第二話 龍の国へ
ちょっと短め。
「結構早かったな、ここに戻ってくるの」
俺は、現在グラーチア大陸にある港町プルナンへと訪れていた。
ネネシアを求めて龍の国へと向かうためだ。
ネネシアが消えたタイミングで、皇帝陛下が龍の国へと向かえとわざわざ言ってきた。これはなにか関係あると考えたこその行動だ。
「来たようだな」
「え!? こ、皇帝陛下!?」
用意された船のところへ向かったところ、漆黒の鎧に身を纏った皇帝ゼーベ・ロム・ヴィルガルドが待っていた。
その横には、本来帝国騎士団の誰か居るはずだが……誰も居ない。リックもコトロッツさんも。
「うむ! また会ったの! 黒き皇帝よ!!」
「赤の炎か。息災であるようだな」
「当然じゃ」
俺が驚いているとフレッカが元の姿で体内から出てくる。
「この者が帝国を治める皇……お初にお目にかかる。自分は主の盾リムエスだ」
続いてリムエスが堂々とした佇まいで挨拶をする。
「我が名は、ゼーベ・ロム・ヴィルガルド。そなたのことは聞いている。主の盾として、しかと役目を全うするといい」
「言われずとも」
「他の化身達も?」
「はい。俺の中に」
今回は、娘達を全員残してきた。
龍の国へと向かうのは、闇の炎の化身全員。正直、これは賭けだ。
「我が帝国の騎士達も、そなたの炎を受け取り修練に励んでいる。これから訪れるであろう戦いへ向けて」
「それにしても納得がいかぬ。騎士団長がわしの炎ではなく、青を選ぶなど」
「あなたは、帝国騎士団とそこまで関りがないではないですか」
あの戦いが終わった後。
帰る前に、リア―シェンがリックに青炎を授けた。というか押し付けたと言った方がいいかもしれない。少なくともフレッカよりは絆は……あった、のかな?
戦いが終わった後、強さを求めてリックが何度かリア―シェンと戦ってはいたけど……。
「青の炎よ。聞こえているのだろう? 次戦う時は、本気で戦おう。リックからの伝言だ」
(考えておくわ)
「考えておく、だそうです」
「であるか」
リア―シェンはただ単純に暇つぶしをしていただけだった。それゆえに、いつもこれぐらいでいいか、と言った具合に力を抑えていたようだ。
自分はリックのように戦闘狂ではない。勝ち負けにが拘らない。とのこと。
「皇帝を伝言係にするとは」
「ついでだ。さて、ここへ来たということは」
「……はい。龍の国へ行きます」
「ならば、帝国が誇る魔道船を使うが良い」
魔道船か。
「ふむ。魔道船に備わっている兵器で結界を壊すということかのう?」
「フレッカ……」
「冗談じゃ。そんな残念な奴を見るような目で見るでない、リムエス」
などと会話をしていると。
「陛下! 魔道船の出向準備が完了しました!!」
帝国騎士の一人が、報告にやってくる。
「ご苦労である。さあ、ヤミノよ。龍の国へ行くのだ。……そこに全ての答えがある」
「それは、どういう」
「行けばわかる」
そう言いゼーベ皇帝は去って行く。
「手紙もそうじゃったが、何かを知っているようじゃな」
「なぜかは、龍の国へ行けばわかるはずです。さあ、主。魔道船へ乗りましょう」
「……わかった」
ゼーベ皇帝が言い残した言葉が頭から離れない。
だけど、それは龍の国へ行けば明らかになる。そう信じて、俺達は魔道船へと乗った。
・・・・
龍の国。
そこは、生物界の頂点と言われる龍が存在し、その強大な力で結界を張り国を護っている。穢れ無きその国にあるとある神殿。
その奥に、一人の少女が佇んでいた。
まるで夜空を思わせる美しい黒い長髪。頭には、曲がりくねった二本の角が生えている。
「……ついに」
少女が見上げる天井には、炎の大樹が描かれていた。
「でも」
視線を天井から外し、今度は正面を見る。
「簡単には通せない」
視界に映るのは硬く閉ざされた巨大な扉。
少女は、ぐっと胸の前で右拳を握り締め踵を返す。
「ここまで辿り着いて。必ず……」
その瞳に宿るのは、決意の炎。
少女は、その時が来ることを信じて部屋から姿を消した。