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第二十三話 意外な関係

「心配だ……」

「ん? どうしたんだ、マルクス。さっきから落ち着きがないな」


 ヤミノ達が、ダンジョンで魔物達と戦っている頃。

 王都では、ギルドマスターマルクスがどこか落ち着きのない様子で窓から外を眺めていた。

 

「さっきの連絡が関係しているのか?」

「……はい」


 今から十数分前。

 マルクスの下へ鋼鉄の都市トードを拠点としているギルドマスターレガンからイア・アーゴントが現れたという連絡がきたのだ。

 マルクスは、冷静に話を聞き、すぐ救援を送ると伝えた。


「確か、トードのギルドマスターは昔の仲間だったか?」

「いえ、仲間じゃありません。勝手に絡んでくる迷惑な男でした」


 昔のことを思いだし、マルクスはため息を漏らす。

 一度、椅子に腰を下ろし、こめかみを指で摘んだ。


「僕も、昔は普通に冒険者をやっていましたが。その時に、どういうわけか変に絡んでくる大男が居ましてね」

「それがレガンか」


 優雅に紅茶を嗜みながらファルクは、耳を傾ける。


「はい。こう見て、昔は先輩の影響もあって強くなることに固執していまして」

「ほう。今からは想像できない……くもないか。セリーヌの奴も、いや俺も昔と比べたら大分落ち着いたもんだからな」

「特に僕は、ハーフエルフですからね。色々と周囲の認識が……」


 ハーフエルフは、見た目こそ普通の人間と変わらないが、エルフのように寿命が長い。

 二十代までは、普通に成長をするが、それも突然止まり後は歳を重ねるだけで見た目は老いない。

 そもそもが、ハーフという存在が珍しい存在のためかなり珍しがられるのだ。


「だが、親を恨んだことはないんだろ?」

「もちろんです。父はすでに亡くなっていますが、母は今でも仲良くやっていますからね」

「それはいいことだ。で? レガンはどうして絡んできたんだ? やっぱりハーフエルフだからって理由か?」

「いえ。そんなこと関係なしに、突然勝負を仕掛けてきたんですよ」


 その時のことを思いだしたのか。

 はあ……深いため息が漏れる。その反応を見て、ファルクはくっくっくと笑みを浮かべる。


「まあ確かに、普通のエルフと違って見た目は完全に人間だからな。誰でも初見じゃハーフエルフだなんてわからねぇよな」


 エルフならば特徴的な耳があるためすぐにわかる。

 しかし、ハーフエルフは見た目が完全に人間のため初見でわかるものはかなり少ないだろう。しかも、マルクスはずっと人里離れた森の中で過ごしていた。


「本当にいきなりで。思わず全力で反撃の魔法を放ってしまいまして」

「お? やるじゃねぇか」

「今ではギルドマスターですが、誰彼構わず勝負を仕掛ける荒くれたところがあって。実力は本物でしたから、トードの荒くれ守護神なんて言われていたんです」

「ほう。で? その守護神様に絡まれたお前は、そこから友情でも芽生えて仲良くなったのか?」

 

 紅茶が入ったカップを置き、ファルクは言う。


「話せば色々あれなので省きますが、勝手にお前は俺の友だ!! って言われまして」

「それを受け入れたんだろ?」

「……まあ、はい」

「いいねぇ。男同士の友情ってのは! しかも、今は同じギルドマスターとして交流が続いているってんだから」


 くう! と拳を握り締めるファルク。

 そんな反応に対して、マルクスは微妙な表情で頬を掻いていた。


「とにかく! 僕が言いたいのは、ヤミノくん達に迷惑をかけていないかってことです」

「もしかしたら、お前みたいに友情が芽生えていたりしてな。……ん?」

 

 話の途中、ファルクに思念が届く。

 そして、すぐテーブルに置いてあるたくさん喋ろうぜくんのスイッチを押した。


《おい、聞こえているのか! ファルク!!》

「おう、聞こえてるってミウ」


 たくさん喋ろうぜくんは、こうして登録してある魔力を持った者の声を周囲の者達にも聞かせることもできるのだ。

 

《先ほど、ヤミノ達がトードへ向かったが、本当なのか? 例の敵が現れたと言うのは!》

「ああ、本当だ。いやぁ、一大事だな」

《本当に一大事だ! もしあそこの鉱石や魔石が採れなくなったら、ミウの魔道具開発は……!》

「お前のところにもあるだろ? 鉱石堀場」

《確かにあるが、アグリ鉱山で採れるものは格別なんだ! お前が使っているたくさん喋ろうぜくんにも使われているんだぞ!》


 そうだったのか、とマルクスは魔道具を見詰める。


「ところで、セリーヌとフィリアは? そこに居るんだろ」

《ん? ああ。もちろんだ》

《お父様!》

「おお! フィリア! 楽しくやってるか?」

《うん! ミウちゃんが楽しい魔道具いっぱい見せてくれるから》


 楽しそうな娘の声を聞き、自然と笑みが浮かぶファルク。可愛い子には旅をさせたいと、同行させたが正解だった頷く。


《ファルク。こっちは大丈夫だから、心配しないで》

「そうか。まあ、ちょっとした旅行だと思って楽しんで来い。こっちはこっちで楽しむから」

《そうさせてもらうわ。それじゃあ、またね》

《あ、ちょっと待て! いいか! この天才発明家ミウが、必ず空間転移が使える魔道具を作って見せる!! 楽しみにしているがいい!!》

「あいよ。楽しみにしてるぞ」


 それを最後に思念が途切れる。

 たくさん喋ろうぜくんのスイッチを切り、ファルクはすっと立ち上がる。


「さて、フィリアとさっき喋ったってレノスに自慢してくるか」

「意地悪ですね」

「はっはっはっは! これも親子の交流だ!!」


 楽しそうに笑いながら部屋から出て行くファルクを見送りながら、マルクスは一息入れようと紅茶を嗜むのだった。

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