第八話 龍の刃
お久しぶりです。
まず生きているという報告とリハビリを兼ねて短めですが、続きを投稿します。
遅くなり大変申し訳ありませんでした。
へインと名乗った仮面の男。
イリンの兄ということもあり、角が生えているかと思ったけど……見た目は、俺と変わらない。けど、今まで感じたことがないオーラを纏っている。
「安心しろ。殺しはしない」
「いや、そう言ってさっき殺そうとしていたじゃないか」
会話をしつつも、俺は警戒を解かない。
相手は、まるで空間転移したかのように姿を忽然と消す。その術が、ただの身体能力なのか本当に空間転移なのか最中ではないため、余計に高まる。
「それはそうだ。”殺すつもり”で攻撃をしたからな」
つまり、俺が死ななければ結果的には殺してはいないってこと、なのか?
「我に力を」
へインが抜き放った二振りの剣にオーラが纏う。
「【龍龍炎刃】」
来る! そう思い刃に赤炎を纏わせ、空いている左腕に黄炎を纏わせる。
しかし、へインは姿を消すことはなく、ただただゆったりと前進する。
俺を挑発している? それとも、正面からぶつかってやるという意思の表れ?
「うまく防ぐことだ」
俺との距離が剣一本分ぐらいへとなった。
何かがあると深追いしてしまった俺は、その場から一歩も動かなかった。そこへ、へインはオーラを纏った剣を振るう。
ここは回避すべきだ。
明らかに、この攻撃には何かがある。
それを、頭で理解はしていた。
だが、俺の体は防御を選択していた。
真っ向から赤炎を纏った剣で、へインの攻撃を防いだんだ。
「なっ!? 炎が……!?」
剣と剣がぶつかった瞬間、赤炎がまるでなかったかのように消えてしまった。
そして、そのままただの剣となった武器は容易に砕かれてしまう。
「……」
俺は距離を取り、砕かれてしまった剣を見詰める。
これは、そう簡単に砕かれる代物じゃない。
これまでの戦いでだってそうだった。
それに……。
「どうした? 貴様の炎とは、その程度のものなのか?」
へインは、俺に剣の切っ先を突きつけ言う。
「だとしたら」
ゆらり、と動き、また姿を消す。
「―――とんだ期待はずれだ」
「それは」
ガキィン!!
「こっちの台詞だ」
「二本目か」
また首を狙ってきた。
下手に体を斬るよりは、首を撥ねた方が良いと言う考えなのだるう。だが、同じ場所を狙うなんて、いくらなんでも俺を馬鹿にしている。
「お前のその力」
「……」
「まさか、黒の炎―――ネネシアのものか?」
「どうだろうな」
そう答えるへインだが、俺は確かに感じた。
フレッカ達を見ると、俺と同じように感じたのか、こくりと頷いた。
(ネネシアのことについては、まだ全て思い出したわけじゃない。けど)
白と黒は、他の炎達とは逸脱した存在だ。
そして、これまでの出来事からこういうものだという予想はできる。
「そんなに気になるのなら、俺に本気を出させてみろ」
「……そこまで言うなら」
高まる熱。
燃え盛る炎。
赤、青、黄、緑、紫。その全てを、白で纏め上げる。
「この力は」
イリンの声が聞こえたと思いきや。
「そこまでだ」
第三者の声が響く。
「へインよ。これ以上は、私が許さん。刃を納めよ」
そこに居たのは、へインやイリンと同じく角の生えた黒髪の男。
がっちりとした体躯に、歴戦の武人たる眼光。一目で、強者だと理解できるオーラ。背には、黒き龍を象った紋章が刻まれいる。
「だが、父上」
「二度は言わん」
その男の言葉に、へインは渋々従い、刃を納めた。
それを確認すると、男は俺に近づいてくる。
「申し訳ありません、我らが救世主。愚息に代わり、謝罪を」
深々と頭を下げてきた。
「救世主?」
「はい。あなた様は、我らが長年待ち望んだお方。……黒龍様が、お待ちです」
黒龍……それが、この国の頂点。
「改めて。私の名は、リューマ。へインとイリンの父です」
「ヤミノです」
龍の国へ入って、かなり最悪な展開になるかもと思ったが、なんとか回避できた。その後は、リューマさんの案内で、何事ともなく街へと移動する。