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第四話 青を求めて

久しぶりに夜更新なり。

「―――ほう。全滅か」

「はい。グラーチア大陸に存在する闇の炎の化身に全員やられました」


 色鮮やかなステンドグラスから差し込む光に照らされながら純白の衣服に身を纏った男は、報告を聞き小さく呟く。

 

「偽りとはいえ神として崇められる存在。そう簡単にはいかないか」

「如何なさいますか?」


 報告係の問いに男は少し考え、笑みを浮かべながら口を開ける。


「聖天部隊を向かわせろ」

「ついに、ですか」

「そうだ。部隊長は……あいつにするか」

「ジルディア様」

「ん? まだ何かあるのか」

「例の魔剣狩りですが」


 報告係の言葉に男―――ジルディアはぴくりと反応する。


「報告によれば、グラーチア大陸で発見されたと」

「……そうか。まあ、我々には関係のないこと。むしろこちらとしては大助かりだ。魔剣使いを殺してくれているのだからな」


 くくく、と笑いながら何もないところへ手を入れる。

 裂けた空間からジルディアが取り出したのは、身の丈ほどの純白の剣。


「その聖剣はっ」


 取り出した聖剣を見た報告係は驚きの声を上げる。


「相手は謎多き存在だ。だが、これだけは言える。闇の炎……我ら『聖神教』が討ち果たさねばならない存在。さあ、この聖剣レーヴァルをもって闇を切り裂け!! さすれば、聖神様もお喜びになられるだろう!!!」

 


・・・・



 少し遅めの朝食を終えた俺達は、さっそく次の行動に移ろうとしていた。ファルク王とセリーヌ様達は、各国へ更なる情報の共有をするために。

 ファリーさんは、もっと緑炎を扱えるようにするために。そして、戦力を増やすためにフォレントリアの森へと帰った。どうやら、緑炎は順調にエルフ達へ燃え広がっているようだ。


「ヤミノよ。さっそくグラーチア大陸へ向かうのであろう?」

「うん。なんだか、この手紙から伝わる意思が早く来いって言ってる感じがして」


 そう言って、俺はリア―シェンからの手紙を見せる。

 

「あ、でもグラーチア大陸に行く前に一度、リオントに帰ろうと思うんだ」

「ほう?」

「ミュレットのことをマリアさんに伝えようかなって」


 定期的に王都の方からミュレットのことは知らされているようだけど、俺の方から直接ミュレットと話し合ったことを伝えたい。

 マリアさんとは、あの時からなんだか距離感が変わってしまった気がするんだ。

 会話ができない、わけじゃないんだけど。


「なるほど。では、リオントへ行く前にヴィオレット以外の化身一人を選んでください」

「全員で行きたいところじゃが、侵略者共のことを考え人数を最小限に、じゃ」


 二人の考えは、俺も賛成だ。最初、ヴィオレットが自主的に基地に残ると言った時は本当に成長したなぁ、と妻だと言うのに娘の成長を喜ぶかのように感動した。

 

「あ、あのー」


 誰に同行してもらおうか、と考えていたところ。メーチェルが、言い難そうな雰囲気で話しかけてきた。


「なんじゃ?」

「そのこと、なんですが。えっと……今回は、化身の方々の同行はなし、ということにして頂けないでしょうか」

「何を言っているんですか。自分達と主は一心同体。いつ如何なる時でも共にあるべき。それを、苦渋の決断で、一人に限定していると言うのに……」

「いや、でも」


 メーチェルのこの反応……なんとなくわかった気がする。


「リア―シェンの奴じゃな」


 やっぱりフレッカも察したか。


「は、はい。今回、リア―シェン様がお会いしたいのはヤミノ様のみ。化身の方々は、来なくてもいい。むしろ来たら会わない、と」

「相変わらずですね、彼女は」

「そうでなくは、リア―シェンではない」


 なんだか会うのが楽しみなような、そうじゃないような。


「じゃあ! じゃあ!」

「わっ!? ル、ルビア様?」


 申し訳なさそうにしているメーチェルの前に突然ルビアがひょっこり現れる。


「ルビアがついて行く!!」

「え? いや、それは」

「だって、リア―シェン? がだめって言ってるのは、フレッカ達なんだよね? じゃあ、ルビアは大丈夫ってことだよね!? ね?」

 

 ……なるほど、そういうことか。確かに、メーチェルの言葉というかリア―シェンの言い分だと闇の炎の化身であるヴィオレット達はだめとしか言っていない。


「くくく。どうなんじゃ? リア―シェンの奴は、子供のことは何か言っておったか? メーチェルよ」

「それは、その……特になにも」

「じゃあ決まりー! ルビアがついて行くー!!」

「よく言ったルビア! 正直、リア―シェンの言葉など無視してやりたいところじゃが、ここはひとつ。我が子の成長のため我慢するとしよう!!」


 あはは、なんだか若干無理矢理に押し通した感があるな。


「そういうことなら、エルミーちゃんも行きたいでーす!!」

 

 おそらくルビアを追いかけて来たのであろうエルミーが、元気よく手を上げながら言う。それを見たリムエスは、静かに目を閉じる。


「あなたが同行するのであれば、自分も安心です」

「やぁんっ! お母様たったら……! そんなにも、あたしのことを信頼してくれているなんて」

「どう解釈したらそうなるんですか」

「信頼しているから、安心ってことじゃ?」

「全然違います。あなたは黄炎の子。自分の代わりに盾として主を護れるからです」

「えー!?」


 などと言いつつ本当はエルミーのことを本当に信頼しているはずだ。そうじゃなきゃ、こうもあっさり引き下がるわけがない。


「ヤミノよ! 今回は、子供の成長のためわしらは同行せん! お前は、父親としてしっかり見守ってやるのじゃぞ?」

「ああ、わかった」

「うぅ……だ、大丈夫かな? これ」


 これから向かうのは雪と氷の大陸。一応、雪の上での戦闘訓練はしてきたけど、どうなるか。

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