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第三話 王との謁見

 王城へ入るのはこれで二回目だ。

 あの時は、パーティーの途中で王が参加してきたので、挨拶はした。とても気さくというか、こう言ったら失礼かと思うんだが、親しみやすいおじさんって感じだった。

 王妃は、会っていないが噂ぐらいなら聞いている。

 元は、王都を中心に活動する冒険者だったらしく、王がよく城を飛び出してやんちゃをやっていた頃に出会い、色々あって結婚したんだとか。

 王妃は、女冒険者として王都では有名で、最強とか言われていた。今は、王妃となって前線を退いているようだが、数々の伝説を残しているため王都の冒険者達にとっては憧れの存在である。


 なんだろうな。母さんに似ているところがあるな。

 どんな人なんだろうな……。

 などと考えながら王城を移動していると、王の間へ到着。


「ヤミノ・ゴーマドご一行を連れてきた。王への謁見を」

「お待ちしておりました」

「王がお待ちです」


 トーリさんが言うと兵士達が、扉を開ける。

 その奥には、前の挨拶時とはまったく雰囲気が違うファルク王が鎮座していた。その隣には、王妃セリーヌが、こちらを観察するかのように見詰めていた。

 

「よく来たな。勇者主催のパーティー以来か? ヤミノ・ゴーマド。そして、その義妹……いや娘のアメリア」


 そう。あの時は、アメリアを義妹という設定で紹介していたのだ。

 どうやらその時のことはよく覚えているようで、ふっと笑みを浮かべている。


「その節は、王を騙すような真似をしてしまい」

「いい。俺は、まったく気にしていない。だから謝る必要もない」


 さっそく嘘をついてしまったことを謝罪しようとするも、ファルク王は気にしていないと許してくれた。


「それよりも、さっそく話をしよう。さあ、座ってくれ」


 そう言って、兵士達が人数分の椅子を用意してくれる。


「え? 僕らも?」


 と、ヴィオレットやエメーラの分も用意してくれていたらしい。


「お? 本当に喋るんだな。見た目は、完全に人形にしか見えんが」

「僕らは二人でひとつ使うから。ひとつ下げていいよ」

「お、おいエメーラ」


 気さくな王とはいえ、王に対して失礼だと思い慌てるも。


「おお、そうか。なら椅子をひとつ下げさせる」


 これもファルク王は、寛容な心で受け止め兵士に椅子をひとつ下げるように指示を出す。そして、エメーラはヴィオレットと一緒にひとつの椅子に座り込んだ。

 ちなみに漫画は取り上げている。どうせエメーラのことだから、王と話していても構わず読むかもしれないと、先手を取っていたのだ。


「申し訳ありません、陛下」

「くっくっく。なかなか堂々としているじゃないか。それにしても……」


 今一度、ファルク王はヴィオレットとエメーラを翡翠色の瞳で見る。


「その小さいのが、謎だらけの闇の炎。その化身とはな。で、その隣に座っている可愛い少女達が」

「はい! エメーラお母さんの娘でララーナと言います! 王様!!」

「お、元気がいいな。俺は、ファルク・エーベ・ヴィローガルツだ。そして、隣に居るのは」

「ファルクの妻セリーヌよ。ヤミノくん、だったかしら?」

「は、はい!」


 う、うーん。やっぱりなんかこう母さんに似ているというか。いや、見た目とかじゃなくて。こう……雰囲気? 戦う女性って言うか。

 なんか声が上ずってしまった。

 見た目は、茜色の長い髪の毛に青い瞳。肩を出した真っ白なロングスカートのドレス。そして、頭には王妃だけが被ることを許されているという青い宝石が散りばめられたティアラ。

 

 ファルク王は、金色の髪の毛短く整えており、顎からはこれまた整えた髭を生やしている。

 甲冑の上に、赤いマント、背後には巨大で豪華な大剣が見える。

 戦う王様。

 そんな言葉が相応しい見た目だ。


「そう緊張しなくていいわ。気楽に」


 気楽にと言われましても。


「……」


 思わず、左方面に座っている母さんやマルクスさんを見る。

 だが、頑張れ、と言っているかのように頷くだけ。

 

「闇の炎を扱えるそうだけど。実際に見せてもらえるかしら?」


 いきなりきた。

 だが、今回はその件で呼び出されているんだ。とりあえず、王妃の要望に応えるべきだろう。

 

「お待ちください。セリーヌ様」


 が、それをトーリさんが止める。


「何が起こるかわかりません。まずは防御結界を張って安全の確保を」


 トーリさんの言い分に、俺も確かにと思ってしまう。

 俺は、それなりに扱えるようになってきた。そして、今のところ闇の炎は害ある力ではないと思っている。だけど、それは俺達がだ。

 それにまだ未知数であることは、間違いない。


「私達の炎は危険なものじゃないんですけど」


 ララーナはむっとするも、トーリさんは気にせずに言い続ける。


「そうだとしても、我々は王と王妃を守る義務がある」

「むう……」

「ララーナちゃん。ここは我慢しよ。ね?」

「……はーい」


 なんとかアメリアがララーナを宥めてくれた。

 

「お嬢ちゃん達。気を悪くしないでくれ。トーリは、これが仕事なんだ」

「いえ。こちらこそ、配慮が足りていませんでした」

「……結界を張り終わりました」


 トーリさんが張った結界は、見た感じ魔法から身を護るものみたいだな。

 特に、怪しい様子はない。

 いたって普通に強力な魔法防御結界だ。


「では」


 その後、俺は右の手のひらに紫の炎を灯す。

 それを見た周囲は、ざわめきだす。

 肝心の王妃は、なるほどと言わんばかりに見詰めていた。


「これが、ヴィオレット。つまり彼女の炎です」


 俺の言葉にヴィオレットは反応し、ぺこりと頭を下げる。


「そして、これがエメーラの炎」


 続いて左の手のひらに緑の炎を灯す。が、エメーラはふわあっと欠伸をした。

 

「報告では、空間転移を扱えるとあったが?」


 と、ファルク王が問いかけてくる。


「はい。使えます」

「なら、見せてもらえるか?」


 俺はわかりましたと頷き、エメーラを俺の手元に転移させる。


「なにすんのさ」

「挨拶ぐらいしろ。漫画読ませないぞ」

「えー……エメーラです。よろ」


 ……エメーラらしいけど、後で説教だな。その後、エメーラをヴィオレットの隣に転移させる。


「いかがでしょうか?」

「実に良い力だ。まさかこの目で空間転移を見ることができるとは」

「ええ。私も、実際に目にして年甲斐もなく興奮してるわ」


 ファルク王やセリーヌ王妃だけじゃない。周囲に居る兵士達も、かなり興奮しているようだ。

 

「そいつは闇の炎が持つ特殊能力だそうだが……次は、例のやつについて詳しく聞かせてくれるか?」


 ここまでは闇の炎のアピール。

 大分興味を示してくれた。

 そして、次は当然……永炎の絆についてだ。

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