第十二話 魔道具の作り方
「ようこそ! ここがミウの魔道具制作部屋だ!!」
天才発明家精霊ミウに案内され、辿り着いたのは様々な素材、道具。はたまた製作途中であろう魔道具などが並んでいた。
そして、ここにも人工精霊がおり、素材の加工などを黙々と進めていた。
「ちなみにここは、第一制作部屋だ」
「第一ってことは、いくつもあるのか?」
「当たり前だ。全部で四部屋ある。今後も増えていくだろうがな。さてさて」
ミウは、そそくさと部屋の奥にある大きなテーブルへと近づき、こちらに手招きをしてくる。
「さあ、さっそくだが空間転移の魔法陣を見せてくれないか?」
なにか板状のものを取り出し、ペンを右手に持つ。
まさかあれに術式を書き込むつもりなのか?
「パパ。ここはわたしがやるね」
「ああ。頼む、アメリア」
自ら前に出てアメリアは、魔法陣を展開。
ミウはきたきた! と食い入るように魔法陣を確認する。
「ほう……ほうほう……これが伝説の空間転移。その術式か……」
魔法陣と板を交互に見ながらペンをゆっくり動かしていく。
「あ、時間がかかると思うから。適当にくつろいでいてくれ。ただし、下手にものを触るんじゃないぞ! 何か頼み事があれば近くのミウズに言うんだ。大抵のことはしてくれるはずだ」
「ミウズ?」
「そこで作業をしている人工精霊達だ。そいつらは、ミウのマナから作ったんだ」
と、俺達は黙々と作業をしているミウズなる人工精霊達を見る。
「そうだったの!?」
「全然似てないですよ?」
純粋なフィリア様とララーナは、素直な感想が口から出る。
「馬鹿ものめ! わざわざミウと同じにするはずがないだろ! あくまで素体となったのがミウなだけだ」
「は、はじめまして」
少し遠慮気味に近くに居たミウズにフィリア様が挨拶をする。
すると、ぴたっと作業を止め。
「はじめまして」
挨拶を返してくれた。
そして、何事もなかったかのようにまた黙々と作業を進める。
「作業効率を上げるために、助手として作ったのがミウズだ。素材採取から、加工、制作。他にも魔道具の試運転。色んなことを手伝ってもらっている」
ペンで術式を書きながらミウズについて語っていく。
確かに、あれだけの魔道具を一人で作るのは限度がある。
先ほどミウも言っていたが、素材の採取、加工、制作。そして出来上がった魔道具の試運転。この全てを一人でやるとなれば、どれだけの時間がかかるか。
「そう言えばミウ。彼女達が装備していた武器ってなんなの?」
「ああ、あれか。あれは魔力武器だ。所謂簡易的な魔剣、みたいな?」
セリーヌ様の問いかけにミウがさらっと言う。
か、簡易的な魔剣って。
「実は、前々からああいう武器の構造は頭にあったんだ。だが、ミウは生活を豊かにする魔道具を作ることに専念した」
難しいところに行き当たったのか、眉を潜めながら、ペンで頭をとんとんと小突いている。
「簡易的なものだからな。本物には負ける。それにこれと言って大きな戦いもないし。率先して作ろうとも思わなかった」
再びペンを動かすも、ため息を漏らす。
「でも、ほら。イア・アーゴントだっけ? 妙な侵略者が現れたそうじゃないか。普通に武器も、魔法も効かない。効くのは聖剣や魔剣のような特殊な力を持った武器。あ、これは出番だなって急ピッチで作ったんだけど……まだまだ改良の余地ありなんだよねぇ」
やれやれと、被りを振るが……あれでも十分凄い武器だと思うんだが。
「あ、そうだ。お前達、実験したいことがあるから魔力武器を使って見ないか? いや! 使ってくれ!!」
びしっとペンを俺達に向けながら叫ぶミウ。
「実験したいことって、まさか闇の炎を武器に纏わせるみたいなことかしら?」
「その通り! もっとデータが欲しいんだ。お前達も世界を守りたいんだろ? だったらミウの実験に付き合うんだ!」
どうやら拒否権はないようで、近くにあった魔力武器をテーブルの上にいくつか置いていく。
「こっちは、わたし一人で大丈夫だから」
まあ、こちらとしても丁度闇の炎に耐えられる武器が必要だったから、断る理由はない。
「使い方は簡単。魔力を流し込めば魔石に刻まれた術式が起動して刃となる。壊してもいい。いや、むしろ壊せ!!」
おそらく耐久性を図るためなんだろうが。
自分で作ったものを、問答無用で壊せって。いや、それだけ本気で作ろうとしているってことなの、か?
「わかった。だけど、データはどうやって取るんだ?」
「心配するな。この部屋を出て真っすぐ進むと実験場がある。そこに居るミウズがデータを取ってくれるから安心しろ」
そう言うと、また魔法陣を食い入るようにミウは見始めた。
「じゃあ、アメリア。俺達は行くけど。無理はするなよ? もし限界が来たら、代わるから」
「うん。わかった」
魔法陣を展開している間も、どんどん消耗していっている。
もし限界が来たら、俺やヴィオレットが代わりに魔法陣を展開することになるだろう。去り際に、頭を撫でてやる気持ちよさそうにアメリアは目を細めた。
自分もとヴィオレットも同時に。
「行ってらっしゃい、パパ。ママ」
「ああ、行ってきます」
さて、魔力武器か……襲撃を受けた時に結構高めの火力で砕けてしまったけど。
今度はどれほど耐えられるか。