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第二十三話 落差が激しい件

 フレッカと俺の間に生まれた四人目の娘。

 生まれてすぐ地形を変えるほどの力を振るい、大暴れしたがフレッカのおかげで再び眠りについた。次に目を覚ました時、どうなるのかと心配していたが。

 あの大暴れようが嘘だったかのように、大人しくなった。

 

「がおおおっ!!!」


 尖った獣のような耳が生えたフードを被り、両手をわきわきとさせながら可愛らしく咆哮する。

 

「はは。どうしたんだ? ―――ルビア」


 何かを求めているのか。

 期待に満ちた顔で、俺のことをじっと見詰めている。

 少し、考え、なんとなく察した俺はそっと彼女の頭を撫でる。


「むふっ!」


 どうやら当たっていたようで、嬉しさのあまり声を漏らした。これで、尻尾があったらぶんぶん振っていそうだな。それほど嬉しそうにしている。


「アメリアー! ヤミノに頭撫でられたー!!」


 その嬉しさを姉であるアメリアにも報告しに行く。そんな彼女を、アメリアは自分のことのように喜んでいた。


「やったね、ルビアちゃん」

「やった!!」

「ルビアちゃぁん! エルミーお姉ちゃんもなでなでしてあげるぅ!!」

「わわ!? エルミー! 苦しいよぉ!!」

「はあ……! はあ……!!」


 ルビアの身長はアメリアより少し低く、他の妹達と比べれば一番妹らしい。まあ、彼女達の間では身長なんて関係ないんだが。

 もちろん、今となっては俺や妻達もまったく気にしていない。

 慣れと言うのは、本当に恐ろしいものだ。

 エルミーは、完全に暴走している。呼吸は荒く、高揚した表情で、自分の胸にルビアを押し付けている。


「あの暴れようが嘘のようだな」


 微笑ましい光景を見詰めていると、カルラが隣に来て話しかけてきた。


「元気が良いのは変わらないと思うけど」

「いや、あれは元気という言葉で表現するのは」

「止めておけ、カルラ。俺達の常識は通用しねぇよ」

「……そうだな」


 ん? なんだかカルラとシンが俺を見て変な顔をしているような……変なことを言った、のか?


「ところでよ。あっちも大分変わったみたいだが」


 そう言ってシンが指を差すのは……めちゃくちゃやる気がなさそうなフレッカだった。髪はほどけ、地面にだらーっと仰向けに寝て、いや倒れている。

 あんなにもハツラツとしていたフレッカの見る影もない。

 エメーラとはまた違った脱力感。なんていうか、やる気がないというか。燃え尽きているというか。


「おーい! フレッカちゃん! しっかりしてー!! ねえってば!!」

「……はあ、だるい」

「いけません! これは完全に燃え尽きています! 見てください、この目を!! 熱意がまったくありません!!」


 ララーナの言う通り、目に熱意がない。

 太陽のようなギラギラとした熱意があったのに……。友達であるリオの呼びかけも、まったく意味がないようだ。


「【オーバー・フレア】の後は、いつもこうなんです」


 仰向けに寝転がっているフレッカの周囲に、ヴィオレット、エメーラ、リムエスがミニサイズのまま集う。


「あれは、増大の能力を無理に使う技なんだよねぇ」

「炎を、使い果たして、一時的に燃え尽き状態になっちゃう、の」

「も、燃え尽き状態……」


 なるほど。確かに、炎である彼女達ならではの言い回しってところか。


「とりあえず、フレッカはヤミノの中へ放り込もう。その方が、回復も早いっしょ。ついでに戦いに向けて、さ」

「ですね。申し訳ありません、主。自分達は、フレッカと共に一度休息に入ります。盾として、いつでもお守りしたいのですが」

「アメリア達のこと、よろしく、ね?」


 と、三人でフレッカを持ち上げる。


「ああ。そっちもフレッカのこと頼んだぞ」

「お任せください。では、行きますよ二人とも」

「ほーい」

「また、ね」


 挨拶もほどほどに四人は、炎となって俺の中へと入っていく。どういうわけか。俺の中……精神世界に居れば彼女達闇の炎の回復が早くなるようだ。

 

「あれ? フレッカは? ねえ! ねえ!! フレッカはぁ!? ヤミノー!!」


 エルミーから解放されたルビアが、母親のフレッカがいないことに気づき足にしがみ付いて問いかけてくる。


「フレッカはな。ちょっと疲れちゃったみたいなんだ。だから、今は俺の中で休んでる」

「えー? 一緒に遊びたかったのにぃ!」


 ぶー! とつまらなさそうに頬を膨らませる。

 本当は、いっぱい遊んでもらっていたんだけどな。ルビアは、暴れていた時の記憶がないらしい。


「なら、代わりにララーナお姉ちゃんが遊んであげましょう!」

「ほんと!?」

「はい! さあ、かかってきてください!!」

「よーし!! いっくぞー!!」


 本当は、ララーナ自身も遊びたいのだろうなぁ。


「って! 待った待った!!」


 危うく父親として娘同士が遊ぶ光景を眺めるところだった。というか、二人とも炎を纏っていったいどんな遊びをしようとしていたんだ?


「ヤミノも遊んでくれるの!?」

「あ、ぐ……」


 期待に満ちた眼差し……! 父親として、応えなければならないが。今は、ぐっと堪えるんだ。


「ごめんな、ルビア。一緒に遊んでやりたいけど、今はダメなんだ」

「そうだよ、二人とも。ほら、見て? 太陽がもうすぐ見えなくなっちゃうでしょ?」


 俺をフォローするようにアメリアが、地平線に沈んでいく太陽を指差す。


「あ、本当ですね」

「だから、お外で遊ぶのは終わり」

「えー!? なんでー!?」


 暗くなっても関係ない、とばかりにルビアは叫ぶ。


「それは、私が説明してあげましょう。良いですか? ルビア。子供は、暗くなったらお家に帰らなくちゃならないんです」

「なんで?」

「それは」

「それは?」

「お父さんとお母さんに怒られてしまうからです!!!」


 うん。間違ってはいない。実際には、怒ったことはないんだけど。ララーナは、暗くなる前に帰宅しているし。俺は、怒るというより心配するかな? エメーラは……想像できないな。

 

「怒る?」

「そうです。私は、怒られたことはありませんが」

「……よくわかんない」


 本当にわかっていないようで、首を傾げている。


「今すぐじゃなくてもいいんだ。少しずつわかっていこう。な?」


 俺は、そんなルビアの頭を撫でながら笑みを浮かべる。


「うん、わかった!」

「よし。いい返事だ。じゃあ、そろそろ移動しようか」

「ああ。今の内、移動するのが一番かもな」


 砂漠は、昼と夜では気温の落差が激しいと聞いていたが……やっぱり、昼とあまり変わらない。これも、闇の炎と一体化したことによる効果、なんだろうな。

 ヴィオレット達が言うには、冬でも薄着で普通に過ごせるらしい。


「ついて来い。俺達が案内する」

「でも、今回は自力だから結構時間かかりそうだね」

「待った。それよりも、もっといい方法がある」


 このまま自分達の足で移動しようとしていたので、俺は止める。


「いったいどうするってんだ?」


 シンの問いかけに、俺は転移陣を地面に出現させる。


「空間を移動するんだ」

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