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第四話 学生達と森へ訓練

 闇の炎が消えてから早四日。

 街では、まだ騒ぎになっている。噂が噂を呼び、わざわざ街を訪れる者達が居る。その中には、王都からの研究員達も居る。


 ずっと闇の炎を研究している者達だ。

 どうして、どうやって闇の炎が消えたのか。今では、ずっと闇の炎があった大地を調べている。

 

「面白いか?」

「うん」


 その闇の炎の子供は、今俺の膝の上で楽しそうに本を読んでいる。

 アメリアは、気の利くいい子だ。

 甘えん坊ではあるが、家の手伝いを自分から進んでやっている。最初は、戸惑っていた父さんと母さんも今では、本当の孫のようにアメリアを可愛がっている。


「なあ、アメリア。ずっと家に居て息苦しくないか?」

「ううん。パパと一緒だから息苦しくないよ。パパの方こそ、大丈夫?」

「俺も大丈夫だ」


 とはいえ、いつまでもこうしてはいられない。

 いずれは、外に出なければ。

 

「おーい、ヤミノ」

「母さん? どうかした?」


 今日は非番で、ずっと家に居る母さん。戦闘教官と言っても毎日ではない。他にも教官は居るので交代制なのだ。

 

「あんた、そろそろ外に出たいって思ってるでしょ?」


 部屋のドアに背を預けながら問いかけてくる。

 

「まあ、それなりに」

「明日、あたしが受け持っている生徒達数人とちょっと遠出して戦闘訓練をすることになってるの」

「まさか、それに俺も?」

「特別枠ってことよ。あたしが理事長に話しておいた」


 生徒でもないのに……いいのか? それ。

 ちなみに母さんが教官をしている学園では、戦士科と魔法科に分かれており、母さんは戦士科の教官の一人なのだ。

 

「本当にいいのか?」

「いいのいいの。あたしの息子だって言ったら一発で了承してくれたわ」

「いやでも、その間にアメリアが」

 

 この数日で、父親としての自覚が更に増してしまった。そのため、娘を一人残すとなれば心配になってしまう。

 しかし、アメリアは笑顔を向けてくる。


「大丈夫だよ、パパ。ちゃんと一人でお留守番できるから。それに」


 きゅっと俺の左手を握り締める。


「パパとママとわたしはずっと繋がってるから。いつでもどこでも一緒なんだよ」

「そ、そうか」

「あんたもすっかり親ね。アメリアちゃんほどのしっかり者なら大丈夫よ。そんなに心配なら一緒に連れて行く?」

「いや、それも」


 闇の炎の子供とはいえ、危険な地に連れて行くのは。


「ちゃんとお留守番してるよ」

「……よし。行くか」

「うん。いってらっしゃいパパ」

「決定ね」



・・・・



「さあ、皆! 紹介するわ! この子が、あたしの息子のヤミノよ。今日は特別枠として戦闘訓練に参加するからよろしく!!」

「いでっ!? えっと、母さんからたぶん聞かされていると思いますが、息子のヤミノです。今日は戦闘訓練に参加することになりました」


 翌日。

 俺は、母さんと一緒に戦闘訓練に参加する学生達と集合した。向かうのは、街から少し離れた森林地帯を進み、目的地である滝が流れる川辺まで行く。

 そこで、母さんから色々と指導を受ける。

 途中、野獣や魔物に出くわした場合は、各々で対処。危ないと思ったら母さんも参加することになっている。


「知ってます! 酒場で働きながら、カーリー教官から毎日指導を受けているんですよね!」


 と、少し幼い顔立ちの金髪男子生徒が手を上げて言う。


「相当な実力だそうだな? 後で手合わせしてくれよ」


 続いて、強面の茶髪オールバックの男子生徒が腕組をしたまま言ってくる。


「それに今世界を騒がしている勇者一行!」

「勇者……」

「そのメンバーである聖女」

「はいはい! そこまで! 話ならまた後で。今は時間が惜しいから移動するわよ!!」


 胸の大きな赤髪ツインテールの女子生徒の発言を母さんが無理矢理止める。

 やっぱり簡単には忘れられないものだな。

 ここ数日は、アメリアと一緒に過ごしていて本当に楽しかったんだが……。


「えー? もっとお話ししたいです! カーリー教官!!」

「今日は、遊びに行くわけじゃないのよ? あんた達は、戦闘訓練のために選ばれた三人。いわば多くの生徒達のトップ。少しは自覚を持ちなさい。良いわね? セナ」

「……はーい。ヤミノさん! 後でいっぱいお話しましょうね!」

「お、おう」


 やたらとテンションが高い唯一の女子生徒の名前はセナ。

 こんな遠足気分な感じだが、母さんが受け持つ多くの生徒達から選ばれた三人のうちの一人。実力は、かなりのものだろう。


「僕も興味あるからお願いしますね」


 金髪の男子生徒の名前はアルス。

 可愛い顔をして、結構むちゃくちゃな戦いをするとか。


「お前ら。教官が先に行ったぞ。さっさと来い」


 教えるべき生徒達を置いて、さっさと行ってしまった母さんの後に続いて進んでいたオールバックの男子生徒の名前はビッツ。

 やんちゃそうな見た目だが、この中だと一番真面目でリーダーのような立ち位置らしい。


「あ、待ってよー! カーリー教官!!」

「急げー」


 この三人と一緒に俺も……。


「おーい! ヤミノさーん! 早く早くー!!」

「さっさと来なさい! ヤミノ!! 置いて行くわよ!!」

「今行く!!」


 戦闘訓練は、毎日のようにやっていたが、実践はそんなに経験がない。

 迷惑をかけないように、しっかりついていかないとな。


「ヤミノ。ちょっとこっち」

「え? あ、うん」


 皆に追いついた後、母さんに手招きされる。

 生徒達とは距離を取り、母さんと二人っきり並んで話す。


「悪かったわね。後で、あの子達にはちゃんと言っておくわ。勇者一行の話はしないようにって」

「……大丈夫。いつまでも引きずってはいられない」


 それに、結婚を約束したのは小さい頃。

 もしかしたら、ミュレットの方はもう忘れているのかもしれない。これまでは、幼馴染として仲良くしてきただけ。

 それだけの仲、なのかもしれないミュレットの中では。

 

「そう。まあ、今のあんたは妻子持ちだもんね。ねえ? いつになったら会わせてくれるの? 嫁さんに」


 とんとんっと俺の体を突く母さん。

 

「俺にもわからない。アメリアが言うには、アメリアを生んで今は疲れているみたいなんだ」

「ふーん」

「お話しましょうー!!」

「うお!?」


 痺れを切らしたのか。セナが、俺の隣に跳んでくる。


「こら、セナ。まだ親子の対話中なんだけど?」

「すみません!」

「はあ……」


 そういえば、闇の炎の力を使えるようになったみたいだけど……まだ使い方はわからない。

 いったいいつになったら。

 そして、どんな力なんだ。

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