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第三十七話 闘志を燃やせ

 戦いが始まって十数分が経った。

 確実に数が減っていっているが、白騎士ゼーノは未だに佇んでいる。ただ、イア・アーゴントを収納していた白い箱はもうないため、これ以上数が増えることはないだろう。

 となれば、イア・アーゴントを全て倒した時……ゼーノは動き出す可能性がある。


「主! 小さい方の騎士が動き出しました!」


 ゼーノと比べれば小さいが、俺達にとっては十分大きい騎士型のイア・アーゴント。

 最後の砦とばかりにゼーノと同じく動く様子はなかったが、ここにきて動き出したようだ。鞘から剣を抜き去り、こちらへ近づいてくる。


「……どうやら、フレッカも戦ってるみたいだな」


 一人だと言うのに、俺達よりも先に騎士型と戦っていたフレッカ。彼女の火力と能力ならば、当然と言えば当然だろう。

 ただ、それでも騎士型には少しばかり苦戦しているようだ。


「くはははははっ!! 良い! 良いぞ!! 多少はやるようじゃなぁ!!」

「まあ、心配はいらないか」


 苦戦、というよりも楽しんでいるようだ。

 

「フレッカなら問題はありません。……しかし、勇者の方は」

「……今は、目の前の敵に集中しよう」

「はい!」


 彼らは神に選ばれた存在。イア・アーゴントとも十分に戦えている。それに、ヴィオレットが支援してくれる。

 だから、今は目の前の敵を倒すことに集中しよう。


「防ぎます!!」


 騎士型が振り下ろした剣に翡翠色の光刃が纏う。

 おそらくあれは、俺達が使うような魔力の刃のようなものだろう。だが、リムエスの盾を突破することはできなかった。

 

「【リムエス・カウンター】!!」


 そして、攻撃を反射し相手をのけ反らせる。


「もらったっ!」


 バランスが崩れたところへ、俺が切りこむ。

 

「なっ!?」


 並みの相手だったら両断できていた刃。

 それを騎士型は、左手から盾を出現させ防いで見せた。


「……やっぱり、簡単には倒せないか」


 俺は、後方へ跳び距離を空ける。

 騎士型も、右手に剣を左手に盾を持ったまま構えていた。


「そういうことなら……!」


 今の火力じゃ足りない。ならばと、俺はフレッカの増大の能力で火力をさらに上げると共に、リムエスの硬化の能力で炎の刃の強度をも上げる。

 それだけじゃない。

 分散させていた二つの炎を一本に集中させる。生み出されたのは、赤紫色の刃。


「リムエス! もう一度だ!」

「はい!」


 今度は、こっちから攻撃を仕掛ける。

 

「はあっ!!」


 正面から切り込んでくる俺の攻撃を騎士型は盾で防ごうと前に突き出す。

 しかし、先ほどとは違いあっさりと左腕ごと両断される。


「――――」


 驚くという感情はないようで、騎士型は何事もなかったかのように、俺へ剣を振り下ろしてきた。


「無駄です!!」


 それをリムエスが防ぎ。


「終わりだ!!」


 その隙を狙って、俺がトドメの一撃を与えた。

 真っ二つに両断された騎士型は、他のイア・アーゴントと同様に光の粒子となって四散する。


「……これで、後は」

「ふむ。あそこでずっとわしらを見下しているでかい騎士だけじゃな」

「そちらも終わったようですね、フレッカ」

「当然じゃ。ちなみに、わしが先に倒した!! つまり一番乗りということじゃの!!」

「はいはい」


 増大の能力で、体が一回り成長していたフレッカが、俺の肩に手を回してくる。彼女が戦っていた場所へ視線を向けると、騎士型は上半身が抉れていた。

 まるで高温の熱で溶かされたかのような痕。

 考えるまでもなく、フレッカがやったのだろう。


「それなりに楽しめたが、まだまだ燃え足りぬ」

「それで良いんですよ。向こうには、まだ大物が残っているんですから。それより、主から離れなさい」

「ところでヤミノ。凄いではないか! わしとヴィオレットの炎を混ぜるとはなぁ!」

「聞きなさい!!」

「ま、まあまあ。喧嘩しないで……まだ敵が残ってるんだから」


 騎士型を倒したもののゼーノは健在。

 そして、数多のイア・アーゴントも残っている。戦いは、まだ終わっていない。


「じゃが、あの馬鹿でかい騎士。まったくの無反応じゃが?」

「……ええ。不気味なぐらいに動きません」


 戦っている最中もゼーノに対して警戒はしていた。また、オアシスへと向けて放った攻撃をしてくるかもしれないと。

 けど、指一本すら動いていない。まるで、戦う気が一切ないかのようだ。


「だったら、こっちから仕掛けるしかないな」

「お? わかっておるではないか! ヤミノよ!!」


 俺の言葉に左手に右拳を叩きつけるフレッカ。

 

「では、残りの小物を片付けつつ大物へ攻撃しましょう」


 そう言ってリムエスは兜を被る。

 

「お? 本気じゃな?」

「あなたも真面目に戦うことですね」

「何を言っておる。わしは、いつでも大真面目―――じゃ!!」


 にかっと笑みを浮かべ、フレッカは赤炎が渦巻く右腕を正面に鋭く突き出す。解き放たれた赤炎は、巨大な拳となってイア・アーゴントの大群を焼き貫いた。


「くはははは!! さあ、どんどん突き進むぞ!! わしに、続けぇ!!!」


 本来、戦い続ければ疲れていくものだが……フレッカは、その逆。戦えば続ければ、それだけ力が増していく。

 ……まあ、戦い終わった時の落差がかなりひどいけど。


「待ちなさい!! あーもう!!」

「ははっ。本当に元気だなぁ、フレッカは。よし、リムエス。俺達も続くぞ!!」


 いつまでも立ち止まってはいられない。

 俺は、フレッカの後に続き前へと走り出す。


「お、お待ちを! 主!!」


 さあ、戦いも大詰めだ。

 マギア―が、この場に居ないのが、かなりの不安要素だけど……。


「ほれ! ほれ!! ほれぇ!!! 仲間がどんどん減っていくぞ!! いつまで、ぼーっと突っ立っているんじゃ!!」


 敵の数は、フレッカの活躍もあり着実に減っていっている。追加で増やす様子もない……このままいけば、足元へ辿り着くだろう。

 将太達の方は、まだ騎士型と戦っているようだが。


「む?」

「……どうやら、ようやく動き出したみたいだな」


 イア・アーゴントも残りわずかといったところで、周囲に轟音が鳴り響く。地面は揺れ、砂は舞い、巨大な影が差す。

 白騎士ゼーノが、剣を抜いたのだ。

 それにしても大きい。遠目からでもわかってはいたが、こうして近くで見ると迫力が違う。


「……ふう」


 山ほどあろう巨体と対峙しようと言うのに、なぜか心が落ち着いている。


「ヤミノよ! 臆するでないぞ!!」

「どんな攻撃がこようと、自分の盾が主を護ります。ご安心を」


 そうだ。彼女達が居るからだ。彼女達が傍に居るから、自然と心が落ち着き、闘志が燃え上がる。


「ああ。やるぞ、二人とも!!」

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