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第三話 向かう船の上で

お、お待たせして申し訳ありませんでした!

ぎ、ギリギリ半年ぶりにならずに更新できました……。

 用意された魔導船に乗り、俺達は海を渡っている。

 向かうのは、当然龍の国。

 グラーチア大陸から東へ向かい、何事もなければ数時間ほどで到着するだろう。


「こうして、海上を進むのも二回目か」

「そういえば、そうだったねー」


 照り付ける太陽の日差しを浴びながら甲板でヴィオレットの膝を枕に寝転がりながら俺の言葉にエメーラは反応する。

 

「魔導船、ですか。人間の技術はかなり高いようですね」


 と、リムエスは主砲を見詰めながら呟いた。


「まあ、私達からしたら取るに足らない力だけれどね」

「この主砲……どれほどの威力なのか、気になるのう」

「あなた達は……フレッカ。勝手に発射してはなりませんよ?」

「ふははは! さすがのわしでも、やらぬわ!」


 魔導船は、大型の魔物ですら蹂躙できるように設計されている。

 特に、フレッカも気にしている主砲は、海に住まう大型の魔物として有名なクラーケンに風穴を空けたとして有名だ。

 副砲も、主砲と比べれば威力は劣るようだけど、よほどの強敵出ない限りは容易に倒せる。

 

 魔導船の登場により帝国は、世界中に力を知らしめた。

 いや、力だけじゃない。

 技術もだ。

 とはいえ、帝国は世界を支配しようとは思っていない。


「……」

「ん? どったの、ヴィオレット」


 船に乗ってからというものなにか心配ごとがあるようで、ヴィオレットはずっと無言のままだった。


「よく、わからないけど」


 自分の胸に手を当てる。


「心が、ざわざわ、するの」

「ほほう? ヴィオレットよ。お前もついに危機察知能力を身につけたようじゃな」

「そ、そうなの、かな?」

 

 ヴィオレット自身も、よくわかっていない様子だ。


「危機察知能力、ですか。まあ、これから向かうところには龍が居るようですからね。今の世では、世界最強の生物と言われているようです。こちらも油断せず、ガチで挑むべきでしょう」

「いやいや。別に戦うって決まったわけじゃないっしょ。リムエスさんや。もしかして、フレッカ病にでもかかりましたかい?」


 冗談か、本気か。エメーラの言葉にフレッカ達は反応する。


「わしを病扱いするではないわ!! 失礼じゃぞ!!」

「それはこちらの台詞です! ガチで! マジで! 否定します!! 決して!! そんな病気になってかかっていません!!」

「ぷっ! フレッカ病って。あははは!! なにそれ!! 絶対かかりたくないわね、そんな病気!! あははははは!!」


 よくわからないツボに入ったようで、聞いたことがないような荒げた声でリア―シェンが笑う。


「お、お前ぇ!! そこまで笑うことなかろう!! さすがのわしも傷つくぞ!?」


 ふとエメーラを見ると、やってやったぜと言わんばかりの顔をしていた。

 やっぱり狙って言ったのか……。


「まあまあ。フレッカ。抑えて抑えて」

「ヤミノよ! お前は、リア―シェンの味方をするつもりか!?」


 明るい声が広大な世界に響き渡る。

 そんな時だ。

 

「み、皆。あれっ」


 何かが近づいてくる気配を感じとる。

 ヴィオレットが指差す方向。確認すると……そこには、翼を広げ大空を舞う生物達が居た。


「なんじゃ、あやつらは」

「あら? 知らないの? あれは翼竜っていう低級の魔物よ」


 誤解されないように説明するが、翼竜は決して低級の魔物ではない。龍が生物の頂点と言われている中で、その近縁種とも言える翼竜は、鋼鉄よりも硬いと言われている鱗に守られている。

 そしてなによりも、空中を飛び交うことにより、自分に有利な戦いをすることができる。

 

「あれー? でもさ。確か翼竜って、あんなに大きかったっけ?」


 エメーラの言う通り、翼竜はそこまで大きくない。

 大きいものでも、成人男性より少し大きいぐらいだ。だが、今目の前に居る翼竜達は、どう見てもそれ以上。

 何倍、何十倍にも大きくなっているようだ。

 そんな存在が、六体も。


「お、おかしいですね。この辺りには翼竜はいないはずなのに」


 と、同伴している帝国騎士の一人が動揺の声を上げる。

 

「龍の国へ向かうわしらを阻む戦士達、と言ったところかのう」


 フレッカは拳を構え。


「その可能性が高いですね」


 リムエスは盾を構える。リア―シェンも、いつでも戦えるように青い炎を手に宿していた。


「帝国騎士の皆さんは、船の中へ」

「し、しかし」


 俺も剣を構えながら、帝国騎士達に指示を出す。


「目の前に居るのが全てではない可能性があります。ですから、いつでも攻撃ができるように準備を」

「……承知致しました」


 こくりと頷き帝国騎士達は船の中へと姿を消す。


「後方支援はまかせろー」

「などと言いつつ、全然やる気がないではないですか」


 いつも通りのエメーラに呆れつつリムエスは、黄炎の小盾を魔導船の周囲へと展開する。


「さあ、あっちも攻撃してくるようよ」


 まるで、こちらの準備が終わるのを待っていたかのように、翼竜達は口を開く。

 刹那。

 高温の炎が吐き出される。


「わしらに対して炎の攻撃とはのう!!」

「いい度胸じゃない!」


 まず前に出たのは、フレッカとリア―シェン。

 フレッカは、炎の拳で。リア―シェンは炎の刃で、翼竜の炎を押し返し撃退。


「一体、左、から」


 元々翼竜は、素早い動きを売りにしている。

 まさか、あの大きさで、素早さは健在だとは。だが、ヴィオレットがいち早くそれに気づき、紫炎の矢で頭部を焼き貫く。


「俺も!!」


 少し遅れたが、俺も黄炎の小盾を足場に、四体目の翼竜へと攻撃。

 さすがに回避をされたが、逃がすわけにはいかない。

 赤炎を足の下から一気に噴出させ、高速移動。

 そのままの勢いで逃げた翼竜を両断。


「っと」


 そして、紫炎の空間に飛び込み甲板に戻ってくる。


「ふむ。わしらの力を順調の使いこなしているようじゃな」

「うん。前よりスムーズに扱えるようになったかな」


 前までは、ひとつの力を使うのにも苦労していたが、これまでの戦いによる経験が俺を成長させた。

 今では、息をするように各々の炎と能力を使えるようになってきている。


「でもまあ、私の力を使わない辺り。まだまだね」


 そう言いながら、五体目の翼竜を両断し、俺の目の前に着地するリア―シェン。


「いや、それは」

「なんて、冗談よ」

「冗談に聞こえなんだけど……」

『さすがは世界を救いし希望の炎。翼竜達では、相手にもなりませんでしたね』

「誰だ!!」


 突然響き渡る少女の声。

 視線を空へと向けると、一体だけ残った翼竜の背に……角が生えた黒髪の少女が半透明の状態で立っていた。

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