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第二十四話 闇の炎一家と勇者一行

「あれは……オアシス?」

「わあ……本当に一瞬で到着しちゃったね」


 カルラの記憶を読み取り、現在拠点となっているオアシス手前に転移した。遠目からでも、その豊かさは明白。一面砂だらけのザベラ砂漠に緑が満ちている。そして、その奥には湖があり、周囲には、即席で建てたのであろう家々が並んでいる。

 日は、大分沈んでおり、時期に空は暗くなるだろう。


「ん? おい! 周辺が荒れているぞ!!」


 シンの言う通り、さっきまで戦闘でもあったかのように砂漠が抉れている。


「この抉れ具合……まさか、もう連中が攻めてきたのか?」

「み、皆……!」


 オアシスに居る仲間達が心配になったシェラは、思わず駆け出す。

 俺達も、後に続くようにオアシスへと向かった。


「あっ、シェラお姉ちゃん!」

「え?」

「お? 帰って来たか!」

「無事だったんだな! お前ら!!」


 しかし、すぐに家族を出迎えるかのように、ザベラの民達が姿を現した。目立った怪我もなく、まるで何事もなかったかのように、笑顔だった。


「お、お前達こそ無事だったのかよ!?」

「モルドフ達が攻めてきたんじゃ、ないのか?」


 困惑しながらも、カルラとシンが、ザベラの民達に問いかける。


「攻めてきたけど、あたし達が追い払ったのよ」

「誰だ?」

「あれ? この声って……」


 俺にとっては聞き覚えのある声だったが、カルラにとっては聞き覚えのない声。

 警戒する中、ザベラの民達をかき分け、一人の少女が姿を現した。


「お久しぶりね。今は、随分と有名人になっちゃったみたいだけど」

「ああ。久しぶり、だな。ティリン」


 とんがり帽子を深々と被った魔法使い風の少女―――ティリン。王都で出会った時と変わらず、堂々としている。

 勇者一行が、このザベラ砂漠に来ていることは知っていたが、こうも早く遭遇することになるとは。


「……あんた、全然汗かいてないわね」

「え? あ、ああ。どうやら、俺は暑さにも、寒さにも強い体みたいなんだ」

「ふーん。それも、闇の炎と一体化したおかげ、てこと?」

「た、たぶん」

「たぶんって……それでぇ? 後ろに居る子達が、噂の娘達なのかしら?」


 娘達に興味津々のようで、ぐいっと俺を退かして、近づいていく。

 

「アメリアちゃんは、お久しぶりね」

「うん。久しぶり。ティリンさん」

「さてさて。聞いていた通りなら、アメリアちゃんの後に二人増えた、らしいけど……もう二人増えたのかしら?」

「あ、あれ? もしかして、私も数に入っちゃってる、のかな?」


 リオは、察しが良いようで、苦笑いしながら少し横にずれた。

 

「あら? 小さい褐色の子は違ったのね」

「はい! リオは、フレッカさんのお友達なんです!!」

「元気な子ねぇ。……いや、待って。本当に子供、なの? 大きくない?」

 

 そう言って、ララーナを見ながらティリンは首を傾げる。


「確かに、ティリンと同年代に見えるけど、俺の娘で間違いないよ」

「あれ? ティリンさんは、私達のこと聞いていたんじゃないの?」


 アメリアの問いに、ティリンは人差し指で頬を掻く。


「あはは……娘が増えたってだけしか聞いてませんでしたー」

「まあ、アメリアお姉ちゃんのことを知ってるなら、自然に想像しちゃうかもねぇ」

「え? え? どういうことですか?」

「なになに? ルビア達、なにか悪いことでもしちゃったの?」


 動揺しているティリンを見て、エルミーは理解しているようだが、ララーナとルビアだけは理解できず首を傾げていた。


「つまりね? ティリンさんは、新しくできた娘達を、私みたいな小さな子だと思ってたってことだよ。二人とも」

「なるほど!」

「おー! ……あれ? ルビアは小さいけど?」

「そーねぇ。アメリアちゃんより、小さいかしら?」

「むふ!」


 どうやら、アメリアより、という部分で褒められたと思ったのか。ルビアは、ティリンに頭を撫でられながら自慢げに鼻を鳴らす。


「さすが、ルビアちゃんだね」


 アメリアも、ティリンの言葉がどういう意味なのか理解はしていると思う。だが、そこはあえて妹を姉として褒めているんだろう。

 ルビアもルビアで、まんざらでもなさそうに喜んでいるようだし。

 その後、軽く自己紹介を含めながら他愛のない会話をした俺達は、オアシスで何があったのかを聞いた。

 

「―――やはり、モルドフ達が攻めてきたのか」


 話を聞き、カルラは険しい表情になる。

 どうやら、俺達が来る前に、侵略者が渡した武器を持って、数人攻めてきたようなのだ。ついに、オアシスまで来たか! と戦士達は武器を手に立ち向かったが……まったく歯が立たなかった。

 カルラ達もいないということもあったようだが、見たことのない武器から繰り出される攻撃になす術もなくやられてしまった。


「あの時は、本当にやばかったが……そこに、勇者一行が現れたんだよ」


 戦士達にトドメを差さんと武器を構えた瞬間だった。

 そこに、勇者一行が現れて攻めてきた男達を撃退したらしい。男達には、逃げられてしまったようだが、もし勇者一行が現れなかったら、今頃こうしてゆっくりと会話をできていなかっただろう。


「それで、その勇者達は?」

「向こうにある一番でかい家で休んでもらってるよ」


 シンの問いかけに、男性が奥にある建物を指差す。

 確かに、遠目から見ても一番大きい家だ。


「あたしは、周辺の警戒をしつつ散歩をしていたのよ。で、そこへあんた達が来たから、話しかけてあげたわけ」

「あはは……話しかけてあげた、か」

「嬉しいでしょ?」


 この感じ、変わってないなぁ。


「まあ、立ち話もなんだし。行く?」


 そう言って、ティリンは仲間達が居る建物を見る。

 

「……ああ」

「うん。じゃあ、行こっか」


 どこか、俺のことを気にしている様子だったティリンは、返事を聞いて歩き出す。

 俺達は、彼女の後に続いて勇者一行が居る建物へと向かった。


「パパ、大丈夫?」


 歩き始めてすぐに、アメリアが右手をぎゅっと握ってきた。


「大丈夫。もう前に進むって決めてるから」


 俺のことを心配してくれた可愛い娘に、笑顔で言う。


「ふふん。ついにお父様を悲しませた勇者と会えるってわけね」

「話には聞いていますが。またお父さんを悲しませたら、容赦しません!!」

 

 アメリアと違い、どこか好戦的なエルミーとララーナだった。


「二人とも、乱暴はだめだよ?」

「はーい!」

「はい!」

「うん。良いお返事だね」


 そんな中、ルビアだけ状況が呑み込めていない様子で首を傾げていた。


「ねーねー。これから会いに行くのって、ヤミノの敵?」

「違うよ、ルビア」


 ぴょんっと左隣に来て、問いかけてきたルビアに、俺は頭を撫でながら宥める。


「でも、なんだか……ぞわっとする」

「ぞわっと?」


 ルビアは、なにかを感じている? 嘘を言っているようには見えない。ただルビアも、どこか曖昧な感じなのだろう。

 眉を潜めながら、唸っている。


「はーい。到着ー」


 距離は、それほど離れていなかったため割とすぐ到着した。

 ルビアが感じているなにかは気になるけど、それは後で考えよう。


「ミュレットー。すっごいお客様を連れてきたわよー」


 そう言って、ティリンはドアを開けた。

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