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62話 楽しそうな予定

 あれから1週間が経ち、今日から1週間の強化合宿が始まる。俺は早々に寮をでて、女子寮へと向かう。女子寮にの前には大きなカバンを持ったリア様とガウシアが既に待っていた。


「おはようございます、リア様。ガウシアもおはよう」


「おはよう、クロノ」


「おはようございます、クロノさん」


「今日は早かったんですね」


 いつもならこの時間はまだリア様が中で出る準備をしていらっしゃるくらいなんだがな。


「うん、楽しみだったから」


「お恥ずかしながら私も学友と共にお泊りに行くことなんてありませんので、ドキドキして早く起きすぎてしまいました」


 リア様は笑顔で、ガウシアは少し顔を赤く染めて言う。


 二人ともこの日を待ちわびていたのか。俺は普段の寮での生活となんら違いを感じなかったから特に楽しみという感情は無かったが。


「今から行くと少し早いですかね……」


 コミュニティカードに写し出されている時計はまだ6時を指している。集合時間は8時30分のため、早すぎるのだ。


「でしたら気長にここでライカさんをお待ちしてから集合場所に行きましょうか」


「そうね」


「ああ、そうだな」


 ガウシアの提案に賛成の意を示し、その場に背負っている大きなカバンを降ろす。


「そうだ、クロノ。渡されたしおり見た?」


「まだ見ておりません」


 実は一昨日くらいに合宿のしおりが学長から手渡されていたのだが、そのままカバンに突っ込んだため、まだ中を読んでいない。


「ちょうどいい機会ですからこの場でしおりでも読みましょうか」


 そう言ってガウシアがカバンの中から表紙に手書きで大きく「ワクワク強化合宿」と書かれたしおりを取り出す。


 ガウシアがページをめくり、今日の分の予定が書かれているページを開く。


「へえ、意外とちゃんとしているんだな」


 今日は昼くらいに着くと、そこから能力を操る訓練をじっくりとやってから個人同士での実戦で終わりか。次の日はどうだ?


 朝8時からまた能力を操る基礎訓練から始まり、実戦、チームに分かれての模擬戦、ああ団体戦の練習だな。それと、夜には肝試しか……肝試し!?


 一瞬、読み飛ばしそうになった項目を二度見する。


 それでもまだ自分の目を信じられず、ごしごしと目を擦るともう一度じっくりと予定の下の方に書いてある文字に目を凝らす。


「うん、なんで予定に肝試しが入ってるんだ?」


「合宿なんだから当然でしょう?」


「当然、なんですかね?」


 リア様の言葉に俺は首を傾げながらも次の日、その次の日と目を順々に向けていく。どの日にも遊びが入っているな。


 付き添いの教師は学長とそのほか非常勤講師が8人ほどか。


 あの学長、もしかして自分が遊びたいがためにこの合宿を計画したんじゃないだろうな……。


「これは楽しみになる理由が分かるな」


「でしょでしょ?」


 リア様が嬉しそうに目を向けてきたので俺も軽く頷いておく。正直、訓練のための合宿と聞いて楽しみでもなんでもなかったため、この情報は非常に喜ばしいものだ。


 そうして合宿の(遊びの)予定を眺めながら話し合っているうちに時間が過ぎていく。


「……おはよう」


「おはよう、皆」


 そうして7時半くらいになり、目をこすりながら寮から出てきたまだ眠そうなライカと元気そうなカリンを加えて、そのまま集合場所に向かう。


 集合場所にはまだ誰も居ない。まだ1時間くらい前だから当たり前か。


「おお、早かったじゃないか」


 まだ春だというのにサングラスを付けた私服姿の学長が歩いてくる。


「おはようございます」


 リア様の挨拶を皮切りに順々に学長に挨拶をする。


「ああ、おはよう」


 学長も挨拶を返すと、近くにある段差にどさっと腰を下ろす。


「お前達も座ったらどうだ? これから後1時間待つんだし」


「いえ、お気になさらず」


 ライカだけは素直に近くにあった段差に腰掛けるが、リア様もガウシアも学長の提案を断る。十中八九下が汚れるからだろう。リア様が立つのなら俺も立っておくか。


「やあ! 皆! おはよう!」


 少しして、朝にもかかわらずいつも通りハキハキろした様子のクリスが集合場所に到着する。


「クロノは相変わらず早いな」


 クリスは立っている俺の横でカバンを降ろすと、開口一番にそう言ってくる。


「俺はリア様をお迎えに行かないといけないからな。そうしたら必然と早くなる」


「へえ、主人思いなんだな」


 感心したように目を細めて言う。


 そうして次から次へと付き添いの教師が来て、最後にセレン会長も到着する。


「では、行こうか」


 学長の言葉を聞き、俺達はすでに呼ばれて近くで待っている馬車に乗り込むと、合宿所へと向かうのであった。



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