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第六話 港町プルナンにて

「……なるほど。これは確かに凄いな」

「わー! 建物が雪で真っ白!!」

「真っ白だー!!」


 マリアさんのところから俺達はすぐグラーチア大陸へと渡った。本来なら、船を使っても十日ほどかかるのだが、空間転移を使えば一瞬だ。

 ちなみに不法入国ではない。

 ちゃんと許可は得ている。これもファルク王のおかげだ。俺がグラーチア大陸へ行くことを知ったら、すぐ大陸のトップへ連絡をしてくれた。

 お前なら、許可などいらないだろうとか言われたけど、それでいざこざが起こったら事なんだけど。


「ようこそ。ここが、グラーチア大陸一の港町プルナンです」


 俺達が訪れたのは港町プルナン。

 メーチェルの言うには、グラーチア大陸一と言われる港町らしい。来るのは初めてだが、ざっと見ただけでも納得がいく。

 船場には、大型船が四隻はあり、その内の二隻は魔道船だ。

 魔道船とは、簡単に言えば魔法を使う船だ。


 海にも魔物は居る。

 だから、大陸から大陸へ渡るために戦う術が必要となる。それを可能にしたのが魔道船。船を結界魔法で常時護り、四方に魔力を注ぎ込むことで魔法を放つことができる巨大な魔杖で攻撃をする。魔杖は、組み込まれた魔石に色によって属性が違う。 

 とはいえ、それだけ戦え抜けるわけではない。なので、何人かは護衛として乗ることになっている。


「大型の魔道船が二隻も……凄いな」

「そんなに凄いの? あれ」

「魔道船は、他の船と違って素材が特殊なんだ。それに、あれほど大きな船だ。普通と比べて金と時間もかかる。特に魔杖に使われている魔石はどこでも採れるわけじゃない。それに加工方法も」


 と、説明の途中でルビアのことを見ると。


「へー」


 なんだかあまり理解していないような反応をしていた。

 

「難しかった、か?」

「うん!!」

「あ、あはは……」


 やってしまった。こういう説明はある程度知識のある者向けだ。ルビアのような子供には、難し過ぎた。教育の仕方を勉強していたつもりが、ついやってしまう。

 まだまだだな、俺。


「詳しいんですね、魔道船のこと」

「何かの役に立つかもしれないからって、勉強もしていたから」


 とはいえ、専門家よりは薄い知識だ。突っ込まれれば絶対ぼろが出るだろう。


「ねー、ところでさー」

「ん? どうかしましたか、エルミー様」

「確か、帝国からえらーい人が来るって聞いてたけど。誰?」

「あー、そのことですか。確か、帝国騎士の団長さんだって話ですが。正直、私は会いたくないんですけど」


 帝国とは、グラーチア大陸にある首都だ。実は、ファルク王から一度挨拶だけはしておくようにと言われている。

 それで、今いるプルナンに帝国から代表として帝国騎士の団長が来ることになっている。

 

「なんで?」


 意味ありげな言葉にルビアが聞くと、メーチェルは苦笑いしながら答える。


「なんていうか、その団長って言うのがちょーっと。いや、すごーく厄介な相手でして」


 厄介? 確か、事前の情報だと。帝国騎士の団長は最近代わったそうだけど……。


「ふん! シスター風情が、我が帝国騎士の団長を愚弄するとは! まったくまったく……」


 帝国騎士の話をしていると、どこか気難しそうな男性騎士が現れる。漆黒の鎧を身に纏い、腰にはシンプルな長剣をぶら下げていた。

 メーチェルの言葉にぶつぶつと言いながら、自分の顎を撫でている。

 外見からおそらく四十代? いやもっと上か? 兜は被っているが、顔は見えておりギロリとメーチェルを睨んでいた。


 おそらく帝国騎士だろう。ということは、この男性が噂の団長……ではないな。確か、聞いた話だと若いって話だったし。

 ……ということは、男性の横で何やらニコニコと笑っている灰色の髪の毛を持つ少年がそうか。

 後ろに、もう一人ローブを纏っている人がいるけど、たぶん違うだろう。


「まあまあ、そう怒らない。別に僕は気にしていない」

「むう、ですが団長」

「それよりも、ちゃちゃっと挨拶をしちゃおうよ。ね?」

「あ、ああ。そうだな」


 にこっと笑顔を向けてくる少年は、外見から俺よりも年下に見える。まだ幼さが抜けない顔立ちに、長い灰色の髪の毛を一本に纏めており、右目は黒い眼帯で塞がっていた。

 唯一見える左目は青く、どこか……異様な雰囲気を感じる。とても綺麗な目だとは思うんだけど。


「僕の名前は、リック・クウズリー。最近帝国騎士の団長に任命されたんだ。ちなみに歳は十四歳だよ」

「じゅ、十四歳? 若いって聞いてたけど、本当に若いんだな」


 リックと名乗った少年は、隣に居る騎士とは違って特に鎧は身に纏っておらず、どこか冒険者のような服装だ。全体的に黒いというのは同じだけど。ただ、肩には帝国の紋章であろうものがついている。

 これは、隣に居る騎士の肩にもあるが、一本の抜き身の剣に翼。その背後に巨大な炎が燃え上がっているようなデザインだ。

 腰には、柄部分に獣のような赤い目がはめ込まれている漆黒の長剣がぶら下がっている。

 

(普通の剣、じゃないな)


 俺も大分人間離れしてきたのか。なんとなくだが、普通かそうじゃないかを感じ取れるようになってきていた。というか、見た目から普通じゃない。

 おそらく、魔剣の類だろう。


「おほん! では、次は私ですな。私の名はコトロッツ・デンベル! 誇り高き帝国の騎士にして、副団長である!!」

「ちなみに歳は、三十八歳だよ」

「独身である!!」

「あ、はい。そう、なんですか」


 ……すみません、コトロッツさん。もっと上かと思っていました。


「じゃあ、次は俺達が」

「あっ、大丈夫大丈夫。君達のことはもう知ってるから。それよりも、やることを済ませちゃおうよ」


 そう言ってリックが、手を上げ指示を出すと背後に控えていたローブの人が前に出てくる。


「彼は、鑑定士だ。さっ、ファルク王からの紹介状と身分を証明するものを出して」

「わかった」


 どうやら鑑定士だったようだ。鑑定士とは、その名の通り様々なものを鑑定する者の総称だ。膨大な知識に加え、回復魔法と同じく貴重とされている鑑定魔法を使うことで、本物か偽物かを看破する。

 鑑定士は、俺から受け取った紹介状と身分を証明するもの。俺の場合だとギルドカードを鑑定魔法でじっくりと調べる。


「いやぁ、めんどくさいよね。ファルク王からこっちに直接連絡があって、許可が下りてるのにさ」

「そうはいきません! もしや! ということもあります! 偽物にという可能性という!! 特に、今の世界状況を考えれば尚更!! です!!」


 コトロッツさんの言うことは理解できる。メーチェルのことはともかくとして。二人は、俺達のことをよく知らないはずだ。

 それなりに情報は共有できていると思うけど。


「……問題ありません」

「うん。というわけで、これが許可証だよ。普通のとは違うから、無くさないようにしてね」

「わかった」


 鑑定を終えた物と許可証を貰った俺は、さっそくリア―シェンのところへ行こうかと思ったのだが。


「それじゃあ、さっそくだけど」

「ん?」

「ヤミノ。僕と……戦ってくれないかな?」


 なぜか勝負を仕掛けられてしまった。

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