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第三十九話 白騎士ゼーノとの攻防

「さあ、まずは一発でかいのを、わしが!」


 いつもの調子で攻撃を仕掛けようと炎を燃え上がらせるフレッカだったが、目の前のゼーノに異変が起こる。


「くっ!?」


 突如として体全体が輝きだしたのだ。

 山ほどある巨体ということで、その光量は目を瞑ってしまうほど。なにかの攻撃か? とリムエスがいち早く身構えるも違った。


 光の包まれたゼーノは、徐々にその巨体が縮んでいき、ついには騎士型よりも少し大きいぐらいまでに変化してしまう。

 いったいなにが起こったのかわからないが、油断はできない。

 ずっと無反応だったゼーノが、何かしらの行動を起こした。ゼーノもイア・アーゴントの一種なのだろうが、今までのイア・アーゴントとは何もかもが違い過ぎる。


「ほう? 戦いやすく体を小さくしたということかの? まあよい。ならば、それだけの対処を」


 刹那。


「―――」


 兜に刻まれた赤き十字が輝き、空気が変わる。

 

「なっ!?」


 それは一瞬の出来事だった。縮んだとはいえ、まだだいぶ距離があったはずのゼーノが……まるで空間を飛び越えたかのように、俺達の目の前に姿を現した。


「【ブレイズ・インパクト】!!!」


 いち早く反応したのは、フレッカだった。

 赤炎で生成した巨腕を右腕に纏い、ゼーノへと攻撃を仕掛ける。


「なぬっ!?」


 高火力の一撃。

 おそらく騎士型を倒した技。力が衰えているとはいえ、フレッカ自身の能力により今現在の火力は何倍にも膨れ上がっているはず。

 だと言うのに、その一撃を……左腕一本でゼーノは受け止めて見せた。

 溶けることなく、破壊されることもなく。衝撃により後退することもなく、フレッカの一撃を受け止めたのだ。


「ぬおおおっ!?」


 拳を受け止められたフレッカは、そのまま投げ飛ばされてしまう。


「リムエス!」

「わかっています!!」


 決して油断はしていなかった。していなかったが……やはり、今までの敵とは格が違う。それを思い知らされた数秒だった。

 どうやら、フレッカは将太達が居る方へと吹き飛んでいったようだ。

 彼女なら大丈夫だと信じて、俺は攻撃を仕掛ける。


「はあっ!!」


 騎士型の盾ごと両断した炎剣を振り下ろすも、右手にある剣で容易に防がれる。

 

「――――」


 一切の隙を与えてくれない。俺の攻撃を防いだと同時に、何も持っていなかった左手にもう一本の剣をどこからともなく出現させ、斬りかかってくる。

 

「させません!!」


 絶妙なタイミングでリムエスが防ぎ。


「オマケです!! 【リムエス・カウンター】!!!」


 反射技で、ゼーノにそのままの衝撃を与える。


「まだまだ!!」


 バランスを崩したところへ二本目の炎魔武装ヤミノ―を赤紫色の炎の刃を纏わせ、横薙ぎに振る。が、しかし、俺の攻撃よりも早くゼーノは姿を消す。

 

「主!!」

「後ろ!?」

 

 間一髪のところでリムエスの小盾で防ぐことができたが、完全には塞ぐことができずに体が吹き飛ぶ。

 なんとか体勢を立て直し、再びゼーノと向き合う。


(まただ。まるで、空間を飛ぶかのように一瞬で……)


 二本の剣を手にしたゼーノは、またこちらの様子を伺うかのように、その場で静止する。


「主。やはり、体を小さくしたのには理由があるようです」

「……みたいだな」

「おそらく圧縮したのでしょう」

「圧縮?」


 フレッカの攻撃を容易に受け止めるほどの硬度。

 ……そうか。

 目の前に居るゼーノは、そのまま体が小さくなっただけにしか見えないけど。実際は、あの巨体を極限まで圧縮した姿なんだ。


「ええ。それはもうガチガチに。見た目は、小さいですが……見てください。重い一撃に、まだ手が痺れています」


 隣に並ぶリムエスのリーシェルを持つ右手が震えていた。見た目はシンプルな長剣だが、質量は大剣並み……いや、それ以上だろう。

 

「灰塵に帰せぇ!!!」

「――――」

「フレッカ!!」

「わ、私も居るよ」

「ヴィオレット。それに、将太達も」


 今までの敵とは格が違う。どう攻めるべきかと、思考していると吹き飛ばされたフレッカが、天から赤炎を纏いゼーノへ落下する。

 先ほどよりも火力は上がっているのは一目でわかる。彼女の背後には【オーバー・フレア】により発生した炎が二つ灯っていた。しかし、それでもゼーノは耐えている。

 

「本当に硬い奴じゃのぉ!!」


 フレッカも怯むことなく、赤炎を纏った拳をゼーノへ叩きつける。一発、一発が突き出される度に空気は揺れ、砂塵が舞うほどの威力。

 それをゼーノは、二本の剣で容易く弾いて見せている。


「お前達!! 何を臆しておる!! そんなことでは、世界など救えぬぞ!!!」


 戦いながらフレッカは、俺達に喝を入れる。


「さっさとこやつを倒して、可愛い娘達のところへ帰ろうではないか!!」

「……ああ!! ヴィオレット、リムエス。力を貸してくれ!!」


 ここからは、本気の本気だと。ヴィオレットとリムエスに叫ぶ。その意図を理解してくれた二人は、ミニサイズとなり、俺の体の中へと吸い込まれるように入っていく。

 

(感じる。力が……力が湧いてくる!!)


 俺と闇の炎の化身である彼女達は一心同体。こうして、ひとつになることで力は増す。


「いくぞ!!」


 周囲に紫炎の矢と黄炎の小盾を一気に複数生成する。


「加勢するぞ!! フレッカ!!」


 紫炎の矢を同時に六本放ちながら駆け出す。


「――――」


 しかし、それをフレッカの攻撃を受けながらもゼーノは切り落とす。


「言っておくが、巻き込まれても知らんぞ!!」

「問題ないさ!!」

「ならば!!」

「はあっ!!」


 俺は左から剣で。フレッカは右から拳で攻める。さすがにゼーノもやばいと思ったのか、障壁を展開する。


「くははははは! 押せ!! 押せぇ!!!」

「黄炎よ!!!」


 動きが止まった。俺は生成した黄炎の小盾を一枚に重ね、頭上へと落とす。


「――――」


 障壁は、俺達の攻撃に耐えることができなくなり、徐々にヒビが入っていく。


「もう一押しじゃ!! 燃えろぉ!!!」


 そして、ついに障壁は砕かれる。

 そのままの勢いで、俺とフレッカと重なった黄炎の小盾により、ずっと無傷だった鋼鉄の体が傷ついた。

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[一言] 将太ぇ・・・
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