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第二十一話 ギルドマスターとの話し合い

 冒険者ギルド。

 それは、とある一人の冒険者によって作られた。

 その名をロッツ。

 世界を冒険し、その名を広めた男。全ての冒険者の憧れであり、王と称される男。

 それが冒険王ロッツだ。


 ロッツは、世界中を冒険し得た知識と技術を役立てようとギルドを創設した。

 戦えない一般人や困っている人達のために、自ら危険地へ飛び込み魔物を倒し、素材を集める。冒険者達は、依頼をこなし金を、信頼を得る。

 創設した当時は、まだ小規模だったが、今となっては世界中に冒険者ギルドがあり、屈強な冒険者達が生まれている。


「お? カーリーじゃねぇか! よく来たな! たまには一緒に飲まねぇか!」

「また今度ね」

「カーリーさん! また俺の槍捌きを見てくださいよ!」

「ええ、わかったわ」


 ギルド内は、多くの冒険者で溢れている。

 出入り口を入ると、正面に見えるのは受付が二つ。まず中央は、受注と登録。そこで冒険者登録や依頼の受注などをする。

 そして、向かって左にあるのは報告と鑑定。受けた依頼を終え報告。もし素材採取系の依頼だった場合は、鑑定も行う。素材の品質によっては報酬が上がることもあるのだ。


 他にも食事を提供するところに、情報を交換するところ。

 ここからじゃ見えないが、大きな扉の先には冒険者達が技術を磨き上げるための訓練所がある。

 ちなみに俺達がこれから向かう先は、ギルドの二階にある。

 受付の周りにある階段を上ってすぐの扉がギルドマスターの部屋だ。


「今日は、どうしたんだよ。家族連れで」

「ちょっとギルドマスターに大事な話をしに来たのよ」

「ギルドマスターに?」

「アメリアちゃんのことじゃない? ほら、今その話で持ち切りだし」

「そういえばそうだな。ん? 噂の闇の炎の化身ってのが見えないが」

「あたし、一度見たけど。お人形さんみたいですっごく可愛かったのよ?」

「まさか俺達が生まれるよりずっと前からある。あの謎の炎があんな可愛い小人だったなんてな」

「ばーか。あれは仮の姿だって話だぞ。本物はもっと美人さんなんだと」


 二階へ上がる間も、ずっとヴィオレット達の話が耳に届く。

 肝心のヴィオレットは、まだ俺の中に居るけど。

 

「ヴィオレット。そろそろ出てきてくれ。到着したぞ」


 扉の前で、俺はヴィオレットを呼ぶ。

 すると、小さな紫の炎が出現し形を成す。


「っと」

「本当、ヴィオレットは恥ずかしがり屋ね」


 出てきてくれたのは良いけど、顔を隠すように俺に抱き着いてくる。


「とりあえずこのまま」

「話はわたしが代わりにするから。安心してママ!」


 うん、本当にしっかりした娘だ。アメリア。


「来たわよ! マルクス!!」


 ノックにしては、かなり豪快な音を鳴らす母さん。

 扉が壊れるんじゃないかと思うほどに。


「入ってください」


 中から若い男の声が聞こえる。

 母さんは、すぐ扉を開け中へ入っていった。


「お久しぶりです、カーリー先輩。おかわりないようで」

「馬鹿ね。それをあんたが言う? マルクス」


 中に居たのは、金髪の美男子。

 彼の名は、マルクス。母さんの話によると、人間とエルフの間に生まれたハーフらしい。耳は尖っておらず、見た目は二十代の人間。

 しかし、すでに百歳を超えているらしい。年上なのに後輩なのは、冒険者としての関係なのだ。


「はは。すみません。やあ、ヤミノくん。大きくなったね。今、十八歳だったかな?」

「はい。マルクスさん。お久しぶりです」


 何度か会ったことはあるのだが、本当に見た目が変わっていない。

 

「さあ、お座りください。今、飲み物を用意しますので」

「そんなに気を使わなくてもいいわ」

「マルクスさん」

「おや? もしかして君が、噂のアメリアちゃんかな?」


 飲み物を用意しようとするマルクスさんに、アメリアは一人近づいていく。

 そして、目の前で収納空間を使い、中から菓子が入った箱を取り出して見せる。


「どうぞ。甘いものが好きだって聞いていたので」

「……ありがとう。なるほど。今のが空間操作の力。それに紫の炎」


 箱を受け取りながら、マルクスさんは目の前で起こったことを整理し始める。


「じゃあ、今ヤミノくんに抱き着いているお人形さんが」

「ええ。この街でずっと崇められていた闇の炎の化身。ヴィオレットよ」

「……」


 さすがに、失礼だと思ったようで、ヴィオレットは正面を向き小さく頭を下げる。

 テーブルを挟んで、大きなソファーにアメリア、俺、母さんと並び。その正面のソファーにマルクスさん一人が腰掛けた。


「改めて。僕は、冒険者ギルドリオント支部のギルドマスターマルクスだ。カーリー先輩には、駆けだしの時に」

「待った」

「え?」

「あんたいちいち話が長いのよ。だから、そういうのはまた今度。今日は、こっちの要件に集中して」

「おっと、すみません。では」


 母さんに止められ、マルクスさんはこほんっと咳払い。


「ヤミノくん。事前に話の概要は聞いている。闇の炎は、今世界を騒がせている鋼鉄の獣に有効だそうだね」

「はい」

「そして、君はその闇の炎を扱える」

「はい」

「さらに、リオント周辺の森で鋼鉄の獣と遭遇。それを撃破した」

「証人はあたしよ」

「……冒険者ギルドでも、鋼鉄の獣については話があがっている。まだ目撃数は少ないにしろ。聖剣や魔剣の類でしか倒せないとなれば、対処が難しくなる。出現してから連絡。そこから撃退に向かう間に全滅する確率が高い」


 この前のように、空を飛ぶ形態も厄介だ。


「ですが、それをどうにかできるかもしれません。俺達の力で」

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