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第九話 親子の触れ合い

 第一歩を踏み出した。

 それは、本当に小さな一歩だったが、俺達はこれからだろう。

 その後、他愛のない話をし現実に戻った。

 いつもの朝。いつもの天井。いつもの娘の寝顔。


「……ん? なんか腹の辺りが膨らんでいるような」


 股間じゃない。確実に腹の辺りだ。

 動いている。なにやらもぞもぞと。


「あっ」

「……」


 毛布を捲ってみると……ヴィオレットに似た小人と視線があった。

 あの威圧感のあるヴィオレットとは違い、顔はもちっとしており、俺の服を握る両手はとても小さい。


「もしかして、ヴィオレット?」

「……うん」


 恥ずかしいのか視線を逸らしながらも、小さく頷く。

 これはいったい。


「わ、私の力の根源はあなたの中に入ってる、から。実体化するには、これぐらいじゃないと」


 やはり視線を逸らしたまま。

 そうか。ヴィオレットは、俺と一体化しているんだもんな。夢の中、いや精神世界か? そこでなら問題はないのだろうが、現実は違うということか。

 

「一応……大きくは、なれるけど」


 な、なれるのか。


「今のままだと、数分ぐらいしか、もたない」


 なるほど。まだ会話できるぐらいしか回復していないからな。でも、完全回復したら結構長く元の大きさになれるってことだよな。


「……」

「……うぅ」


 身を起こし、ミニヴィオレットを両手で抱える。

 本当に人形のようだ。

 あ、予想通りほっぺもちもちしてる。


「おぉ」

「むにゅぅ……」


 ……はっ!? しまった。あまりのもちもち感に夢中になってしまった。これ以上は、さすがに夫婦とはいえ失礼だよな。

 ヴィオレットも、我慢してくれているようだけど。


「ごめん。触り過ぎた」

「大丈夫。ふ、夫婦だから……でも、恥ずかしい……!」


 ベッドに下ろし、手放すと両手で顔を覆う。


「あっ、さっそく夫婦仲良くしてるんだね」

「アメリア。お、おはよう」

「うん、おはようパパ。ママもおはよう」

「お、おはよう」


 娘に変なところを見られてしまった。しかし、さっきのは夫婦としての触れ合い、なのだろうか? 完全に俺が一方的に触っていたと言うか。

 傍から見たら人形で遊んでいる青年にしか見えないんじゃないだろうか?

 

「ようやくだね。これで挨拶できるよ」

「あ、挨拶……」

「そういえばそうだな」


 これでようやく嫁を紹介できる。

 できるが……。


「き、緊張してきた……ど、どうしようアメリア」

「大丈夫だよ、ママ。二人ともとっても優しい人だから」


 そんなこんなで、ヴィオレットが緊張しているところ悪いが。


「―――父さん、母さん。紹介するよ。この人が、俺の嫁でアメリアの母ヴィオレットだ」


 朝食前に、家族へ紹介することにした。

 父さんも母さんも、ようやく挨拶ができるとどこか緊張しつつも嬉しそうにしていた。が、実際にヴィオレットに会うと。


「……ヤミノ。冗談、じゃないよな?」

「冗談じゃない」

「なるほど。アメリアちゃんの時点で色々と予想はしていたけど……こう来たか」

「これは、さすがにあたしも予想外だったわ」

「……」

 

 二人の反応は俺も理解できる。

 というか、彼女もいない息子がいきなり娘ができました! という時点で色々おかしいからな。アメリアのことは、結構すぐに受け入れてくれた二人でも、困惑するだろう。

 なにせ、紹介した嫁は、娘に抱きかかえられているのだから。

 

「ほ、本当はもっとこうすらっとしていて、美人なんだ。けど、なんていうか彼女の力の根源? は俺と一体化しているから。完全に回復もしていないから、その」


 俺がなんとか説明すると、二人は一度視線を合わせ同時に頷く。

 そして、再びヴィオレットを見てから口を開く。


「そうか。そんなに美人なのか。いや、今の時点でもそういう雰囲気は感じられるから。うん、お前の言う通り美人なんだろう」

「お、大きくなれるけど」


 ずっと沈黙を貫いていたヴィオレットは、さすがに今の姿は失礼だと思ったのか。本当の姿になろうとする。

 

「いいのよ。ヴィオレット。子供を産んだ後でしょ? 無茶をしちゃだめよ。どんな姿でも、こうして直接会えた。それだけで十分よ」

「……そ、そう」


 母さんの言葉に、ヴィオレットは安心するようにアメリアに再び寄りかかる。


「さて、それじゃ改めて。よろしくねヴィオレット。ヤミノの母カーリーよ」

「父のタッカルだ。息子のことよろしくな」

「よろ、しく」


 こうして嫁を家族に紹介することができた。

 

「あ、ちょっと待って。確か、ヴィオレットは、この街の近くにあった闇の炎の化身なのよね?」

「う、うん」

「で、闇の炎はまだ世界中にある。てことは?」

「その数だけ嫁が増えるってことか」

「いや、まだ増えるって決まったわけじゃ! それに嫁とは限らないし!」

「あ、全員女性だから心配いらないよパパ」


 いったいなにがどう心配いらないんだろうか。え? もしかして増やすこと決定なのか? 待て待て。急に嫁と娘ができたことをようやく受け入れたばっかりだっていうのに。

 けど、他の闇の炎の化身は、どんな感じの人なんだろうか。

 そもそも彼女達は……人なのか? ちらっとヴィオレットを見ながら、俺は他の闇の炎のことを考えるのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 闇ハーレム?! 期待してます!
[一言] ヤミノにはもう人間のお嫁さんは出来ないようですね!(それでも良いじゃないか、幸せなら!)
[良い点] もしかして、ハーレムルートですか!? なんにせよ、先の展開が楽しみです!
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