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第五話「悪天の壁」

 龍の国へと向かっている途中で、龍の巫女を名乗る少女イリンと翼竜の襲撃に遭った。

 そして、これから俺達には試練が待ち受けていると告げられた。

 そのため、海上を移動している間も警戒を高めてはいたんだけど……。


「到着しました。ここが龍の国へ向かう前。悪天の壁です」


 特に試練と呼べるようなことは起きず、龍の国近辺に到着した。

 まるで、そこだけが別世界だと思わせる黒い雲。

 騎士の言葉通り、まるで壁だ。


「ふむ。あの雲の壁の中に龍の国があるのじゃな?」

「はい。我々も以前調査のために、中へ入ったのですが……龍の国へ到着した頃には船は大破。乗員のほとんどは疲弊し、もはや喋ることもまともにできない状態でした」


 今回乗員した中で、唯一目の前にある壁の中へと入ったことのある騎士が、その時のことを思い出しながら語る。

 兜で顔は見えないが、できれば思い出したくないと言わんばかりに顔を歪めているのが想像できる。


「ふーん」


 何を考えているのか。リア―シェンが前に出る。

 刹那。


 ゴォ!!


 青炎の斬撃が、悪天の壁へ飛んでいく。

 しかし、まるで吸い込まれているかのように炎の斬撃は消え、静寂に包まれる。


「あらら」

「なにをしているんですか、あなたは」

「ほへー、リア―シェンの炎を飲み込んじゃったねー」

「あまり威力はなかったとはいえ、厄介な雲ね」


 やれやれとため息を漏らしながらリア―シェンは下がる。

 普通じゃないことを理解していたけど、まさかリア―シェンの炎が効かないなんて。これが、龍の力なのか?


「そ、それで、このまま進むの?」


 これからの行動についてヴィオレットが問いかけると、騎士はいえ、と一言呟いてから説明を始める。


「前回の失敗から我々も学びました。まずは、魔導船を結界で覆ってから突入します」

「航路はどうするのですか?」

「ここに、前回の航路が記されたものがありますが……」

「悪天の影響で、役に立つかわからない、かしら?」

「はい」


 とはいえ、単純な話だけど、中央にある龍の国を目指せばいい。

 目の前にあるのは、あくまで国を囲う壁。

 いくら悪天で航路が乱れるとはいえ、広大な海を進むわけじゃない。


「……って、やっぱ単純過ぎるか」

「目の前にあるのは、龍とやらの力で作られた壁。ただ真っすぐ進めば良いと言う話ではないじゃろうな」

「フレッカ。ちょっと単騎で突っ込んでみない?」


 リア―シェンが、本気なのか冗談なのかよくわからない感じで言うと。


「ふむ。それもいいかもしれんのう」

「どこまで単純馬鹿なんですか?」

「おー、やれやれー」

「だ、だめ。いくら、フレッカでも」


 うーん、突っ込む、か。


「よし」

「ヤミノ殿?」


 なんだか、俺も思考が色々と変わってしまっているみたいだ。

 首を傾げる騎士を前に、俺はとある提案を嫁達に言う。


「―――はっはっはっは!! ヤミノ!! お前も、中々面白いことを考えるのう!! じゃが、ますます気に入った!!」

「主の提案ですので、自分は従いますが……フレッカに毒されていませんか?」

「毒されるとは失礼じゃぞ!! 夫婦同士似たと言え!!」

「まあ、普通の人ならできないかもだけど、僕らならできるかもねぇ」


 エメーラの言う通り。普通の人なら無理だろうけど、俺達なら。

 

「ふふ。そういう単純な作戦嫌いじゃないわ。それじゃ、さっそくやりましょうか。試練っていうのも、気になっているから、早めに国へ到着したいもの」


 リア―シェンは、かなりやる気のようですぐに始められるようにと炎を高めている。


「そ、それじゃ……私は、結界を強化、するね」

「頼んだよ、ヴィオレット」

「うんっ」


 さあ、作戦開始だ。

 俺が考えた作戦は、単純にして明快。炎の力を集結させ、魔導船を強化。

 そして、そのまま龍の国へと真っすぐ進む。


「よーし! やるぞ、リア―シェン!! リムエス!!」

「言われなくとも」

「主が考えた作戦です。ガチのガチでいきます」


 やる気十分なリムエスは、魔導船の正面に何枚もの黄炎の盾を展開。

 次に、リア―シェンが青炎の刃を盾へ重ねる。

 

「ほいじゃ、後方支援の僕は皆様に癒しをー」


 エメーラは待機。まあ、応援かな。

 

「そして最後にわしが!!」


 魔導船の後方へと移動したフレッカは、赤炎にてブースターを構成。

 これで準備が整った。

 

「うーん。形は少し私好みではないけれど、まあまあと言ったところかしら」

「そう、か? 俺は、かっこいいと思うけど」

「あら? あんたって、こういうのが好みなの?」


 俺だって、男だ。

 こういう尖った感じのものに惹かれるという感情ぐらいはある。


「あー、どっかで見たことあると思ったら、このまえ読んだ漫画にこういう船出てたなー」


 そういえば最近、漫画読めてないな……。


「んん! 気を取り直して。フレッカ!」

「任せろー!!!」


 俺の合図と共にフレッカが構成したブースターが起動。

 出力を上げるために、俺も炎を燃やす。


「ほいほい、とりあえず固定」


 いよいよ、といったところでエメーラが緑炎で、俺達の体を固定してくれる。


「いざ、龍の国へ!!」

「突撃じゃー!!!」

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