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プロローグ

新章開幕です。

 これは、夢? いや記憶?

 ぼんやりと見える。

 視界に映るのは、赤、青、黄、緑、紫、白、黒。その中央には、全ての色が混ざった巨大な炎。まるで、全ての炎の頂点かのように、激しく燃えている。


 炎……これは、ヴィオレットやエメーラ達の記憶なのか?


 だけど、なんで俺が。

 いや、もしかして彼女達とひとつになったから? 記憶を共有しているのか。

 

 ん? 中央の炎が消えていく?

 徐々に小さくなって……弾けた? 

 そして、周囲の炎も消えていく。


 あ、視界が暗くなって―――



・・・・



「―――いつもの天井、か」


 再び目が覚めると、俺はいつもの自室の天井を見上げていた。

 しかし、今となってはいつものと違うところが多くある。

 まずは、左右から聞こえる寝息。

 左には、紫の闇の炎ヴィオレットとの間に生まれた娘アメリア。右には、緑の闇の炎エメーラとの間に生まれた娘ララーナ。


「あーあ、また涎……」


 本当に気持ちいいのか。ララーナは、寝る時によく涎を垂らす。

 

「……さっきのは」


 娘達の寝顔を見た後、俺は再び天井を見上げる。

 脳裏に浮かぶのは、夢に見た俺には存在しないはずの記憶。

 普通に考えて、あれは闇の炎達の記憶だろう。

 緑がエメーラ。紫がヴィオレット。その他にも、多くの炎達。中央で燃えていた色鮮やかな巨大炎は……彼女達の親? いや、支配者?

 

「んあ? あー、起きたんだね。はよー」

「エメーラ……まだ読んでいたのか?」

「いやー、人間は。いや前の勇者は良い文化を残してくれたよ。これで、僕のぐーたら生活も極まるってもの」


 娘達を起こさないように、そっと身を起こすと、王都に行った時に買った絶妙な柔らかさの巨大クッションに、ヴィオレットと共に寝転がっているミニエメーラから声をかけられた。

 巨大と言っても、大人一人で埋まってしまうほど。

 だが、彼女達のサイズならば二人仲良く寝転べる。


 そして、ヴィオレットがすーすーと眠っている隣で、エメーラが読んでいるのは、将太の前に召喚された勇者がこの世界に齎した文化のひとつ。

 漫画だ。

 これまで、本と言えば文字ばかり。またはちょっとした絵が描かれているようなものだった。しかし、勇者が齎した漫画により、今まで本なんかと避けてきた者達も、進んで読むようになったのだ。

 他にも、勇者により齎された文化は多くあり、世界に今もなお影響を与えている。


「まあ、俺の中から出てきてくれたのは良いけど」


 アメリアの発案で、エメーラが興味を示しそうなもので釣った。

 その結果、今のように外へ出てきてくれて、両親との挨拶もできた。しかし、今度は部屋から出てこようとしない。

 

「なあ、エメーラ。聞きたいことがあるんだが」

「なーに?」


 漫画を読みながらも、エメーラは返事をしてくる。

 俺は、自分が見た光景のことを自分なりに言葉にして話した。彼女達には、記憶が欠落しているところがあるけど、もしかしたらと。


「……ふーん。僕らと同じ炎。それに色鮮やかな巨大炎ね」

「なにかわかるか?」

「なんとなく覚えがあるかも」

「それでもいい」

「……中央で燃えていた巨大炎は、僕らの創造主。所謂親ってところかな。全部は思い出せないけど。僕ら全員を分け隔てなく大事にしてくれていたっていうのは覚えてるよ」


 やっぱりそうだったのか。

 

「それにしても、それって僕らの記憶でしょ?」

「ああ、そうなるかな」

「人の記憶勝手見ないでくれますかー」

「そんなこと言われても……」


 とはいえ、これは彼女達闇の炎との絆がより深まってきたということなのかもしれない。夫婦関係になってから、仲を深めるとか、色々おかしいけど。

 

「そーいえば、今日は王都へ行くんしょ?」

「ああ。そうだ。というか他人事みたいに言っているけど。お前も来るんだぞ、エメーラ」

「うへー、めんどくさー」


 そう。今日は、王都へ行くことになっている。

 これで、王都へ行くのは三度目。

 俺には、縁のないところだと昔は思っていたけど……数か月の間に、何度も行くようになるとは。それも、本来なら数日はかかるところ一瞬だからな。


「でもさ、本当に大丈夫なわけ? 聞いたけど。王都は、闇の炎というか闇全般を毛嫌いしている組織の総本山があるんだよね?」

「……ああ」


 エメーラの言う通り、王都には光こそ正義と謳う組織の総本山がある。前に、リオントの闇の炎を消えた時に訪れた研究員達も、その組織の一員。

 長い期間、闇の炎が燃えていた大地を調べていたようだが、今は帰還している。

 何の成果も得られなかったのだろう。そこへ、俺と言う存在が現れた。すぐにでも調査するのかと思ったが、思っていたより慎重だった。が、ついに王都へ呼び出されることとなった。

 

 呼び出したのは、組織ではなく王。

 とはいえ油断はできない。

 王都へ入った瞬間、何が起こるか。警戒は怠らないようにしないと。今は、人同士で争っている場合じゃないんだから。

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