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第一話 王都へ行く前に

いいねが千件を超えました。

そして、今回の話で十万文字を超えました。


これからも応援よろしくお願い致します!

 王都へは一瞬。

 なので、予定の時間ギリギリまでリオントでゆっくりできる。

 この大陸一の国であり、王からの呼び出し。

 本来なら、寝る間も惜しんで移動するところだが……本当に空間転移は凄い力だ。それに、王都へ行ったら楽しむ余裕なんてないだろうし、今の内に心に余裕を持たせておかないと。


「あっ」


 いつもは、母さんと訓練をしている時間。

 が、今回に限っては体力を温存するために軽く運動するだけで終わった。後は、家族サービスというか。元気いっぱいで甘えん坊な娘達と時間まで街を歩こうと思い、自宅を出た。

 そこで、とある女性と遭遇する。

 小麦色の長い髪の毛、どこか儚げな雰囲気がある顔。


「おはようございます、マリアさん」

「うん、おはようヤミノくん」


 ミュレットの母親であり、母さんの親友でもあるマリアさん。

 実は、彼女も母さんと同じで冒険者をやっていた。

 マリアさんは、母さんと違って魔法が得意で、冒険者を引退してからは、戦いから遠ざかり、育児に専念していた。

 

 

 だが、マリアさんの夫であるトーマさんは……すでに亡くなっている。同じ冒険者仲間で、結婚した後も冒険者として活動を続けていた。だが、ある日のこと。討伐依頼の途中で、予想外の魔物と遭遇し、パーティーメンバーを庇って死んでしまった。

 それからは、母さん達の手助けもありながら一人でミュレットを育てていたのだ。今は、シャルルさんの誘いを受け学園で魔法の講師をしている。


 そうそう。トーマさんには弟が居るのだが、王都に居る聖剣使いの一人で、騎士団を率いている隊長でもある。名前はトーリという。

 マリアさんの話では勇者将太に剣術や聖剣の使い方を主に教えていたのは、トーリさんらしい。

 

 夫は亡くなり、娘も世界を守るために旅に出ている。

 そして……俺との事情を知っている。

 いつものように振舞おうとしているようだが、無理をしているのだとわかってしまう。


「今日は、いつもの訓練はいいの?」


 当然ながら、家が隣同士なので、俺達が訓練していることも知っている。


「今日は、王都へ行かなくちゃならないんです」

「あ、そっか……」


 俺が、王から呼び出されたことはリオント中に広まっている。

 当然だ。

 なにせ、王直々の騎士団がリオントにわざわざやってきて、その旨を伝えたのだから。その騎士団を率いていたのは、トーリさんだったのだ。

 

「あの、トーリさんとは」

「すぐに帰って行ったから、なにも話せなかった……」

「そう、ですか」


 確かに、すぐ撤退していったのを俺も見たけど、その後に義理の姉であるマリアさんのところへ行くか、何か言伝を部下の騎士に頼んでいたかと思ったけど……。


「えっと、大丈夫ですか?」


 いまやミュレットも家にいない。

 父さんや母さん、シャルルさんなんかも気にかけてはくれているが、それでも基本家で一人。寂しい思いをしているんじゃないかと。

 なのに、安易な言葉をかけてしまった。


「心配してくれてありがとう。でも大丈夫。家では一人だけど、皆気にかけてくれるから。特にカーリーが。昨日なんて、お酒を持ってきて一緒に飲むぞー! なんて言ってきたんだから」

「あ、あれ? マリアさんってお酒は」

「うん。凄く弱い。だから、私はジュース。それとカーリーの話し相手かな」


 なるほど。だから、昨日は帰りが遅かったのか……。

 どうせ父さんのところで飲んできたんだろうと思ったのが。父さんは酒だけ持って帰って行ったって言ってたし。

 これで謎は解けた。


「すみません。母が迷惑をかけて」

「いいの。カーリーなりに気を使ってくれているみたいだし」

「パパ。お待たせ」

「準備完了です! お父さん!!」


 しばらく立ち話をしていると、アメリアとララーナが現れる。

 

「あ、マリアさん。おはよう」

「はい、アメリアちゃん。おはよう。今日も可愛いね」

「おはようございます! マリアさん! 今日はなにかお手伝いできることはありますか!」

「おはよう、ララーナちゃん。今日は何もないよ。いつもありがとうね」


 二人も、よくマリアさんのところへ出向いている。

 ……うん。大丈夫なんだろうな。

 マリアさんの笑顔に、嘘はないように見える。まあ、寂しいのも嘘じゃないんだろうけど。


「さて、家族の交流を邪魔しないように。私はこれで失礼するね」

「わたしは別にいいよ?」

「私もです! どうせなら一緒にどうですか!?」

「ふふ。誘ってくれてありがとう。でも、私も私で用事があるから。これから学園に向かわなくちゃならないの」


 と、二人の頭を優しく撫でてマリアさんは去って行く。


「余計なお世話、だったかな?」


 徐々に小さくなっていくマリアさんの背中を見詰めたままアメリアが呟く。


「そんなことないよ。アメリア達の笑顔に、マリアさんは本当に助けられてるっていつも言っているんだから」

「それならよかったです! では、お父さん! 今日も張り切って街へ出かけましょう!!」

「いや、今日はふらっと歩くだけだぞ」

「わかりました! 全身の力を抜いて歩きます!」


 そう言って、ララーナはふにゃっと体から力を抜く。

 

「それじゃあ、歩けないよ。ほら、普通に」

「はーい」


 その様子を見ていた周囲の人達は、思わずくすっと笑みを零す。

 その後も、俺達を見かけるとリオントの人達は元気に挨拶をしたり、王都へ行く俺達を心配してくれたりと。

 今日も今日とて、いい街だと実感するのだった。

気づいている方々は、何人居るでしょうか?

今回登場したミュレットの母親ですが、名前を変更しております。


前に出てた名前はマーガレットとなっていましたが、マリアに変更しましたことを、ここにご報告します。

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― 新着の感想 ―
[一言] マリアさんとしては娘には親友の息子と結ばれてほしかったんだろうけど、こればかりはね… NTRタグついてるし主人公視点ではそう感じたんだろうけど、実際は傍から見たら単なる片思いからの失恋でし…
[一言] まぁ、親が立派でも子はアレな時もありますし、親がアレでも子はマトモな時もありますし? 親子の縁は切っても切れませんが、既に親元を離れているのなら何でも尻拭いするのは過保護なんでしょうね …
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