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第三十五話 空中戦

「はあっ!」


 エルミーが展開した黄炎の小盾を足場に跳躍したファリエは、剣を振るってくる二体天使の頭上を取る。そのまま青炎のナイフを四本同時に投擲した。

 光の翼を切り裂かれ、機動力を奪われた天使達は、そのまま地上へと落下していく。


「ルビア姉さん。このように相手の機動力を奪うことで戦いを有利に」

「がおおお!!!」


 黄炎の小盾の上に着地し、まだまだ戦い方が乱暴なルビアに、有利になる方法をファリエは教えようとするも聞く耳を持たず。

 いつものように赤炎を纏った拳で殴り、地上へと叩き落した。

 

「る、ルビア姉さん。それでは」

「大丈夫! 手加減したから!! たぶん死んでない!!」


 手加減をしたようには見えなかったファリエは、地上に叩きつけられた天使を確認する。確かに死んではいないようだが、相当なダメージを受けておりぴくぴくと動いている。


「ね?」

「確かに」


 改めて天使という存在は色々と普通の生物とはかけ離れていると実感した。手加減、したとはいえルビアの攻撃を受けたうえにかなりの高度から地面に叩きつけられたのにも関わらず生きている。

 

「それに、ただ翼を切っても動けちゃったら意味がないと思うよ」

「―――ルビアちゃんの言う通りよ、ファリエ」

「リア―シェン母さん! 戻られていたのですね」


 ルビアに言われ、自分もまだまだだと実感したところへリア―シェンが地上から合流した。

 

「機動力を奪うというのは悪くないわ。だけど、更に動けなくするために力を使わないと」


 そう言って青炎を左手に灯す。


「あれ? フレッカは?」

「あいつなら、ヤミノと黒い変態さんと一緒に聖剣を破壊しに行ったわ」


 地上に目をやると今まさに聖剣を破壊しようとしていた。ヤミノは赤炎と紫炎を織り交ぜた剣で、フレッカの赤炎の拳で、ネネシアは雷撃で。

 聖剣を取り囲むように同時攻撃を加える三人だったが……聖剣から光が溢れ出し、ヤミノ達の攻撃を弾いた。


「あっ!? 防がれたよ!!」

「あら? 本当にしぶとい剣ね」


 地上に視線を向けていると、天使達はチャンスとばかりに背後から切りかかってくる。


「邪魔よ」


 がしかし、リア―シェンに隙などない。

 振り向くと同時に二体の天使を両断する。


「あっちは三人に任せて、私達はこっちを片付けるわよ」

「おー!!」

「承知しました」


 地上にいるエルミーも、リア―シェンの声が聞こえているかのように黄炎の小盾を動かす。

 

『愚か者共がァ!! 聖神様から賜りし聖剣を破壊しようなどと!!』

「あんた、さっきからそればっかりね。そんなに聖神様が大事なのかしら?」

『フハハハハ!!! 聖神様は絶対! 偉大!! この世の全てなのだァ!!!』


 今まで指示ばかりで前に出なかった天使化信徒だったが、ついに自ら前に出た。周囲の天使よりも一回りも大きな体で剣を振るう。


「いっくぞー!!」


 それを真正面から迎え撃とうと炎を高めながら右腕を構えるルビア。


「だめよ、ルビアちゃん」

「わあっ!?」


 しかし、リア―シェンが首根っこを掴みファリエと共に回避する。


「リア―シェン! なんで邪魔するの!?」

「真正面からぶつかれば良いってものじゃないわ。あの剣……聖剣、ほどじゃないけれど特殊な力が宿った剣よ」

「そのようですね。なにやら嫌な感じがします」


 トーリが持っていた聖剣レーヴァルほどではないが、リア―シェン達の炎にも対抗できるほどの力を纏っている。

 もしあのままルビアが真正面からぶつかっていたとしたら……無傷では済まなかっただろう。

 

「じゃあ、どうすればいいの?」

「簡単よ。力を……削げばいいのよ。ファリエ。周囲の天使達は頼んだわよ」

「承知しました」


 そう言うとファリエは、一人その場から離れ青炎のナイフを天使達に投擲し戦闘に入った。


「ルビアちゃんは、私が合図したら、あのうるさい天使にきつい一発を食らわせるのよ」

「わ、わかった!」


 素直にリア―シェンの言葉に頷いたルビアは、その場で力を高め始める。

 

『馬鹿め! その小娘の攻撃など無意味! それは先ほど実証したァ!! そして、貴様の攻撃もだァ!!』

「―――それは、どうかしらね?」


 とんっと跳ねたリア―シェンは、目にも止まらない剣速で天使化信徒の剣へと刃を振るう。


『なにっ!? け、剣が……』


 明らかに剣が小さくなっている。

 いったいなにが起こったのだと天使化信徒は驚きを隠せないでいた。


「驚いている暇があるのかしら?」


 頭上に展開されていた黄炎の小盾を力強く蹴り、リア―シェンは再び刃を振るう。


『ぐおおっ!? な、なんなのだ!? これはァ!? 力がァ……!!』

「そら! そら!! そらぁ!!!」


 黄炎の小盾だけではなく、自らも青炎で足場を作り、次々に飛び跳ねながら天使化信徒を切り裂く。

 青き炎の刃が空中を乱れ舞う中、なんとか反撃をせんとする天使化信徒だったが、徐々に力が削がれていき体が思うように動かない。

 

「奥義―――【乱れ青炎】」


 天使化信徒は、もはや周囲の天使と比べてもさほど変わらない大きさとなった。

 

『なめるなァ!!』


 力が弱まり、体が小さくなってもなお天使化信徒は剣を振るった。だが、リア―シェンは容易に回避する。一振り、二振り……最後の横薙ぎを跳躍する。


「今よ! ルビアちゃん!!」

「いっけー!!!」


 迫るは赤炎の獅子。


「【ルビア・インパクト】!!!」

『聖神様ァ!!!』


 ずっと高めていた赤炎の拳が、天使化信徒を飲み込む。炎に包まれ落下していった。


「あっ!? 思いっきりやっちゃった!?」

「大丈夫じゃないかしら? 力を削いだとはいえ、他の天使とは格が違うようだし。きっと無事よ。ああいうのは、かなりしぶといのよ」


 そのまま地上へ叩きつけられる―――かのように思ったその時だった。

 地上から光の柱が天へと昇り、火だるまとなった天使化信徒を飲み込んだ。


「この感じは」


 肌に突き刺さるような寒気。

 記憶にない、はずなのにリア―シェンには、この光が何なのかわかる。


「この戦いもいよいよ終盤ってところかしら」

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