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第三十一話 第三の試練へ向けて

「くっそぉ!! なんなんだこの炎は!?」

「全然振り解けねぇ!!」

「はいはい。だめですよ! 悪いことをしちゃ! しっかり反省してください!!」


 ヤミノ達が、リムエスの試練を受けている最中。

 盗賊達を捕らえるべく残ったカーリー、ララーナ、レガンの三人は、難なく全員を捕らえた。イア・アーゴントのおかげで、誰もいないと思っていたらしく、三人の登場に驚き反応が遅れたの功を奏した。


「はい、お疲れ様。まったく何年経ってもこういう連中がいなくならないわね」

「完全な平和はない。わかってはいるが、俺達の努力は簡単には実らないものだ」

「レガンさん!」

「応援に来ました!!」


 捕らえた盗賊達を見詰めながら眉を潜めていると、トードから冒険者達が駆けつけてくれた。


「丁度いい! こいつらは盗賊だ! トードへ連行してくれ!!」

「は、はい!」

「あれ? 他の方々は?」


 問いかけたのは、ヤミノ達が最初に出会った女冒険者だった。


「あいつらなら、まだダンジョンの最深部へ向かった」

「最深部って、まさか」

「ああ。闇の炎と対話をしに行った」

「じゃあ、やっぱり彼らが噂の……」


 すでにヤミノ達のことは、世界中に広まっている。世界を恐怖させる侵略者。それに対抗するために、勇者一行とは違った方法で守るべく動いている存在だと。


「むむ!」

「どうしたの? ララーナちゃん」


 盗賊達全員を縛り上げたところで、ララーナが突然ダンジョンの出入り口を見詰める。


「お父さん達が……戦っています」

「戦っている? それってリムエスとってこと?」

「私、行きます!!」

「あ、ララーナちゃん!?」


 居ても立っても居られない、とばかりにララーナは飛び出す。

 追いかけようとするカーリーだったが、すぐに足を止める。


「行かなくていいのか?」


 てっきりララーナを追いかけるとばかり思っていたレガンは、隣に立ち問いかける。


「あたしまで言ったら、イア・アーゴントが出た時に対処できないでしょ? それに」

「それに?」

「母親として、息子が成すことを信じて待つ。それも親としての務めよ」

「……なるほど。将来のために役立つ」

「まあ、本当は目の前で見守りたいんだけど。あたしも大人だから。さあ! 捕まえた盗賊達をトードまで連行しましょう!」


 ダンジョンの出入り口を見詰めながら微笑むカーリー。

 もう一度気合いを入れて、その場から離れて行った。



・・・・



「はい。これで回復したはずだよ」

「いいのか? 炎を分けて」

「今のわたしにできることはこれぐらいだから。それに、サポートがわたしの役目なんだよ。パパ」


 第二の試練を終え、俺達は再び前に進んでいた。

 そんな最中で、アメリアが消費した炎を回復させるために、自分の炎を分け与えてくれた。そのうえ、先ほどの試練で増した炎を調整してくれた。


「ありがとう、ね。アメリア」

「えへへ」


 ヴィオレットは、自然とアメリアの頭を撫でる。

 先ほどの試練で、どこか自信を持てたのか。表情に余裕が見える。


「いやぁ、仲睦まじい親子の光景かな」

「エメーラも、ララーナと仲良し、だよね?」

「え? 僕とララーナが? そっかなー」


 最初は、ララーナの陽気さに拒否反応を示していたエメーラだったが、徐々にまんざらでもないかのように接するようになっていった。

 元々、世話好きだったということもあり、しっかり母親をしているのは目に見えてわかる。


「そうだって。さすがは守護神様だ」

「や、やめろよー。僕は、そうやって期待されるとか。キラキラした目とか、苦手なんだってばぁ」


 少しからかってやろうと思って言った言葉に、エメーラは身を守るように縮こまる。


「は、恥ずかしがることないよ。エメーラは本当に凄いんだからっ」


 うん。ヴィオレットは完全に天然というか。本気で思っているんだろうな。しかし、今のエメーラには逆効果のようで。


「や、やめろぉ……」


 更に縮こまってしまった。

 

「二人とも。あんまりエメーラさんを虐めちゃだめよ? め!」

「え? え?」


 ヴィオレットは別に虐めているとは思っていないので、突然アメリアに怒られ困惑している。まあ、アメリアもそれをわかっているのか。

 言葉にそこまで棘がないうように感じる。


「ごめんごめん。ほら、エメーラ。いくぞ」


 と、俺は縮こまるエメーラを背負うべく、背を向ける。


「……」

「いてて!? わ、悪かったって!」


 エメーラは素直に俺の背へ身を預けるが、先ほどのことを許さないとばかりに額をぐりぐりと押し付けてくる。


「お、怒ってる? ね、ねえエメーラ」

「別に―」

「ご、ごめんね。そんなつもりじゃ」

「いいよ。ヴィオレットは許す。だけど」

「うお!? 痛い! 痛いってば!?」


 俺のことは許してくれないようで、無言のまま俺の両肩をばしばし叩いてくる。


「おらー、進めー」

「わかったから! だから、叩くなって!」

「うるへー」

「ふふ。仲良しだね」

「そ、そうなの?」


 少しの休憩後。俺達は前へ進む。

 その間、エメーラからはずっと叩かれ続けていた。結局、試練が終わった後の約束に色々と足すことで、なんとか許してくれた。

 こんなことを言うのはあれだが。エメーラの意外な一面を見れてよかったなって。

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