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46話 人攫い

 俺は前に買ってもらった私服を着て、学生寮の庭にあるベンチに腰を掛けてガウシアを待つ。懐には念のために仮面も持ってきている。


「お待たせしました」


「ああ、それでリア様がいなくなったっていう話だったな?」


「はい、そうです。意外と落ち着いていらっしゃるのですね」


「俺はこいつでリア様の居場所が分かるからな。女子寮に居ないことは既に確認済みだ。だが、普通に出かけただけなんじゃないのか?」


 俺はコミュニティカードを取り出しながら言う。


「それにしてもこんな朝からというのはおかしくないですか? お店なんてどこも開いてないでしょうし、行くところなんて無いと思います」


「……それもそうだな。それに俺はガウシアかライカと一緒に出掛けているもんだと思っていたから少し心配になってきた」


 そこで俺はあの男の言葉を思い出す。


 後で俺がエルザード家に戻りたくなるという言葉を。


 まさか!


「いきなり立ち上がってどうしたのですか?何か思い当たることでもあるのですか?」


「ああ! あった!」


 俺の予想が正しいとすれば、あいつはリア様という俺の居場所を無くすことで俺を帰らせようとしているということだ。


 そんなことは許してはおけない。


「ガウシア、用事ができた! すぐにリア様の所へ向かう!」


「え、ちょ、私も」


 ガウシアが何か言いかけた気がするが、俺はすぐさまリア様のところへと向かうことで気が気ではなかったため、そのまま飛び出す。


 位置は、確かあっちだ。


 俺は今までで一番の全速力で走り続ける。その速さは音速を超える。


 待っていてください、リア様。今から私が助けに参ります!



 ♢



 目を覚ますと私は椅子に手足を縛り付けられていた。あまりの驚きに一瞬思考が飛ぶ。


「おや、起きたようだね。それにしてもお館様はどうしてこんなかわいい子を攫えと仰ったのかな? あっ、可愛いからか」


 顔の大部分を布で覆っている不気味な男が話しかけてくる。そして、その後ろには荒くれのような見た目をしている者がいる。


「ん~、んん~(この縄を解きなさいよ、この外道!)」


「ああ、そっか。喋れないよね。口を縄で縛っているから」


 一人で楽しそうに笑っている男にしびれを切らしたのか、荒くれの一人が声を荒らげる。


「おい! それでこのガキはいつこっちに寄越すんだよ! 依頼主さんや」


「ん? 別に渡すとは言っていないよ。ただ、預けると言っただけさ」


「同じだろうが!」


「まあ、同じことか。好きにしてくれていいよ。僕はここで帰るからさ」


 スタスタと少し歩くと、くるりとその男はこちらを向く。


「じゃあね~、可哀想な子猫ちゃん♪ お館様に目を付けられた君が悪いんだからね?」


 その瞬間、その場から瞬間移動したかのように男の姿が消える。


「たくっ、もったいぶらせやがって。さ~て、お嬢ちゃん、お楽しみはここからだよ~」


 男共の下卑た視線が私に一身に降り注いでくる。


「ん~、んん~ん!(近寄らないで!)」


「ああ~? 何言ってんのか分からねえぜ?」


「無理言ってやんなよ。喋れねえんだからよ」


「それもそうか。ギャハハハ!」


 まさに絶望的な状況。


 私は心の中である人の姿を思い浮かべる。


 その人は私の中で一番強くて、私が困っている時にいつも助けてくれる人。


 ――助けて、私の騎士様。


 ドガンッ!!!


 目の前にある大きな扉が突然何かの衝撃を受けて粉々になる。


「嘘だろ! この扉、鉄でできてんだぞ!」


 壊れた扉の向こうにある人影を見て私はほっとする。


 ああ、来てくれたんだ。


「て、てめえ! いったい何者だ!」


 その黒い髪の少年ははっきりと、そうして恐ろしい声音で告げる。


「リア様を返せ」

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