第二十二話 強固な魔物達
「おらぁ！！」
「はあっ！！」
俺達のことを邪魔するかのように出現した魔物達との交戦が始まった。
前衛は、俺、レガンさん、母さんが務める。
そして、後方から援護するようにアメリアとララーナが遠距離攻撃をする。
「かったぁ……！！」
「打ち砕けぇ！！」
母さんの攻撃は弾かれるが、レガンさんの攻撃はかなり効いている。おそらく武具にはめ込まれている魔石の影響だろう。
見た感じ何かしらの強化魔法が付与されているように見える。
しかし、それでも完全には倒せていない。
「おりゃあ！！」
ララーナの手のひらから生み出された緑炎は、蔓となって魔物達を縛る。
そして。
「せいやぁ！！」
そのままガガゴンを自分のところへ引っ張り、そのまま炎を纏った拳で完全に打ち砕いた。
「お、おお……凄いなあの子。我が拳でも完全消滅しなかったガガゴンを砕くとは」
「か、回復だけじゃなかったのね」
これには、俺も正直驚いた。
エメーラは回復に加えて、炎操作が凄かったが。さすがは娘だ。おそらく、炎を拳に集中させることで攻撃力を異様なほどまでに上げているんだろう。
打ち砕かれたガガゴンを見ると、穴の部分が焼け焦げている。
「そこ！」
ララーナの活躍を微笑ましそうに見ながら、紫炎の矢を放ち飛んでいるコーバットを撃ち落としていく。
「はあ！！」
だが、やはり普通のコーバットではない。
完全には倒せていないのを、俺は紫炎を纏わせた長剣と短剣で切り裂いた。
「ありがとう！ パパ！！」
「気にするな！！」
「うおおお！！ 俺も負けてはいられない！！」
こうして、徐々に魔物は減っていく。
だが、いまだ動かずこちらをじっと見ている巨大な魔物が残っている。
「ゴーレムよ！ 粉砕してやる！！」
俺達の戦いを見て興奮しているのか。レガンさんが、ゴーレムへと突撃していく。右拳に魔力を収束させ、地面を蹴り跳躍。
しかし、ゴーレムはまったく動かない。
不気味だ……。
「【グランド・ブリッド】！！！」
放たれた強烈な一撃は、ゴーレムの腹部へと直撃。
凄まじい衝撃波で、こちらも吹き飛ばされそうになる。
「おお！ 凄い攻撃です！！」
「普通だったら、あんなの食らって無事じゃすまない……けど」
コーバットを切り裂きながら母さんは目を顰める。
「なに！？」
「無傷、か」
母さんの言う通り、レガンさんが放った一撃は普通の魔物だったら打ち砕いていてもおかしくない威力だった。
が、直撃を食らったゴーレムには一切のダメージがない。
微動だにもせず、何もしていないのでは？ と思ってしまうほど動いてもいない。
（ヤミノ）
「ああ。温存なんて考えている場合じゃないな。やるぞ、ヴィオレット！」
（うんっ）
相手は、闇の炎の影響を受けている魔物。
並大抵の火力じゃ倒せないだろう。
「……」
紫炎の弓を生成し、俺は炎を操作しようと集中する。
一点集中。
なるべく炎を絞るんだ。
「――――！！」
「動いたわね……！」
俺が今から放つ攻撃が脅威に思ったのか。今まで沈黙していたゴーレムが動き出す。
「させません！」
しかし、ララーナが緑炎で縛り、動きを封じる。
「――――！？」
「お父さんの邪魔はさせませんよ！ 大人しくしていてください！！」
「さすが、ララーナちゃん！ それじゃ、あたしもこれまでの成果を見せようかしら、ね！！」
俺へと向かってくるのはゴーレムだけじゃない。
他の魔物達も、俺の攻撃を止めようとこちらへ向かってきている。
「せーの！！」
それを止めるべく、母さんが紫炎を纏わせた槍を豪快に投げる。
タイミングよく横一列に並んだ魔物達は、渦巻く紫炎と槍で次々に倒されていく。
「―――よし！ これで！！」
今まで、ところどころ揺らぎがあった紫炎の矢だったが、今から放つのはまったくの揺らぎがない一本の矢。
狙うは……ゴーレムの魔石。
「【紫炎一閃】」
「――――」
「……いつのまに、穴が」
「まったく、見えなかったわ……」
放たれた紫炎の矢は、完全にゴーレムの魔石を焼き貫いていた。
魔石は、魔物で言う心臓。
それが砕かれたことにより、ゴーレムの体は崩れ落ちていく。
「って、呆けてる場合じゃないわね！」
「そうであった！ まだ魔物は！」
「一気に片付ける！！」
早くここを抜けて、敵を止めなくては。
