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47話 クロノの怒り

「誰だてめえは!」


 俺の目の前にいる男がこちらに短剣を向けて威嚇してくる。


 俺はそれには答えずに短く、はっきりと答える。


「リア様を返せ」


 破壊の奔流が俺の周りを囲っていく。そうして俺は地面を蹴る。


「は?」


 男は今、自分が何故攻撃を食らっているのか分からないだろう。俺の本気の速度は誰にも捉えることはできない。


 そうして短剣を構えていた男を倒すと、後ろにいる男共を睥睨する。


「て、てめえ、どうやら痛い目を見てえようだなぁ!」


 全部で5名。


 男共が全員、腰に差していた短剣を取り出して構える。


「痛い目を見るのはそっちだ。だが、今は待て」


 その言葉と同時に俺は神速の如き速さで移動する。目的は勿論、後ろで縛られているリア様である。


「もう大丈夫ですよ、リア様。私がこの虫けらどもを片付けますからね?」


 俺がリア様を縛っている縄を全て破壊すると、リア様はガシッと俺の体に抱き着いてくる。


「……怖かった」


「申し訳ありません、少し遅くなってしまいました」


 まさか、相手が俺がご一緒できない女子寮を狙ってくるとは思わなかった。そしてこのような芸当ができる奴を俺は一人知っている。


「き、貴様! いつの間に!」


「静かにしろ。今、リア様を慰めているところだ」


 ギロリと敵意の籠った眼で男共を睨みつける。


 大方、あの男のことだ。公爵家とトラブルにならないように賊にリア様が攫われたということにしようとしたのだろう。


 そして、恐らく用済みとなればこいつらは殺されていたことだろう。これで事実は迷宮入りだ。


 あいつはそれで俺が諦めて家に戻ることを懇願するとでも思っているのだろう。


 あ~、虫唾が走る。


「いつまでそうやってんだ!」


 一人の男が痺れを切らして短剣を振りかざしてくる。


「静かにしろと言ったはずだが?」


 破壊者の力を使い、手も触れずに男の体の内部を破壊すると、男はそのまま地面に倒れ伏す。


 殺してはいない。リア様が居るから。


「すみません、リア様。少し待っていてください」


「……うん」


 涙で赤く目を腫らしているリア様を心が痛くなりながらそっと離す。


「い、いったい何をしやがった!?」


「俺は本当ならお前達みたいなトカゲのしっぽには興味が無いんだ」


 俺は男の質問には答えずに静かに歩いていく。


「トカゲのしっぽだぁ? 俺たちはただの人攫いだぜ?」


 そう言った男に一瞬で詰め寄ると、腹を殴りつけ意識を奪い取る。


「不要なことはしゃべるな。今、俺に必要なのはお前らの言質だけだ」


「すかしてんじゃねえよ! このクソガキ!」


 そう言って襲ってきた男の意識をまたもや一瞬のうちに刈り取る。


「だから不要なことはしゃべるなと言っただろう? お前らはそんなことも分からないほどに脳みそが腐っているのか?」


 残る3人の男は俺に警戒して、飛び掛からずに短剣を構えたまま俺を注視する。


「それで良いんだよ。じゃあ、聞く。お前達の依頼主は誰だ?」


「……答えられねえな」


 やはり、こいつらは馬鹿なのだろうか。そう言うということは依頼主が居ると言っているようなものじゃないか。


「ふむ、3人は要らないか」


 俺はそう言うと、一瞬で3人の内、頭っぽい奴だけを残し、意識を刈り取る。


「ヒィッ」


 先程まで自分の横に居た奴等が一瞬で戦闘不能にされたのだ。これで俺がこいつらの生死を握っていることが十分に分かったことだろう。


 残った男は俺の姿を見て腰を抜かし、その場に崩れ落ちる。


「残ったお前に問う。依頼主は誰だ?」


「し、知らねえ!」


「知らない? お前達の稼業は依頼主の名前すら知らない状態でも依頼を引き受けるのか?」


「ち、違うんだ! 俺達はこういうことで稼いでいる専門の奴じゃねえ! ただのゴロツキだから金さえもらえればそれで良いんだよ!」


 それならば自身の情報を隠したままできるからこそ、公爵令嬢を攫うという大胆な行動に出れたのか。


 つまり、こいつは本当に誰から依頼されたのか分からないということだ。これ以上聞いても無駄だろう。


「そうか。だが、どちらにせよお前達はもう助からない。そこの御仁は公爵家の御令嬢であらせられるお方だからな。どちらにせよ衛兵に差し出してお前達は死罪となるだろう」


「こ、公爵令嬢……」


 自分が何をしたのか今やっと理解したのだろう。男は絶望に染まった顔を浮かべる。


「ど、どうか見逃してはくれませんか!?」


 必死で地面に額を擦りつけながら懇願してくるがもう遅い。


「うるさい」


 俺は容赦なく男の後頭部を踏みつけ、意識を奪う。


 そうして意識を失った男共を固く縛り付けると、リア様の下に戻る。


「リア様、お待たせいたしました。それでは帰りましょうか」


「……うん」


 まだ怯えていらっしゃるリア様の手を握り、ゆっくりとエスコートする。衛兵にはリア様を送ってから知らせよう。



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