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第二十九話 フォレントリアの集落

ブックマーク二千件突破。

久しぶりにランキング一桁にもなれましたし、いい思い出になりました。


これからも、応援よろしくお願いします!

「ここが、私達の集落だ」

「おお、相変わらずだなここは。前来た時と変わっていない」

「馬鹿を言うな。お前が来た時と同じなわけがないだろ。ほら、あそこを見ろ。新築されているだろう」

「……ん?」

「わからない奴だな。石だらけの場所に住んでいるからだ」

「いや、エルフの目が凄いだけだと思うが。そもそも、我だって昔は君達のように森の中の集落にだな」


 辿り着いたのは、巨大な木々を利用した集落。

 その全てが、木材や植物で造られており、リオントと比べても住んでいる世界が違うんじゃないかと思ってしまう。


「ん? ファリー、フェリー。そっちの人間は」


 集落に入ると、一人の男性エルフが問いかけてくる。


「あら? シャルルじゃない。随分と久しぶりね」

「やあ、諸君! 天才仙狐ことシャルルさんだ!!」

「なんだ、シャルルじゃないか。もう遊びに来ないかと思ったぞ」

「今日はなにをしに来たんですか?」


 どうやら、ファリーさん以外は、シャルルのことを友好的に思っているようだ。


「大人気ですね、シャルルさん」

「はい。シャルルさんは、この地に訪れてすぐ皆と打ち解けたんです。ただ、ファリーとは喧嘩ばかりで」

「まあでも、本気で嫌っているわけじゃないと思いますけど」


 言葉ではあーだこーだと言っているが、それでも本気で嫌がっているようには見えない。

 

「皆! 聞いてくれ!! ここに居る人間。ヤミノは、ただの人間じゃない!! 私達の守り神様と同じ闇の炎の力を扱える特別な人間だ!!」

「え? 守り神様を?」

「じゃあ、あいつが今噂になってる?」


 見た感じ、ファリーがこの集落のトップなんだろう。

 彼の叫びに、次々とエルフ達が姿を現す。

 

「じゃあ、彼がこの森に来たのは」

「ああ、皆察しの通り。守り神様……闇の炎を求めてだ」

「じゃ、じゃあ守り神様はいなくなってしまうの?」

「もしそうだとしたら、俺達は彼を止めなくてはならないぞ」

「だけど待って。ファリーが連れてきたのよ? なにか考えがあるんじゃ」


 やっぱりずっと守り神として信仰してきたんだ。それがなくなるとなれば、エルフ達は俺に敵意を向けるのは当たり前だ。


「ヤミノ。彼女を」

「……はい。ヴィオレット、また頼めるか?」

「うん」


 俺は、ヴィオレットをエルフ達の目の前で下ろす。

 

「なっ!?」

「お、大きくなった?」

「ま、待って。あの紫の炎ってまさか」


 元の大きさに戻ったヴィオレットを見て、エルフ達はおそらくここの守り神である闇の炎のことを連想しただろう。

 よし、ここで俺が。


「彼女は、皆さんの察しの通り。闇の炎。その化身です。……俺は今を守るために、ここの闇の炎に会いに来ました。この地にとって闇の炎がどんな存在なのかは知っているつもりです。だから、まずは彼女と話し合ってみるつもりです」

「は、話ができるのか?」

「もしかして、彼女のように人の姿になって?」

「いえ。彼女……ヴィオレットが言うには、今の状態は所謂休眠状態にあるそうなんです。ですから、人の姿になることはできない」


 ここへ来る前に、ヴィオレットが思い出したことを話してくれた。

 今、世界中で確認されている闇の炎達は、ほとんど意思のない状態にある。ただその場で燃え続け、周囲に影響を与えているだけの存在。

 彼女達は、俺とひとつになることでようやく完全に意識を取り戻し、そして徐々に力を取り戻していくのだと。そして、アメリアのようにどうして子供ができるのか。その辺りは、まだ思い出せそうで思い出せないようだ。


「では、どうやって?」

「俺が、闇の炎の中に入って直接会話をしてきます」

「炎の中に!?」

「それは危険なんじゃ」

「いや、だが彼が本当に闇の炎を操れるなら」


 ヴィオレットの時は、精神的に疲れていたせいか。炎の中に飛び込んで、そのまま一体化をしてしまった。本来なら、炎の中で対話をするのだという。

 聞けば、最初何度か起こそうとしたらしいが。俺の状態がおかしいと察したヴィオレットが、そのまま寝かせてくれたのだと言う。本人も恥ずかしがり屋だったため、うまく会話できるかどうか不安だったようで、好都合だったのだ。


「その時に、ここの闇の炎……エメーラと話し合おうと思います」

「エメーラ? それは守り神様のお名前なのか?」

「その通りだ!!」


 エルフ達の反応が変わりつつある中、シャルルさんが俺の左隣に立ち、森中に響きたるような声で叫び始める。


「闇の炎達には、我らのように名があり、意思がある! 君らも気づいているだろうが、この地がこんなにも広大で豊かなのは、闇の炎の! エメーラの意思!!」

「守り神様の」

「意思」

「だが、意思あれど我らでは会話することすらできない。心から感謝の言葉を送ろうと、本当に伝わっているかわからない!! 彼女の言葉が聞きたくはないか?」

「守り神様の……エメーラ様の言葉!」

「き、聞きたい!」


 シャルルさんの叫びを聞き、エルフ達が沸き上がる。

 

「ならば彼に、守り神様の夫となるヤミノくんに任せてみないか! さすれば、その願い叶うであろう!!」

「夫!?」

「ど、どういうことなの?」


 衝撃の言葉に、エルフ達は一斉に俺の方へ視線を向ける。


「ちょ、ちょっとシャルルさん」

「なんだ?」

「手助けしてくれるのは嬉しいですが、まだ夫になるとは」

「はっはっは。なにを惚けたことを。闇の炎と君が一体化することとは、夫婦になることだとアメリアちゃんが言っていたぞ? それに君ぃ? なんだかんだでヴィオレットとの生活を楽しんでいるのではないか? ん~?」


 にんまりと耳を打ちをしていた俺を見るシャルルさん。

 た、確かに最初と比べて普通に楽しんでいるけど。


「……んんっ。と、とにかく! 俺にチャンスを頂けないでしょうか?」

「ど、どうする?」

「少なくともファリーとフェリーは彼らを信用しているようだし」

「私は、まだ完全には信用していない」

「こらこら。水を差すなファリー。ヤミノくんは、ファリーの連続攻撃を防ぎ、一撃を入れた強者だぞ!!」

「あのファリーに!?」

「ば、馬鹿を言うな! 一撃は入れられていない!!」

「一撃はということは、攻撃は防いだってこと?」

「いや! それは……」

「簡単に防いだ!!」

「シャルル!!」


 結局、話がまとまらず時間だけが過ぎていった。

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