 にへへ、と笑いながらエメーラは言う。


「はい!!」

「そっかそっか。じゃあ、邪魔にならない程度に応援しな。あ、ついでにお母さんをだらけさせてー」

「了解です! ささ、私に身を預けてください。お母さん!」


 これまでなんとか立ってヤミノの戦いを観戦していたエメーラだったが、ララーナの登場でついにだらけてしまう。

 ララーナも慣れているかのように、その場に座り込みエメーラを導く。

 

「あー、やっぱりこっちの方が楽だわー」


 自分の体をミニサイズにし、ララーナの膝に座り込むエメーラ。

 

「そういえばララーナちゃん。外はどうなったの?」


 外の様子が気になったアメリアはララーナの頭を撫でながら問いかける。


「全員捕まえました!!」

「よしよし。よくやったね、ララーナちゃん」

「むふん!」


 どうだ! と言わんばかりに胸を張る。

 しかし、すぐヤミノの戦いが気になり、正面をじっと見詰め直す。


「心配?」


 ヴィオレットも横に立ち、静かに問いかける。


「いいえ! お父さんは最強ですから! 仮令、ピンチになろうとも最後は必ず勝ちます! そう、思えるんです!」

「私達も、同じだよ。パパならきっと」

「うん、そう、だね。ヤミノなら」

「いやぁ、信頼が厚くて凄いねー、ヤミノは」

「お母さんもですよね!」

「え? いや僕は」

「ね!!」


 ぐいぐいと顔を近づけてくるララーナに、はふーっと息を漏らすエメーラ。


「はいはい。ちゃんと信頼してますよー」

「ですよね! お父さーん! 頑張れー!!」

「パパ―! 頑張ってー!!」


 元気に応援する娘達を見て、ヴィオレットとエメーラは微笑ましそうに笑みを浮かべる。



・・・・



「随分とにぎやかになってきましたね」

 

 ララーナが加わり、騒がしくなってきた。

 ずっとうるさいのが嫌なような態度をとっていたリムエスだったが、今はどこか違うように感じる。兜で表情は見えないが……優しい雰囲気が漂っている。


「まだ付き合いは長くないけど。それでも、大事な家族だ。悪いが、家族の前で無様に負けるわけにはいかない。ここからは、ガチのガチでいかせてもらう!」

「いいでしょう! そのガチを、見事防ぎきってみせます!!」


 武器はもう限界だ。

 これ以上耐えきれない。

 今、俺が使っている長剣と短剣は長年使い続けた相棒と言ってもいい武器。様々な武器を使ってきたが、この二振りだけは年季が違う。

 なにせ、母さんが俺のために特注で作らせたものだから。シンプルなデザインだが、母さんが冒険者時代に手に入れた鉱石を使った代物。


(ごめん……そして、今までありがとう)


 ぎゅっと柄を思いっきり掴み、リムエスへ再び立ち向かう。


「また正面!」


 初撃と同じ正面からの攻撃だと思ったリムエスは、大盾を構える。

 いや、今までの戦いで俺の戦法は理解しているはずだ。

 周囲にも、小盾を張り巡らせている。

 完全に受けの体勢だ。しかも、そこへ反射が加わる……普通なら、攻撃をするのを躊躇うところ。

 でも、俺は―――


「これで!!!」

「二つの炎を……!」


 炎を纏った二本の剣を重ね合わせる。

 そして、一気に火力を上げた。

 それにより、二色の炎は巨大な刃と化す。紫炎の火力と緑炎の操作……それを合わせることで、また新たな戦法が生まれる。


「ですが、自分の守りは容易には突破できません!!」


 俺が今から繰り出す攻撃がやばいと感じたのか。

 大盾にいくつかの小盾を重ね合わせた。


「【炎剣重波斬】!!!」

「【ガチ・カウンター】!!!」


 ぶつかり合う炎の剣と炎の盾。

 互いに反発し合い、周囲の炎を吹き飛ばすほどの衝撃波が発生する。


「ひゃっ!?」

「うおー、凄い衝撃波……!」

「で、でもパパはもっとつらいと思う!」

「お父さん……!」


 俺を吹き飛ばそうと止めどなく襲い掛かる衝撃。

 剣が壊れていく。

 服も破けていく。

 

「さすが! ガチなだけは、ある!!」

「くっ! そちら、こそ! 反射しきれないほどの攻撃力! ガチのガチなだけはあります!!」


 こちらの武器も砕けていっているが、リムエスの盾もついに消滅していっている。


「ですが! そちらの武器は限界のようですね!」


 ああ、その通りだ。

 もう形を保っていない。炎の中で舞う残骸にしか見えない。

 それでも、終わりじゃない。

 俺はまだ……戦える!


「まだだ!!」


 刹那。

 剣の残骸と緑炎が左右に枝分かれする。


「想定、内です!!」


 こうなることを予想していたリムエスは、残しておいた小盾で防ごうとする。

 

「それはこっちの台詞だ!!」


 防がれる寸前で魔法陣を展開させ、攻撃を転移させる。

 

「ぐあっ!?」


 見事に緑炎はリムエスの体を直撃する。

 だが、まだ止まらない。


「押さ、れる……!!」


 俺が扱える最大火力。

 それを今、リムエスに防がれている。

 だったら。


「限界を超えろぉ!!!」


 激しく燃え盛る二色の炎の刃が、ついに一歩も動かなかったリムエスを……吹き飛ばした。


「はあ……はあ……!」


 小さくなった炎の剣を握り締めながら、吹き飛ばされたリムエスを見詰める。

 

「あれだけの攻撃を受けて……無傷か」


 小盾は破壊できたが、大盾はまったくの無傷だった。

 

「……自分の大盾は、どの盾よりも特別な盾ですから」

「……」


 まだ戦いは終わっていない。次は、どう攻めようかと思考しながら構える。


「とはいえ」

「ん?」


 構えた大盾をずらし、自分の姿を見せるリムエス。

 

「その大盾を突破し、この身にダメージを与えた……」


 ピキッ、と兜に大きな亀裂が入り、砕けていく。


「素晴らしい一撃でした。最終試練……貴殿の勝利です」

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