第二十八話 試練を乗り越えろ
(うへー、僕がやるのかぁ)
「頼むぞ、エメーラ」
第一の試練を共に挑むのは相棒はエメーラ。
彼女の炎操作と、もしもの時の治癒能力が、あれば乗り越えられる。
ヴィオレットとアメリアは、離れた位置で待機している。
(まあ、しょうがないかぁ。あ、その代わり終わったら漫画買ってよ)
「はいはい」
試練の前に、少しだけ軽い会話をし、大砲の前に立つ。
「準備はできた! 試練を始めてくれ!!」
準備ができたことを伝えると、ずっと動かなかった大量の大砲が、一斉に俺へ照準を合わせてくる。
「ん? あれは」
(よかったね。ちゃんと時間制だったみたいだよ)
同時に、大砲の背後に時間が表示された。
三分、か。
「やってやるさ!!」
タイマーは動きだし、大砲から攻撃が飛んでくる。まずは、正面の二門。
「これぐらいなら」
緑炎を操作し、攻撃を防ぐ。
体に炎を纏う感覚だ。
「次来るよ! パパ!」
攻撃は止まない。
今度は左右から挟むように攻撃が飛んでくる。まだ、まだだ。これぐらいなら余裕だ。
だが、余裕を与えないかのように連続して、四方八方から、タイミングをずらしながら、はたまた同時に攻撃をしてくる。
(さすがに、威力が増してきたね)
「ああ。火力を上げるぞ」
(ほいほーい)
大砲の威力も徐々に上がってきているため、こちらもそれに合わせて火力を上げていく。
「あわわっ」
「大砲も、なんだか大きくなってるね」
ここまでなんとか耐えてきている。
時間もすでに半分過ぎている。
(最初だから、結構余裕な感じ……かと思ったけど)
残り一分と言ったところで、大砲の方も本気の本気を出してきた。
数を減らし、一撃一撃に力を込める戦法で来るようだ。
「ぐっ!?」
「や、ヤミノ!?」
それだけじゃない。一点に集中することで、貫通力のある攻撃をしてきた。これは、ヴィオレットと一緒に放った【紫炎一閃】のようなものか。
(いやらしくなってきたねぇ。ほいじゃ、こうしようぜ旦那)
身に纏っていた緑炎は、動き出し盾となった。
「数が減ったからな。こっちも炎を一点に集めて防ぐ方向でいくか」
(それに加えて、僕が炎を見極めて、攻撃が当たる寸前に火力を調整するぞい)
今、俺達を狙っている大砲は四門。
その内の二門は、貫通力がある細いやつ。残りの二門は火力のある太いやつだ。
「残り三十秒! 耐えるぞ!!」
(ほいほい)
その場から動かず、俺達は緑炎の盾で攻撃を防ぎ続けた。
そろそろ終わる。
残り十五秒といったところで、相手側も動きを見せる。全ての大砲が一つになったのだ。
「この攻撃に耐えれば!」
最後の攻撃を防ぐべく、全ての炎を鎧のように纏い構える。
(おや? それでいいのかね)
「これでいい!!」
(しょうがないなぁ)
最後の最後に、俺の判断で盾で防ぐのではなく、その身で防ぐことにした。それをエメーラは了承してくれたようで、炎の操作をせず沈黙する。
「頑張れー! 二人ともー」
「ファイトだよ!!」
応援してくれる二人の声を背に、俺は巨大な大砲から放たれた炎の弾に飲み込まれる。
くっ、これは継続攻撃ってやつか。
最後の攻撃は今までの当たったら終わりのものではなく、その場に残り続けダメージを与え続けるものだった。
しかも、全ての大砲が集まった攻撃だ。どんどん纏った炎を剝がしつつ、俺にダメージを与えてくる。
「残り、五秒……!」
(……)
四、三、二、一……!
「ゼロ!!」
刹那。
俺にダメージを与え続けていた炎は消える。俺も、緊張の糸が切れたかのように体の力が抜ける。
「ん。おつかれさん」
と、俺の体から出てきたエメーラは、治癒の炎で俺のことを回復させてくれる。
「ああ。エメーラもありがとうな」
「いいっていいって。ほら、僕ら夫婦じゃないですかー、なんて」
「ははは。そうだな」
第一の試練を乗り越えると、また看板が現れた。
休憩する俺の代わりに、アメリアがまた呼んでくれた。
「えっと……よくぞ試練を乗り越えた。だが、この程度を突破できないようでは我が炎を扱うに与えしない。さあ、次なる試練が待っている。先に進むのだ! だって」
「やっぱひとつじゃ終わらないかぁ。めんどーだなぁ、もう。ほい、治療終わり」
「歩ける? ヤミノ」
「大丈夫だ。心配してくれてありがとう、ヴィオレット」
体を支えてくれようとするヴィオレットにお礼を言い、俺は次なる試練への扉を見詰める。
「次の試練も、必ず乗り越えるぞ!」
気合いを入れ直し、俺は歩を進める。
「待ってー、僕を背負ってー」
「あ、はいはい」
「わ、私が背負うよ?」
「じゃあ、わたしを背負ってーママ」
「え? あ、うん」
若干緩い空気だが、大丈夫なはずだ。次の試練はいったいどんなものなんだろうか……確実に、第一よりも難しいものだろう。
だが、俺達なら乗り越えられるはずだ。そして、リムエスに必ず出会って見せる。