88話 子供たちの正体
あの後、俺たちはなんとか二人がキメラを倒す前に駆けつけ、キメラ達を洞窟前に運んだ。
二人もキメラの様子が普通とは違うことに気づいたようで、俺と同じくなるべく傷つけないように戦ったらしく、キメラ達に目立った怪我はない。
「では、リア様お願いします」
「うん、さっきと同じようにやるわね」
そういうとリア様の両手に光が集まっていき、キメラ達に降り注いでいく。
そんなに時間が経たないうちにキメラ達の体が光の粒子となっていく。それはまるで周りの邪悪な気を浄化しているようで……。
やがてキメラ達の変わり果てた姿を見て、俺は息を呑む。
やはり自分が殺そうとしていたのが、幼気な子供達であったのだということをまざまざと見せつけられた気がした。
「そんな……」
「……」
カリンやライカも言葉を失ってしまう。
「これは一刻も早く村長に報告しないといけないわね」
「そうですね。この子たちも全員息はしているとはいえ衰弱していますし」
リア様の言葉に一同が同意して、一人ずつ子供を抱えて村へと向かうのであった。
♢
「なんと! そのようなことが……」
村に帰り、子供を抱えている俺たちを怪訝そうに見ていた村長に事の顛末を伝えると、寝耳に水の話であったらしくそう驚いた。
「一回家に入れさせてもらっても良いでしょうか? 子供たちを早く横にさせてあげたいので」
「ああ、大丈夫だ。すまないね、気が利かなくて」
そう言うと、急いで家の中へと入り、子供たちを寝かせる部屋まで案内してくれる。
「一先ずはここに布団を広げて寝かせておくと良い」
村長の言われたとおりに行動して、子供たちを寝かせた後、あの客室へと向かう。
「いったい何がどうなっているんだ?」
「子供たちに見覚えは?」
「う~む、それがどの子も見たことが無いんだ。村の子ならばすぐに思い出せるのだが……」
「近くに村があったりしますか?」
「いや、どれだけ近い村でも歩いて1時間くらいかかる」
歩いて1時間くらいか……有り得なくもない微妙な距離だな。
だが、思い返すとキメラたちはこの村の近くの洞窟を拠点としていたのだ。わざわざ遠出までしてこんな所を住処にするとは思えない。
「孤児院」
皆が頭を悩ましている中でライカがポツリとそう呟く。
「孤児院? 確かに院長が子供の失踪を探ってほしいという依頼を出しているしな。私経由で出したから間違いはないが」
「しかし孤児院の子なら村長さんでも知ってそうですけど」
「いや、この村の孤児院とはいえかなり外れの方にあってあまり交流が無いんだ。もしかすると有り得るかもしれないな。一度子供たちを見せに行ってみよう……あっ、それと忘れないうちに君たちの依頼書に印を捺しておくよ」
そう言って村長は印が捺された依頼書をこちらに差し出す。
「既に依頼達成報酬はギルドに渡してあるからあっちで受け取っておいてくれ」
「はい。ありがとうございます」
「こちらこそだよ。まさか君たちがキメラを倒すなんて思っていなかったからね」
厳密に言えば倒してはいないんだがな。
「子供たちのことはこっちでやっておくから君たちは帰って良いよ」
村長がそう言うが、子供たちを見つけた?俺達は当然のごとくその先が気になるわけで、誰も椅子から立ち上がろうとしない。
誰も帰ろうとしない状況に村長が首をかしげているとリア様が話し出す。
「その孤児院に同行したいのですが……」
「同行かい? 勿論大丈夫だよ」
「ありがとうございます。どうしても子供たちのことが気になってしまって。みんなはどうする?」
「無論、私はリア様に付いていきます」
「私も付いていくよ。流石に気になるし」
「……」
ライカも目で行くことに同意する。ていうか普通に声出せよ。
「皆さんが来てくれるのは心強いな。もしかしたら孤児院までの道のりに子供たちをあんな姿にした元凶が潜んでいるやもしれないからな」
村長も俺達全員が孤児院に同行することに同意してくれる。
「じゃあ、今から行くとするか」
そうして村長を含めた5人で件の孤児院に向かうのであった。