第二十二話 ギルドマスター公認
「―――では、僕の方から各支部のギルドマスターへ話を通しておく。進展があったら、すぐに知らせるよ」
「よろしくお願いします!」
「頼んだわよ、マルクス」
なんとか話は終わった。
一山超えたということで、俺は深く息を漏らす。
「あ、そうだ。マルクス。この子にカード作ってあげて」
「ということは、ヤミノくん。冒険者になるんだね。でも今後のことを考えるなら、冒険者カードは必要になる。カードがなければ入れないところもあるからね」
そう。今後のことを考えるなら冒険者カードは必要だ。
確か、A級冒険者じゃなければ入れない魔境に闇の炎があるって話だからな。それに、冒険者カードがあれば身分証明にもなるから、検問とかも楽になる。
「じゃあ、特別にリオント支部ギルドマスター公認の証をつけよう」
「気が利くわね、マルクス」
「い、良いんですか? ギルドマスター公認の証を貰って」
「良いんだよ。君は、いずれそれだけのことをするだろうからね。未来への投資というやつだ」
ギルドマスター公認の証。
それは、本当に特別なもの。
ギルドマスターからもっとも信頼された証ということで、それがあるだけで冒険者として箔が付く。
「それにしても、ようやくと言ったところだね。まあ、親が凄腕の冒険者だからって周囲が勝手にそうだと決めつけていたところがあったけど」
「ちなみに俺ぐらいの歳で冒険者になった人は?」
「そうだね……まあ、結構居るかな。例えば、カーリー先輩が教官をしているリオント武闘学園から冒険者の道に進む生徒達も多いんだ」
リオント戦術学園。
それは、戦う術を学ぶ施設。武器の扱いから魔法。ありとあらゆる戦う術を教え、卒業後は冒険者や傭兵、はたまた街を守る警備隊。
魔物蔓延るこの世界で生きていくためには、戦う術が必要だろうと創設されたのだ。
ちなみに、そこで学園長をしている人は母さんの知り合い。
シャルル・フォースク。獣人の中でも、数が少ない仙狐の獣人らしく、母さんとは小さい頃から仲が良かったとか。とはいえ、俺は一度も会ったことがないんだよな。いや、会っているかもしれない。
彼女は、武器の扱いだけでなく術の扱いにも長けている。自分の姿を変える術を使って街に出ているとか。
「じゃあ、別におかしくはないってことか」
「むしろ大歓迎さ。それじゃあ、さっそく受付に行こうか」
話を終え、俺達は一階へと向かった。
「ギルドマスター。どうかなさいましたか?」
さすがに、ギルドマスターが直々に来ると注目を集める。
「実は、彼が登録することになってね」
と、マルクスさんは俺のことを紹介する。
「マジか!」
「ヤミノやっとか!」
「歓迎するぜ! ようこそ冒険者の世界へ!!」
昔から俺のことを知っている冒険者達は、歓声を上げる。
しかし、そこへ追撃とばかりにマルクスさんは、とあるものを取り出した。
「それだけじゃない。彼は、ギルドマスター公認の冒険者となる。これからの戦いで彼は、要となるからね」
「公認ですか!?」
「というかこれからの戦いって」
「決まってるでしょ。例の鋼鉄の獣よ!」
「そういえば、闇の炎が有効なんだよな」
マルクスさんが取り出したのは、印鑑。
それはギルドマスターのみが所持を許されるもの。それを押された者は、はれて公認冒険者となるのだ。
「まあ、理由はともかくとして!」
「さっそく一緒に依頼に行こうぜ!」
「こらこら。まだ登録が済んでいないんだ。気が早いよ」
その後、俺はギルド内に居る冒険者達やギルドマスターが見ている中で登録。
登録の際に、色々と説明を受けることになるのだが、俺はもう知っているから省かれた。
そして最後に。
「これで……今日から君は、リオント支部ギルドマスターマルクスが認めた冒険者の一人だ」
カードに押印し、手続きの全てが終わる。
今日から、俺は冒険者。
結局母さんと同じ道を歩むことになったな。これも運命ってことかな。
「あんたならあたしを超えられる冒険者にきっとなれるわ。頑張りなさい」
「うん。やるからには、本気でやるよ」