第二十四話 ネネシア、血を吐く
な、なんとか7月に更新できました……!
8月はもっと更新できるように頑張ります!
……あつぅ。
ゼーベ皇帝陛下と謁見した後、俺達は新たな協力者を得るために『闇の炎様好き好き教』の教祖であるネネシアへ会いに行くことになった。
メーチェルの案内で、彼女達の総本山へと向かうことになったのだが。
「まさかここに総本山への入口があったなんて」
「あはは。意外でしたか?」
俺達は訪れたのは、リア―シェンを追っていた時に訪れたパーディアの滝の裏に入口のひとつがあった。
奥に進むと一見なにもない岩の壁に辿り着くのだが、メーチェルがペンダントを取り出し。
「闇の炎様と共に」
と詠唱したと思えば壁から魔法陣が出現し、壁が動いた。
どうやら隠し通路となっていたようだ。
グラーチア大陸には、こうしたところがいくつもあるらしく、ここはその内のひとつらしい。
「ささ、これにお乗りください。大丈夫です。見た目はあれでも結構安全ですから」
しばらく進むと、軽く五人は乗れるであろうトロッコを発見。
どうやらトロッコに乗って一気に総本山へと移動するようだが……。
「しょうがないわね。私は小さくなるわ。ほら、ヤミノ。ちゃんと吹き飛ばされないようにしっかり抱き締めなさい」
「え? ちょっ」
俺が返事をするよりも早くリア―シェンはミニサイズになる。
慌ててキャッチし、安堵の息を漏らす。
「あのな……」
「さあ、後は詰めながらトロッコに乗りなさい」
「はーい」
「なんだか楽しそー!! 早く! 早く!!」
「うぅ……凄く速そう……」
一番前にルビアが乗り、次にエルミー、ファリエ、俺、メーチェルの順番に乗った。
「さあ、落ちないようにしっかり掴まっててくださいね」
レバーを片手で掴みながらメーチェルが注意を促す。
どうやらトロッコに取っ手があるようだ。それをしっかり両手で掴んで落ちないようにするみたいだ。
まあ、俺はリア―シェンを抱えるために片手で塞がっているから、必然的に片手でしか掴めなんだけど。
「行きますよー! せーの!!」
レバーを引くとトロッコが動き出す。
まずはゆっくり、ゆっくりと前に進んでいく。
「わくわく! わくわく!!」
「ルビア様ー! そろそろスピードが上がるので、どうかお気を付けくださいー!」
「大丈夫だよ! ちゃんとトロッコの端っこを掴んでるから!」
取り付けられている取っ手ではなく、トロッコの渕を掴んでいるようだ。
「さあ、ここからは下り坂です! スピードが一気に上がりますよ!!」
ついに速度が上がる。俺達は、その瞬間のためにぐっと身構える。
そして。
「わあああああっ!!! はやーい!!!」
「ひゃああっ!? は、速いですー!?」
「やぁん! 髪の毛が乱れちゃうー!!」
ぐんっと重力がかかったと思いきや、トロッコが激走。
髪の毛が逆立つほどの速度で進んでいく。
「メーチェル! ここからどれくらいで到着するんだ!!」
「だいたい三分ってところです!!」
三分か。短いようで、長い感じだ。
「いけ! いけー!!」
ルビアは随分と楽しそうだな。対してファリエは、ずっとぷるぷると震えて取っ手より俺に抱き着いており、エルミーは笑顔だ。
右へ、左へ。はたまた急カーブ。
三分なんてあっという間だった。
「到着です。皆さん、大丈夫でしたか?」
停止する時はどうするのかと思っていたが、魔法陣を通ったら徐々にスピードが落ちて行った。
「楽しかったー! 帰りもこれに乗りたい!!」
「あたしも楽しかったけど、髪の毛が……むう」
楽しいと思っているルビアとエルミーだったが、一人だけ青い顔で何も答えない子が居た。
「大丈夫か? ファリエ」
「だだだだ大丈夫、ですぅ……」
「全然大丈夫じゃないわね。もう、だらしない」
ファリエが落ち着くのを待ってから、俺達は更に徒歩で移動する。が、さほど時間はかからなかった。
トロッコから離れてすぐに目的地が見えた。
「ようこそいらっしゃいました。ここが、我ら『闇の炎様好き好き教』の総本山です」
広い、広い空間に建設された巨大な教会。
今までの教会は白いものばかりだったが、今目の前に聳え立つ教会は黒い。そして、シンボルと言うべきか。
赤、青、黄、緑、紫。その闇の炎のステンドグラスとしてそれぞれの建物に作られていた。
「あれって」
「はい。それぞれの闇の炎様のステンドグラスです。『闇の炎様好き好き教』には派閥があります。ああしてわかりやすいようにしているんです」
「ちなみに私は、青の派閥のところに世話になってるわ」
この様子からして、かなりいい生活をしていたんだろうな。それにしても、地下にこれほどの広い空間があったなんて。
まさに圧巻だな。
……見た感じだと、結界のようなものを空間全体に張っているようだ。
「あっ、ちなみに仲が悪いわけじゃないんですよ? 皆、各々の闇の炎様の良さを語り合っているんです。最近は特に信仰心が高まっていて、このようなものも作られるように」
メーチェルが取り出したのは、リア―シェンの肖像画だった。
人の姿が知られたのは、最近だというのに。
そう考えると、炎の時の良さって……。
「っと、話はまた後にしましょう。ネネシア様がお待ちです。……その」
ついにネネシアに会うのか、と思っていると再びメーチェルは立ち止まる。
「おそらく、いえ。絶対驚くことが起きると思うので、お覚悟を」
「わ、わかった」
驚くこと……いったい何が待ち受けているっていうんだ。
俺は、エルミー達に目配りをし、メーチェルの後を追う。
そして、ネネシアが待っているであろう教会へと足を踏み入れると。
「お待たせしました。ヤミノ様。リア―シェン様。エルミー様。ルビア様。ファリエ様をお連れいしました」
漆黒の衣に身を包んだ一人の女性が待っていた。
まるで黒き聖女と言うべき佇まい。
こちらを見詰める瞳も、ベールの下にある髪の毛も、全て黒。ただ右手の爪の色は親指から赤、青、黄、緑、紫と染められており、なぜ片方だけ? と思ってしまったが、些細な事か。
彼女が……ネネシア。『闇の炎様好き好き教』の教祖か。
さすがというべきか。こうして対面しているだけで、只者じゃない雰囲気をひしひしと感じる。
「……」
「ネネシア様?」
何も喋らない。ただただ教会の中心に立ち尽くし、俺達を見詰めている。
さすがに寝ているということはないだろうけど。
「あの」
と、声をかけた刹那。
「ごふっ!?」
「えええええええええ!?」
急に血を吐いた。