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57話 話の続き

「どうやらエヴァンは戦えないみたいだね。聖域の外に出そう」


 アンディがそう言った瞬間にエヴァンの体が消えていく。


「さてと、どうやら僕たちが思っていたよりも君は強くなっているんだね。能力強度『0』からどうやってそこまで強くなったのかな?」


「お前に答える義理は無い」


 あの時は能力をコントロールしきれず、『破壊者』を少しでも出したら測定器を破壊してしまうがゆえにああいう結果になっただけで、本当は能力強度が『0』だったわけじゃないんだがな。


 そこまで事細かに教えてやる義理は無い。


「アンディ、言っていたでしょう? クロノは強いって」


「そうだね、君はクロノの話題が出るたびにそんなことを言っていた。セレン、君の瞳は彼をどう見た?」


 アンディが問うと、セレンは震えながら俺を指差す。


「ば、化け物」


「化け物か……君の能力ならこうなる前に分かっていたものだと思うけどな」


「ごめんなさい。正直、侮っておりましたわ」


「まあ、君を責めても仕方がないか。僕も気付かなかったわけだし」


 あの爽やかな表情に若干の焦りが走るのが見える。


「一人抜けた穴はでかい。でも、大丈夫。この聖域においては僕はカリンよりも強いから」


「えっ」


 一瞬の間、目を離したその瞬間にカリンがその場から消え、アンディの目の前に移動する。


「スナッチ」


 無防備にアンディの目の前に放り出されたカリンに光り輝いた両刃の聖剣が襲い掛かる。


「カリン!」


 カリンもその強靭な勇者の能力でなんとか黒刀での防御態勢に入れたが、少し遅れ不完全なままアンディの持つ聖剣の攻撃を受けてしまう。


「くっ」


「まだ終わらないよ。スナッチ」


 攻撃を受けたばかりのカリンを容赦なく『聖王』の能力が襲い掛かる。


「そうはさせるか!」


「おっと、君はまだお呼びじゃない。ディスタンス」


 あと少しでアンディの下にたどり着くところで能力を使われてしまい、俺の体は遠くへと追いやられる。


 そうして遠くの方に見えるのはアンディの目の前に背を向けたカリンの姿。


「まずは一人、だね」


 カリンの背中をめがけて大きな聖剣が振り下ろされる。先程とは違い、背中からの攻撃のため、カリンの剣も間に合っていない。


空間破壊(エアロブレイク)


 リア様との決勝戦でも使った、この技。あの時は力を弱めていたため、爆発が起こっただけだったが、真に空間を破壊すればどうなるか。


「なっ、いったいどうやってここまで……」


 答えはこうだ。俺は目の前に広がる空間をすべて破壊し、アンディの聖剣とカリンとの間に一瞬で移動する。こうすることで俺は疑似的に瞬間移動することができる。


 ただし、後方で爆発は起こるため日常生活では使えないが。


 アンディの聖剣を俺の破壊の拳がはじき返す。


「ふぅ、危ねえ」


 冷や汗かいたぜ。こんなことなら聖域をぶっ壊せばよかったか?あいつらにとっても都合は良いが力を知られたくない俺にとっても都合がよかったからそのままにしておいたが。


 そう考え事をしていると、トンと背中に何やら柔らかい何かを感じる。


「ありがとう、クロノ」


「お、おう」


 こんなところで抱き着くなと言いたいところだが、悪い気はしないため気持ち悪い返しになる。


「まだまだ、君には不思議なことが沢山あるようだね」


「ああ、だがお前がその全てを知ることはない」


「何故だい?」


「俺が本気になるほど、お前達は強くないからだ」


 俺がそう言うと、今まで爽やかな笑みを浮かべていたアンディの顔が初めて不快で歪む。


「僕たちが強いって言ってるからってあんまり調子に乗らない方が良いよ?」


「いえ、アンディ。あれが言っているのは本当のことだわ。私達では到底太刀打ちができない」


『千里眼』の能力で俺を見たセレンは先程からぶるぶると震え、縮こまったままだ。これでは使い物にならないだろう。


「さて、あんまり長引かせるのは性に合わない。もう終わらせるか」



 ♢



「ダンレン様、竜印の世代は勝てますかね?」


 部屋に取り残されたダンレンが周りで使用人が倒れたものを救護室へと運んでいるのを見て、自身の主人であるシノに問いかける。


「勝てるだろう。カリンが居るとはいえあの聖域の中でアンディに勝てる者はおらん。それこそ現1位ですら不可能だろう」


 シノは今もなお、竜印の世代、とりわけアンディの勝利が揺るがないことを信じ切っており、そこに鎮座している。


「そう言えば何故、あの者をまた迎え入れようと思ったのですか? 正直もっと後継者にふさわしい者は他にいると思うのですが……」


 ダンレンにはわからなかった。もっと強い他の者を養子として迎え入れ、後継者とすればよいのになぜクロノにこだわっているのかが。


「強き者か……確かにあやつよりも強い同じくらいの年の者はいるだろう。だが、その血が高貴なものとは限らない。勇者の血には高貴な血しか受け入れられないのだよ」


 そのため、公爵家次男のジオン・ゼオグラードに目を付けていたのだ。


 普通の者から考えれば、公爵家の息子を養子とするなどという恐れ多いことを実行する者はいないだろうが、この男、シノ・エルザードはそういうことを平気な顔をしてやってのける。


 今回は後継者として最も都合がいい、強くなったクロノを標的にしたが、クロノが弱いままであったら間違いなくジオン、もしくはリーンフィリアを狙っていたことだろう。


「……左様でございますか」


 ダンレンがこのお方はいつもこうだと考えていると、突然部屋の真ん中に空間のひずみが生まれる。


「邪魔が入ったがようやくちゃんと話せるな」


 ひずみから出てきたのは無傷のクロノと少し傷を負ったカリン、何故か怯えた様子のセレン、そして倒れているアンディの姿であった。


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