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96話 思惑

 ~辺境の地~


「ねえ、傲慢? あなた闘神祭の時に攻撃を仕掛けるんだっけ?」


「そうであるが」


「それで今その時を待っているわけよね?」


「……何が言いたい? 色欲」


 傲慢の魔王の子がいら立ちを隠さずに尋ねると、色欲の魔王の子は妖艶な笑みを浮かべる。


「私も手伝ってあげていいわよ」


「何を言うかと思えばそんな下らん事であるか。断る」


「でもあなたの計画ってちょっと杜撰すぎない? だって突っ込んで駆逐してはい終わり、でしょ? とても成功するとは思えないの」


「貴様如きがこの我を愚弄するか?」


「愚弄じゃなくて事実を述べているだけよ」


「ふん! せっかく聞いてやったというのに下らんことを言いおって。貴様が居たら足を引っ張られて失敗するであろうよ」


「あら? 私が足を引っ張る程度であなたは成功しないということかしら?」


 色欲の魔王の子が煽るように言った瞬間、傲慢の魔王の子の雰囲気ががらりと変わる。


「調子に乗るのも大概にしておけ。我が怒れば貴様など跡形もなくこの場から消せるのであるぞ?」


 傲慢の魔王の子からの怒りをまっすぐぶつけられていながら、当の本人はまるで何事も無かったかのように飄々としている。


「それでどうするの? あなたの力は私を入れても失敗する程度の力なの?」


 空気が歪む。その表現が正しいだろう。


 色欲の顔のすぐ横を傲慢の腕が通り過ぎ、その剛腕は空気をも揺るがしたのである。


「良いであろう。だが邪魔だと判断すれば貴様を殺す」


「最初からそう言えばいいのよ」


 傲慢の強烈な圧力に対し、色欲は飄々と返す。あたかもあなたの威圧なんて怖くありませんよと煽っているかのように見える。


「じゃあねえ♪」


「ふん! 気に食わん奴である」


 傲慢から同行の許可を得た色欲は部屋から出ていき、だだっ広い廊下を歩きながら直に起こるであろう未来を夢想する。


「私の可愛い子供たちがドンドン潰されているわけだし、王国、いえ、王国の影には対価をちゃ~んと払ってもらわないとねぇ」


 その瞳には言葉とは裏腹の愉悦の感情が灯っていた。



 ♢



「そういえば、子供たち、グレイスが面倒を見てくれるそうね」


「元々、グレイスも孤児の集まりですから何か思う所があったのでしょう」


 まあ、俺があの後クリスに頼んだんだがな。流石に王国中の孤児院を相手するわけにはいかないだろうから王子自身が助けるというのは難しいが、その存在を知られていないグレイスが面倒を見るというのなら大丈夫だろう。


「……ありがと」


 ライカが俺に向かって小さな声で感謝を告げる。


「うん、感謝する相手は俺じゃないな。クリスとグレイスの奴等にだ」


「もう言った」


「そうか、ならよかった」


「何のお話をされているのですか?」


 俺達が話し終わったときに丁度、ガウシアが丁度登校してきたようだ。小首をかしげて不思議そうに俺達に尋ねてくる。


「ガウシアは知らないよね。あのね、かくかくしかじかで……」


「えぇ!? そんなことがあったのですか!?」


 カリンが先日あった出来事を教えると、ガウシアは大きな声で驚く。


「それは大変でしたね」


 ちなみにあの依頼をこなした俺達はギルドにてライカ以外の全員がDランクに昇格していた。村長が孤児院の一件も含めて少し大げさに言ってくれたらしいことがギルド員からの話で分かった。


「おーい、みんなー、席につけー。今から大事なお話があるぞー」


 何だか久しぶりにギーヴァ先生を見た気がする。この数日間の思い出があまりにも濃かったからだろうか。


「前に言った通り、来週、闘神祭がある。闘神祭の日は全員で応援に行くことになるから休校日になる。今回は『黒の執行者』様がテーマなのもあって一番出没場所が多かったメルディン王国で開催するからな」


 うわ~、忘れてた。確かにそういうテーマだったな。


 ていうか勇者一族の失踪があったり魔神教団の活動が活発になったりしている中での闘神祭なんて開催しても大丈夫なのか? 後でクリスにでも聞いてみよう。


「それから、闘神祭に出場する奴等は放課後、学長室に来い。特にライカは絶対だ」


「わかった」


 まあ、生徒とはいえSランク冒険者だしな。勇者ほどではないとはいえ、何かしらの枷は無いとダメだろう。恐らく学園側は自分たちに有利なようにライカ出場をOKしたのだろうが、他の学校から苦情が来てこうなったというところだろうか。


 そうしてギーヴァ先生の連絡は終わり、通常通りの授業が始まった。

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