第三十三話 炎の連撃
「はっ!」
「甘い!」
正面からは止め、俺は空間を飛び、背後から攻撃をする。
が、リムエスにはわかっていたらしく、黄炎が小さな盾となり攻撃を防ぐ。
「わかってはいたけど、その盾。いくらでも生成できるみたいだな」
「当然です。自分の防御はマジで硬いですよ」
そう言うと、空中に黄炎の盾が次々に生成される。
「そして」
「盾が!?」
生成された黄炎の盾は、俺へ向かって飛んでくる。
俺は、それを回避しながら剣を振るうが、やはり硬い。
「遠隔操作か……!」
「盾と言っても、これは我が炎。自由自在に操作可能なのです」
あれだけ硬いのに、遠隔で攻撃もできるだなんて。
隙が無い……!
「うわぁ、本当にえげつないなぁ」
「で、でもまだ様子を見てる、感じだとね」
「だーね」
俺を襲ってくる盾はざっと数えて五つ。
リムエスの周囲に残っている盾は、四つ。それに加えて、手に持っている大きな盾。
さっきみたいに空間転移で死角から攻撃をしようとしても、あの小さな盾で防がれる。おそらく自動的に防ぐものなんだろう。
正面からの攻撃は、わかっての通り大きな盾で防がれる。
「どうしました? 貴殿の力はこの程度なのですか?」
「いいや! まだだ!!」
俺は、襲ってくる盾を踏み台にし跳躍する。
そこから空間転移で一気に距離を詰める。
「無駄だと」
「【緑炎操】」
「お?」
右斜めから攻撃をしようとするも、また小さな盾が防ごうとする。けど、この攻撃は。
「エメーラの」
―――自由自在に軌道を変えられる!
長剣から伸びた緑炎は、盾をうまく回避し、リムエスへと襲い掛かる。
「よく二人の炎を使いこないしています。お見事……がしかし!」
「ぐっ!?」
盾はひとつだけじゃない。
俺の攻撃を防ごうとした以外の盾が、真横から襲い掛かる。それだけじゃない。リムエスに当たったはずの緑炎は……ほとんどダメージを負わせていない。
「……鎧まで硬いんだな」
「当然です。自分は全身ガチガチなので」
「性格もガチガチに硬いぞー」
「え、エメーラ……!」
「パパ! 大丈夫!?」
「ああ、なんとか緑炎で防いだ……」
けど、咄嗟のことだったのでダメージがないわけじゃない。横っ腹が痛い……一瞬呼吸が止まるほどの衝撃だった。
ふう……強いな。今までは、戦うことなく彼女達の力をその身に宿していたけど。
実際に、こうして戦うと、彼女達がどれだけ凄い存在なのか改めて実感できる。
「休んでいる暇はありませんよ」
「わかってる!」
なんとか呼吸を整えようとする俺へ、また四つの盾が襲い掛かってくる。
まさに攻防一体。
遠距離も近距離も可能とするリムエスの力。
「でも! 君に必ず認めてもらう!!」
「なら、示しなさい! 貴殿の力を!!」
襲い掛かる盾を回避しながら、前へと進み力を蓄える。
これからやるのは、新たな戦法だ。
ずっと考えてはいた。
何度も失敗した。繰り返し試しても失敗、失敗、失敗……。
(今の俺にはできない。そう思ったこともあった。それでも諦めなかった)
「この感じは」
「おー?」
「ヤミノ、もしかして」
複数の炎を身に宿し、それを操れるなら。
同時に複数の炎を操れることだってできるはずだ。
「二人の炎を……!」
「できたぞ!!」
長剣に紫炎を。短剣に緑炎を宿し、一気に踏み込む。
「素晴らしいセンスです。しかし、それでも自分の盾は砕けたりしません!!」
「砕けなくとも!」
左から襲ってくる盾を紫炎を纏いし短剣で弾く。
右から襲ってくる盾を緑炎を纏いし長剣で弾く。
「いけー! パパー!!」
「おお!!」
可愛い娘の応援を受け、俺は咆哮する。
「なんという気迫……なんという連撃……!」
「これだけじゃない!」
俺の攻撃は止むことはない。
相手に反撃をする暇を与えないように、次々に空間を飛び、かく乱させながら攻撃を加える。
さすがのリムエスもやばいと思ったのか、俺を襲っていた盾も防御に回される。
「まだ、まだぁ!!」
「こちらもまだまだです!! ここからは、ガチのガチでいきますよ!!」
ヒートアップしていく俺に釣られ、リムエスも咆哮する。
すると、背中の黄炎の輪が一層燃え上がった。
「この衝撃は……!」
「防ぐだけが、盾ではありません!」
今まで攻撃が当たってもなんともなかった盾から、衝撃が襲う。
これは……攻撃の反射!
「さあ、これを見事突破し、自分に証明してみてください! 貴殿の力を! 信念を!!」
一度距離を取り、俺は徐々にひび割れていく二本の剣を見詰める。
工夫はしたが、やっぱり限界か。
リムエスも、本気になってきているようだし……。
「ああ。見せてやるさ。俺の力を!!」
武器が砕けるかもなんて考えるのは止めだ。
ここからは、惜しみなく力をぶつける。