表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

72/190

第二十九話 第二の試練

 第一の試練を乗り越え、扉を潜り抜けると、また壁に囲まれた一本道が現れる。

 まさか、試練の部屋以外にが何も仕掛けがないのか?

 

 ―――いや、あれだけの試練を用意しているんだ。油断はできない。


 俺は、エメーラを背負い直し、先陣を切る。

 その後ろからは、アメリアを背負ったヴィオレットが続く。


「いやぁ、試練を受けているっていうのに、緊張感のない感じだねぇ」

「だったら、下りるか?」

「いやだー。僕はできるだけ、自分で歩きたくないんだよぉ」


 本当に歩きたくないのか、より一層俺に密着してくる。

 小さいのに、良い感じにむちむちとした体つきだから……こう密着されると、服越しでも伝わってくる。


「わあ、こんなに高い目線初めて」

「こ、怖くない? 大丈夫?」

「大丈夫だよ、ママ」


 うんうん。二人は、良い感じに親子の触れ合いというものをしている。


「そういえば、試練って後どれくらいあるんだろうね」


 もっともな疑問を呟くアメリア。

 今回は第一の試練で、次は第二の試練。看板には、どれだけの試練があるとは記されていなかった。


「リムエス次第だろうねぇ」

「私も、そう思う」


 確かに、どれほどの試練があるのかは与えている者次第。


「ねえ、どうやら移動している間は、何もないみたいだしさ。リムエスとの間に生まれる娘ちゃんの話しない?」

「気が早すぎるんじゃないか?」

「いやいや。だって、気になるじゃん? あの真面目ちゃんから、どんな娘が生まれるのかって」

「リムエスの子供……わ、私も気になるかも」

「新しい妹が生まれるんだもんね。どんな子かなぁ」


 そこまで言われると、俺も気になってしまう。今までのパターンから考えると、母親とは反対の性格というか、何かを補う感じの子が生まれる。

 リムエスは真面目で、鍛錬や試練が好き。

 となれば、生まれてくる子は……。


「柔軟な性格をした子、とか?」

「ありえるかもね。でも、僕はお馬鹿っぽい感じの子が生まれると予想する」

「子供っぽい性格、とか?」

「わたしは、いっぱい甘えてくる子がいいなぁ」


 各々、リムエスとの間に生まれる子のことを予想しながら、着々と道を進んでいく。

 そして、本当に何事もなく次なる試練の場に辿り着いてしまった。

 なんだろうな……試練を受けているのに、道中はかなり緊張感がなくてこう……いや、まさかそれが相手の作戦? 道中で油断をさせて、試練を受ける意欲を削いでいる、とか?

 それとも、試練を終えた後に、安息の時間を与えている? ……どちらにしろ、試練は確実に突破してみせる。


「開けるぞ」


 次なる扉に触れると、また自動で開く。

 先に広がるのは、第一の試練とは違い、かなり縦に長い部屋だった。目を凝らして見て見ると、なにやら的のようなものが見えるような。


「お? 次の試練は命中力とか?」

「あ、看板があるよ」


 毎度のことのように、看板が用意されている。

 ヴィオレットは、アメリアを背負ったまま看板に近づき、ゆっくりと下ろす。


「なになに……ようこそ。第二の試練は、命中と操作。二つ同時に試す場だ。ただ命中させればいいだけではない。炎を操作し、用意された的に見事命中させろ。なお、第一の試練と同じで協力者は一人だけとする。だって」


 命中と操作、か。

 第一の試練は、相手側から攻撃をされたが。第二の試練は、こちらが攻撃する番のようだ。

 操作だったら、エメーラだが……。


「ヴィオレット。今回は、君だ」

「ふぇ!? で、でも私じゃ……エメーラの方が」


 自分が選ばれるとは思っていなかったらしく、驚きを隠せないでいるヴィオレット。それに、今回の試練はエメーラの方が最適だと思っているようだ。

 

「……うえーん。僕は、さっきの試練で疲れちゃったー。無理―」


 などと言って、床に寝転ぶエメーラ。


「え、エメーラ? だ、大丈夫?」

「大丈夫じゃないー。ごめんヴィオレット。ここは任せたー」

「でも」

「ヴィオレットならできるって。あんたはさ、できる子なんだ。もっと自信を持てもて」

「……」


 エメーラの奴。ヴィオレットのために……。


「そうだよ、ママ。ママはすっごく強いんだから! もっと自信もって!」

「アメリア……」

「頼むよ、ヴィオレット。君の協力が、俺には必要なんだ。一緒に試練を突破しよう。な?」


 アメリアに続き、俺は優しく微笑みながら手を差し出す。


「……うん。私、頑張ってみる!」

「がんばれー」


 友達から、娘から背を押されたヴィオレットは、俺の手を取り、一体化する。

 紫炎の弓を生成し、俺は前へと進んでいく。

 

「準備はできた。第二の試練を始めてくれ!」


 その声に答えるように、看板は消え、代わりにまた数字が表示される。第一の試練のとは違い三十とだけ表示されていた。

 これはまさか。


「三十回、的に当てろってことなんだろうね」


 そういうことなんだろう。

 よし、第二の試練も突破してみせる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ