プロローグ
明けましておめでとうございます!! 新年一発目の更新です!!
「そこでじゃ! わしが、ぎゃーぎゃー騒ぐ巨大天使をぶん殴ったのじゃ!!」
「すっごい! かっこよかったー!!」
「そうじゃろ! そうじゃろ!! さすが我が娘じゃ!! わかっておるのう!!!」
「へえ。天使まで出てくるなんて……というか、その後トーリはどうしたの? ヤミノ」
グラーチア大陸での一騒動を終えてから一週間が経った。
この一週間……不気味なぐらい平穏だった。
これまでは、毎日ではないにしろイア・アーゴントの情報を耳にすることはなかったというのに。やはり、リア―シェンが魔剣狩りから聞いた情報から考えて……。
「ちょっとヤミノ? 聞いてるの?」
「え? あ、ああ。ごめん、母さん。ちょっと考え事をしてたよ」
まったく……と、眉を潜める母さん。
「どうせ、ここ一週間全然イア・アーゴントの情報がないことを気にしてたんでしょ?」
どうやらお見通しのようだ。
「確かに気になるわよね。こっちはこっちで戦力の増強とかできて良いんだけど。それで? さっきの質問の答えは?」
「えっと、なんだっけ?」
「パパ達が倒したトーリっていう人の詳細だよ」
考え事をしていて母さんの言ったことを聞いていなかった俺に、アメリアがひょこっと出てきて教えてくれる。
俺は、ありがとうと言いつつ質問に答える。
「死んではいないよ。あの後、トーリは一度帝都に連行されたんだ。それから、ファルク王と連絡を取って空間転移で王都に移送したんだ」
「でも、信じられないわ……トーリが、トーマを殺したなんて」
この中で、俺よりトーマさんやトーリのことを知っている母さんは、真実を知り頭を悩ませていた。
正直、このことを話すどうか迷ったが……。
「確かに、トーリがマリアに好意を持っていることは知っていたけど。魔物を使ってまで……」
「それで? このことをマリアとやらに話すのか?」
先ほどまで自慢話でテンションが上がっていたフレッカだったが、腕組をしながら冷静に問いかけてくる。そう、母さんにはなんとか話せたが、問題はマリアさんとミュレットだ。
マリアさんにとってトーリは、結構しつこい感じだが、それでも夫の弟でありいつも気にかけてくれる人だ。そして、ミュレットにとってはおじさん。めちゃくちゃ、とはいかないがそれなりに仲がよかったと記憶している。
もし、この真実を知れば……。
「今は、話さない」
「今は、ということは」
「うん。とりあえず今は保留ってことで。世界がこんな状況だから」
ミュレットは聖女として忙しいし、マリアさんは色々切羽詰まっている感じだからな。少なくとも話すのは、世界が平和になってから。
「私は、正直反対です! だって、世界が平和になったとしてもそんなことを話したらマリアさんだけ悲しんでしまいます!!」
と、手を挙げながら話すこと反対するララーナ。
「わ、私も……その」
続いてミニサイズのヴィオレットがアメリアの腕の中でララーナに賛同する。
「まあ、その辺りの話はまた後じゃ。ヤミノ、ヴィオレット。少し話がある。ついてくるのじゃ」
「……わかった」
「う、うん」
「あら? 娘達はどうするのかしら?」
「ごめん、母さん。ちょっとの間よろしく頼んだ」
「はーい」
この場に居る娘達、アメリア、ララーナ、ルビアのことを母さんに任せて、俺とフレッカ、ヴィオレットは一度部屋から出て行く。
ちなみに、エルミーはミウの工房のところで手伝いをしている。
そして、フェリエだが。
「待たせた」
「あら? もう良いのかしら?」
別の部屋に行くと、そこではリア―シェンが優雅に茶を嗜んでいた。横にフェリエを控えさせて。
「大事な、話があるっていうから」
元の姿に戻りながらヴィオレットが答える。
「ええ、そうね。フェリエ。もう良いわ。後は自由にしていなさい」
「は、はい! そ、それでは失礼致します!」
「お前……自分の娘をメイドにするとは」
呆れながらフレッカが言う。
「この娘が望んだことよ。私は、それを尊重したの」
「そ、そうなんです。私も、リア―シェン母さんのように、その……大人の女性になりたくて!」
「大人の女性ねぇ」
と言いながら、ずっと俺の中で休んでいたエメーラが元の大きさのままソファーへ寝そべる。
「あら? 何か?」
くすっと笑みを浮かべるリア―シェンに、エメーラはべっつにー、と視線を逸らす。
「む? 自分が最後ですか。申し訳ありません、主」
ファリエと入れ違うように外で鍛錬していたリムエスが入ってくる。
「大丈夫だよ、リムエス。さて」
改めて見ると、凄い光景だ。
ひとつの部屋に闇の炎の化身がこれだけ揃うなんて。前だったら、ありえない光景だろうな。
「うむ。では、さっそく本題に入ろう」
「ええ」
重い空気が部屋を覆う。それだけ、これから話す内容が重要ということだ。
「お前達も感じたと思うが」
珍しく口籠るフレッカ。
が、すぐに決心をし口を開く。
「黒の気配が……消えた」
そう。この場に唯一いない闇の炎の化身。
黒の炎であるネネシアについてだ。
最後に、また会おうと約束し別れた後のこと。突如として、ずっと感じていたネネシアの気配が……消えたのだ。
つまり、その意味は……。