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85話 依頼

「それでどんな依頼を受けたの?」


「これ」


 そう言ってライカが差し出した依頼書を見る。


 依頼人はコムギ村の村長で、依頼内容は周辺に突如発生した高ランク魔物の群れの討伐と書かれていた。


 ランクはAランク。基本的に冒険者は自分のランクの一つ上までしか依頼を受けられないのだが、上のランクがいればそこは問題ないのである。有望な冒険者が無理をしようものなら必死に止めに入るだろうが、そうでなければ基本的に自己責任なのだ。


「結局Sランクにはしなかったんだな」


「しなかったというより無かった」


 ライカは不満そうに言う。


「初依頼だからちょうど良いんじゃないかな」


「でもSランクの依頼を受けて一気にランクを上げたかったけどね」


 冒険者のランクシステムは実績によって評価される。当然高ランクの依頼を達成すればその分ランクが上がるのも早い。


 今はFランクだが、Sランクの依頼を達成しようものなら一気にAランク冒険者まで上がれるのではないだろうか?


 とはいえそのままだといわゆる“寄生”も可能となるのでDランクから上は昇級試験というのもあるのだが。


「そういえば何気にライカの武器は初めて見たわね。それがトールって呼ばれてる奴?」


「そう。私のお気に入りの武器」


 そう言うとライカは自身の体よりも大きな大槌を軽々と振り回す。


「これがあればあの時後れをとることはなかった」


 未だに魔神教団の枢機卿であるレイジーに太刀打ちできなかったことを悔やんでいるらしい。無表情ながらも言葉から察することができる。


 まあ実際に武器を持つか持たないかでかなり変わってくるからな。俺のように武器を持たない能力者もいるが、基本的には戦闘時の武器というものがある。ライカで言えばトール。そして、カリンで言えば今腰に差している黒刀である。


 そしてその武器の大半は自身の能力を強化する性能が備わっている。例えばライカのトールは雷の威力を何十倍にも膨れ上がらせると聞く。


 従ってもしあの時にライカがトールを持ってさえいればもっと戦えたかもしれない。そうライカは言っているのだ。まあ、武器を持ったカリンとトールを持ったライカが居れば奴は倒せただろうと思う。


「私も自分の武器欲しいなー」


「リアは多分義父上が買ってくださるか伝手で作ってくださると思うけど」


「まあもしよろしければ私が作っても良いですけどね」


「え? クロノって剣を作れるの?」


「まあ一応は。趣味でいじっておりましたので。リア様には能力を流してもらいますけど」


 俺の言葉にその場にいた全員が呆けた顔でこちらを見てくる。


「剣を打てるって最早、趣味の範疇じゃないと思うよ」


「昔、世話になった人が鍛冶職人で教わってたらできるようになったんだ」


 彼女の顔は今でも覚えている。俺が守ることのできなかった戒めとして心に刻まれているのだ。こみあげてくる懐かしい思い出をかみ殺す。


「じゃあいつか私の武器を作ってもらおうかしら」


「はい。とはいえ炉などの設備は必要ですのでまたの機会にとはなりますが」


 流石に破壊して武器の形をかたどったところで強度の高い武器を作ることはできないからな。当然それ相応の設備は必要になってくる。


「また帰ったらお父様に頼んでみるわ!」


 そういって微笑んでいる姿のなんとお美しいことか。これが天使! 否、女神!


「ねえ、クロノ。顔が気持ち悪いよ」


「うるせえ。余計なお世話だ」


「それはそうと私も作ってほしいな」


「カリンもか? その黒刀もかなりの業物だと思うが」


「この黒刀は実家のことを思い出しちゃうからね。あまり使いたくはないんだ」


 それもそうかと納得する。一応はイシュタル家からもらい受けた刀だったからな。


「せっかくだしライカも作ってもらったら?」


「私は良い。トールがあれば」


「だろうな。剣や刀ならまだしも槌は俺の専門外だし、トールを超えるものを作ることはできないからな」


 そんなことを言い合っているうちに馬車の乗り合い所に着く。今回の依頼は外れにある村での依頼のため、馬車に乗っていく必要があった。


 乗り合い所にある小屋の中に入る。


「すみません、コムギ村まで送ってほしいのですが」


 乗り合い所の小屋の中で腕を組んで座っている一人の男にリア様が話しかける。男はその言葉に反応して無言で立ち上がると、


「45分だ」


 そう呟く。


 横に5分100ゼルと書いてあるため料金を寄越せってことなのだろうか。それにしても先に料金をもらうとはよほど45分という時間に自信があるらしい。


 リア様が900ゼル支払うと男は歩いていく。


「外で待っていろ」


 そうぶっきらぼうに言うと男は小屋の奥へと歩いていった。

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