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第二十七話 黄炎の試練

 ダンジョンが変わる前に、再びリムエスのところへ辿り着いた俺達。

 今頃、母さん達は鉱石を盗みに来た連中と戦っている。

 俺達は、俺達でしっかりと対話をしないといけない。


「パパ。準備はいい?」

「ああ。行こう」


 さっそく、リムエスへ近づき、一度手を伸ばす。


「……よし」


 熱くない。

 エメーラの時と同じだ。

 もしかしたら、炎の壁で拒否されるかと思っていたが、相手側も俺達のことを受け入れてくれるようだ。


「―――ここが、リムエスの中」

「さてさて、リムエスはどこに居るのかねぇっと」

「エメーラの時は、簡単に見つかった、けど……」

「なんだかダンジョンみたいな感じだね」


 リムエスの中に入ると、ヴィオレットとエメーラが元の大きさとなって具現化する。

 そして、なぜかここまで来る間のダンジョンと似たような光景が広がっていた。

 正確には、炎で生成された壁が迷路状になっていると言った方がいいか。


「こりゃあ、リムエスが試練を与えているって感じだね」

「そういうことをする人なんだね」

「うん。リムエスは、鍛えることも鍛え上げることも好きだったから」

「僕らもよく無理矢理鍛えあげられそうになったことあったよねー。今思い出しても、つらい思い出だよ……」


 やれやれと被りを振るエメーラ。

 ということは、ここを突破し、リムエスのところへ辿り着かないといけないわけか。


「そういうことなら、やってやる」


 俺も鍛えるのは嫌いじゃない。

 これでも昔から、母さんから色んな鍛え方、試練を受けている。


「ほいじゃ」

「え?」


 なぜか俺の背によじ登ってくるエメーラ。


「いけー」

「……おっしゃ!」

「いくぞー!」

「お、おー」


 うん、考えるのは止めだ。

 なんだかんだで、俺も男だ。背中に感じる柔らかい感触に喜んでいる節がある。それにエメーラは、こういう奴だってことはもうわかりきっていること。

 今は、こんな感じだが……なにかあったら協力してくれるだろう。


「とは言ったものの。ここはリムエスの中。気配を感じて進もうにも」

「この空間自体がリムエスだからねー。無理無理」

「空間転移も……」


 ヴィオレットが、炎の魔法陣を展開しようとするも、かなり乱れている。


「無理みたいだね」

「徹底してるなぁ、ほんとーに」

「だからこその試練なんだ。やってやるさ」


 俺はエメーラを背負い直し、駆けだす。

 続くようにヴィオレットとアメリアも歩を進める。


「……」


 しばらくは何事もなく真っすぐ。

 なにか罠があるんじゃないかと思って警戒していたが、なにも起きない。試練ゆえに、罠が盛りだくさんかと思っていたんだが。

 

「あ、あれ」

 

 と、ヴィオレットが先にあるものを指差す。

 

「看板?」

「なにか書いてあるね。えっと」


 しばらく真っすぐ進んだ後、中央に看板が立てられているのを発見する。

 そこにこんなことが書き記されていた。


「よくぞ参られた。貴殿が我が炎を欲しているのは知っている。だが、ただで我が炎を与えるわけにはいかない。ここよりいくつもの試練が待ち受けている。見事乗り越え、我が元へ来られたし」

「うわー、随分とまあかっこつけちゃって」

「ふふ、リムエスらしい」

「さあ、この先に第一の試練が待ち受けている。進むのだ! だって。パパ」


 確かに、先を見ると扉のようなものが見える。

 あの先に第一の試練が。

 

「どんな試練だろうと乗り越えて見せる」

「そして、リムエスを我が妻にー」


 く! そう言われると動機が不純に感じてしまう。本当にどうして、闇の炎と一体化することが夫婦になるってことなんだろうか。

 リムエスは、そのことに関して記憶があるのか?

 

「んん!! ともかく! 第一の試練がどんなものかわからない。三人とも、油断はするなよ!」

「うん!」

「ほほーい」

「一緒に乗り越えようね!」


 看板を超え、試練の場へと続く扉の前まで辿り着いた俺は、扉に触れる。

 すると、扉は音もなく開く。

 

「これが……第一の試練?」


 その先に広がっていたのは、炎で生成された大砲が大量に設置されているという異様な光景だった。

 

「あ、また看板がある」

「律儀だねぇ」

「読むね。えっと……ようこそ挑戦者。第一の試練は、耐久力! 四方八方から撃ち出される炎の攻撃に見事耐えてみせろ! だって」


 耐久力か。回避力かと思ったが……とはいえ、ざっと見ただけでも十以上はあるぞ。あれから撃ち出される攻撃に耐えるってことだよな。

 避けることなく、そのまま棒立ちで。


「あ、続きがあった。なお、協力者は一人のみとする」


 それを聞いて少しはほっとした。

 闇の炎を扱えるとはいえ、あれだけの数の大砲から撃ち出される炎の攻撃を耐えられるか不安だったからな。

 

「意外と優しいじゃん。てっきりヤミノだけでやれーっとかだと思ってた」

「闇の炎の使い手として、どれだけの存在か。ていうのを知りたいんじゃないのかな?」

「どうする? ヤミノ」


 回避することなく、攻撃を耐える、か。

 火力だけならヴィオレット。だが、操作性はエメーラ。アメリアは耐えるというよりも、回避系。それに看板に、制限時間のようなものが書かれていない。

 いつ終わるかわからないとなれば……よし。

 

「協力してくれるか?」

 

 俺が、選んだのは―――

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