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54話 戦闘開始

「やはり雑兵ではダメか」


 使用人がささっと現れ、分家当主5名の手に武器が握られる。


「流石にカリンといえども儂等5名を捌ききることなどできやしないだろう?」


「衰えたとはいえまだまだ3桁には入っているからな」


「カリン、育ててきた恩を仇で返しおって」


 イズール家当主、アイザック家当主、そしてイシュタル家当主がゆらっとこちらに向けて構えをとる。


「次は私にやらせて」


「別にいいが、二人でやればいいじゃないか」


「良いの、これは私のケジメだから」


 赤紫のオーラがカリンの体を纏っていく。その能力強度の高まりは以前見た時よりも格段に向上している。


「……念のため、竜印の世代も呼んでおけ」


「畏まりました」


 シノはその様子を見ると、近くに居た使用人に竜印の世代を呼びに行かせる。


「怖気づいたか?」


「カリンに守られているだけの分際で生意気な!?」


 この中で一番血の気が多いであろう、アイザック家当主のカイヴァンが曲刀を手に詰め寄ってくる。


「クロノに攻撃したければまずは私を倒すことね」


 俺を守るようにしてすっと前に現れたのは世界で2番目の能力強度を誇る勇者。これほどまでに信頼できる護衛はいないだろう。


「任せるぞ」


「ええ」


 カリンには前を任せ、俺は後ろの扉を警戒する。


「この裏切り者が!」


 カイヴァンは勢いよく曲刀を振りかざす。


 カリンはその攻撃を剣で受ける素振りを見せない。寧ろ、剣を構えて攻撃の準備をしている。


「あなたの能力は既に知っている。ならば、わざわざ受けてあげる道理はない」


 赤紫のオーラが増幅し、黒く光る刀身に集約されていく。


覇斬(はざん)!」


 絶対的な力が曲刀を振りかざしているカイヴァンの身に降りかかる。


「ぐわあああああ!!!!」


 カイヴァンはその曲刀を振り下ろす隙も与えられずに斬撃に薙ぎ払われる。


「こ、殺してないよな?」


「一応、殺してはいないわよ?……多分」


 なんとも不安なお返事ありがとうございます。


 まあ、こいつが本気を出せばこの屋敷ごと切り裂くはずだから本気ではないことは分かる。


「……隙あり」


 ガキィィン!


 凄まじい速さで振り下ろされた剣が卓越したカリンの刀捌きによって防がれ、甲高い音が鳴り響く。


「ちっ、やれなかったか」


 俺とカリンが話しているから隙があるとでも思ったのだろうか? その不意を突いたかのように攻撃を放ったイシュタル家の当主、ゼツはカリンにいとも簡単に防がれてしまったことにいら立ちを覚え、そう吐き捨てる。


「別に隙なんて作った覚えはないけど」


 ゼツの能力は『剣聖』、つまり剣のことならば右に出る者はいないはずなのだ。


 しかし、カリンはその剣聖の剣戟をいとも簡単に捌いていく。


「くっ、何故我が刃が通らん!」


「それはあなたが私に毎日訓練だと言って自分の剣を見せていたからだと思うけど? 今更代わり映えの無い剣を見せられても」


 普通の人にとっては卓越した剣術でもカリンからすれば見慣れた剣術なのだ。皮肉にもある意味で剣聖の剣を最も理解している。


 ガキンッ……


 常軌を逸した程の卓越した剣術のぶつかり合いは突如として終わりを告げる。勇者のオーラに強化された剣が剣聖の握っている剣を真ん中から真っ二つに折ってしまったのだ。


「今まで育ててくれてありがとう。でももう少し、エマおばさんみたいな愛が欲しかったな」


「……くそっ」


 剣を折られてあたふたしている剣聖、ゼツの背後に回り込むと、カリンは剣の柄の先の方をゼツの後頭部にたたきつけ、意識を刈り取る。その時のカリンの表情はなんとも言えない悲しそうな表情であった。


 残るはダンレン・イズール、ギーズ・クラウン、ディラン・ベルトーニ、そしてシノ・エルザードの4名だけだ。


 ああ、竜印の世代を含めたら後7人か。


 そう思って部屋の中をぐるりと見回すと、何か違和感に気が付く。


「私のことを忘れているようだな」


 カリンの影の中から音もなく現れたのはクラウン家当主、ギーズ・クラウンであった。


 しまった、全く気が付かなかった。


「ブレイク!」


 俺は破壊の力を使い、ギーズの手に持つ短刀を粉々に破壊する。


 カリンも気が付き、サッとギーズから距離を取る。


「危なかった。ありがとう、クロノ」


「ああ。だが、やっぱり不安だから俺も参戦する」


「……うん、わかった。ケジメは付けた気がするから」


 俺とカリンは隣同士に立って構えをとる。


「得体のしれない力を使いおって」


 忌々しそうにギーズが吐き捨てる。


 今は4対2。少なくとも竜印の世代が来る前に分家の当主は倒しておきたいが、果たしてどうなるやら。


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