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第十五話 迫る脅威

「あーあ、今頃は王城では盛大なパーティーをやってるんだよなぁ」

「ああ、勇者様達の旅立ちを祝っての三日間続く祭の最終日。もっともっと賑わうだろう」

「そんな時に、俺達は国境の警備……ま、どっちにしろ参加できないんだがな。俺みたいな一般兵じゃ」

「だったらぐだぐだ言うな。国境の警備は名誉な仕事なんだぞ?」


 国境では、今まで以上に警備が厳重となっている。

 ただでさえ最近、世界の脅威とされた鋼鉄の獣の出現により緊迫感が増している。そこへ、王都で盛大な祭が開かれる。

 それにより多くの者達が、集まる。

 王族から貴族、各地で名を馳せた商人達。その中には、素性を隠して国へ潜入しようとする者達も居る。


「そうは言うが、俺だってもっと祭を楽しみてぇよ」

「馬鹿者が。お前も国を守る兵士の一人なら」

「まあまあ、そう言いなさんなって」


 兵士達が言い争っていると、背後からどかっと巨体が圧し掛かってくる。


「ロブさん。ですが」


 身の丈以上の大剣を背負い、全身を赤い鎧で覆う巨漢。

 王都に仕える兵士達を束ねる長が一人ロブ。

 いつも赤い鎧を身に纏い、その巨漢から振るわれる大剣で、何をも薙ぎ倒すことから赤き巨兵と言われている。

 彼の下で訓練された兵士達は、どんな脅威にも屈せず挑む戦士となる。


「ロブさんだって、祭大好きですよね?」

「まあな。皆で大騒ぎして飲む酒は最高だ! だがよ、誰かを護るって言うのも俺ぁ好きなんだ」

「ロブさん……」


 兵士達は思う。

 いつ見ても、大きくて頼りになる背中だと。多くの兵士達は、彼のその漢らしさに惚れ、どんな厳しい訓練にも堪えてきた。

 

「まあ、俺は三日三晩ずっとここで警備をしてなくちゃならねぇがな」

「でしたら、警備は私達に任せて」


 真面目な兵士が何かを言おうとするが、ロブはそれを止める。


「馬鹿野郎。確かに、国のために働くのは良い。だが、楽しい時を楽しまないってのは良くねぇ。俺のことは気にするな。俺は、年長者として。兵士長として。国を護るために自ら国境警備に名乗り出たんだ。これは、俺の意思。長としての務めだ!」

「ロブさん……!」

「さすがロブさんだ……俺達、一生ついて行きます!!」

「はっはっは!! おうよ。俺が生きている限り。お前らを立派な兵士に育ててやるよ!」


 他の兵士達も、ロブの漢らしさに咆哮する。

 士気を高めたことで、先ほどまでの少し沈んだ空気もなくなった。

 ロブは、これでよしと頷き、夜空に浮かぶ月を見上げる。


「ん? なんだ……?」

「どうかしましたか? ロブさん」


 兵士達は、夜空を見上げたロブの反応に首を傾げる。

 

「鳥? にしてはでかい……」

「鳥? ……本当ですね。一体だけじゃない。軽く十はいますね」


 兵士達も釣られて夜空を見上げる。

 そこで見たのは、遠目からでもわかるほど大きな鳥の群れ。徐々に、徐々にだが……近づいている。


「まさかあいつは!?」


 すぐに危機を察知し、背中の大剣に手をかける。


「まさか空からとはな!!」



・・・・



「むにゅう……」

「ママは、相当そのクッション気に入ったんだね。買ってからずっとそれで寝てる」

「まあ気持ちはわかるよ。この絶妙な柔らかさ。癖になりそうだからな」


 楽しい時間はあっという間に過ぎる。

 王都にやってきて、もう三日が経った。

 俺達は、とある宿屋の一室に泊っている。一番安いところを選んだけど、さすがは王都と言ったところか。

 そんなもの感じないほど広く綺麗な部屋だ。


「さて、そろそろ時間だな。ミュレットから送られてきた服に着替えないと」


 祭の最終日の夜。

 王城では、招待を受けた者達しか参加できない特別なパーティーが行われる。それに、俺達も参加できることとなっていた。

 

 パーティーには、正装で参加することが決まっているため、ミュレットから正装が送られてきた。

 もちろんアメリアにもだ。

 どうやら勇者将太が、本当に気を利かせて王城に言ってくれたようだ。


「ママは、これね!」

「わ、私はいいよ」


 ヴィオレットは、他の者達には人形ということで通っている。

 だが、アメリアはヴィオレットもちゃんと綺麗にしないと! ということで、人形用だが買っておいたのだ。

 紫色のドレス。が、ヴィオレット本人は、恥ずかしがってぐにゅぐにゅクッションに顔を埋めて拒否する。


「えー? パパも見たいよね。ママのドレス姿」

「ん? ああ、見たいな」

「え? ほ、本当?」


 俺の言葉に、クッションから顔を覗かせる。


「本当だ」


 できるなら、元の姿のドレス姿も見たいけど。今はまだ無理だろう。


「……じゃ、じゃあ着る」

「わあ! さすがパパ。それじゃ、髪の毛も整えないとね。ママ」


 本当に嬉しそうに櫛とドレスを持ってヴィオレットの身支度をするアメリア。

 その間に、着替え終わった俺は、窓から夜空を見上げる。


「今日は満月か」


 勇者の旅立ち前夜と考えれば、良い夜ってところか。

 

「準備できたよ、パパ」

「お? そうか。うん、二人とも綺麗だ」

「えへへ」


 しばらくして、二人の身支度は済んだ。アメリアは純白のドレスを身に纏っており、少し大人っぽく感じる。


「よし、じゃあ王城に行くか」

「うん!」

三日間引っ張ろうと思ったのですが、思いきってこうしました。

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