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45話 行方不明

 選考試合の次の日、疲弊した生徒が多いということで学園では休日となっている。


 俺はいつもと変わらない時間に起き上がり、机に置いてあるコミュニティカードを手に取りぼんやりと眺める。


 リア様からの連絡は無い。まだ起きていらっしゃらないのかそれとも今日はおひとりで過ごしたいということなのか。


「ふわ~あ」


 にしても昨日はすごく疲れた。試合の疲れもあるが、試合が終わった後に大勢の生徒に囲まれていた時が一番疲れた。


 因みに囲まれていたのはなぜか優勝した俺ではなく、俺が仕えていたリア様になのだが、その野次馬共を追い払うのが非常に疲れたのだ。


 俺は布団から出て、朝飯を済ませ、髪の毛を整える。


 一通り朝の用意をしてから考える。勿論、現在頭を悩ましているのはシノのことだ。


 あの時、確か奴は俺が帰りたいと思うようになるとかなんとか言っていた。それが俺の頭にこびりついている。そのため、何かやるのではないかと身構えていた。


 しかし、今のところ奴からの接触は無い。


 結局あれは脅しだったのだろうか。


 一回カリンに聞いてみるか。


 俺はコミュニティカードを操作してカリンに連絡する。暫く、呼び出し音が鳴った後にピコンと連絡を受け取る音が聞こえる。


「カリン、今、大丈夫か?」


『大丈夫よ。それでどうしたの急に?』


 俺からかけられることは無いと思っていたのか、驚いているようで少し声が上ずっている。


「少しシノ、つまり俺の元父親について聞きたいことがあるんだが」


『辺境伯様ね。どんなことを聞きたいの?』


「選考試合から帰ってから何か様子がおかしくなったところは無いか? 些細なことでも良い」


 俺がそう聞くと、カリンは困ったように唸る。


『うーん、ごめんね。それに関してはあまり力になれそうにないわ。昨日、帰ってきた辺境伯様に突然外部への任務へ行けと言われて今そこに向かっているところだから、その後のことは知らないの』


 カリンのその発言を聞き、内心で舌打ちをしたくなった。


 恐らく、カリンが一度メルディン王立学園に来ていることから、俺と繋がっている可能性を考えて遠くへ追いやっておいたのだろう。


 相変わらず用意周到な奴だ。


「分かった。ありがとう」


『うん、力になれなくてごめんね。また何かあったら連絡してきて?』


「ああ、またな」


 そう言ってカードを操作して連絡を切る。


「まあ、そう簡単に尻尾を捕まえさせてはくれないよな」


 暫くは周囲に気を付けた方が良さそうだな。


 俺は暇つぶしがてらにカードを操作する。このカードは実は、『ペアリング』という機能を使えば、お互いの位置情報を共有することができる。


 もし、位置情報を知られたくない場合はオフにすることもできるため、プライバシーの侵害にならないのが良い所だ。


 俺はそれをリア様と行なっていた。流石にライカやガウシア、カリンとはしていない。


 飽くまで付き人としての仕事のためにペアリングをしただけだしな。


 リア様は今、女子寮に居るのだろうか?


 俺はカードを操作してリア様の位置情報を見る。


 この位置情報を見る時、いつもイケナイことでもしているかのような気持ちになる。


「ん? どこだここ」


 ピコンとリア様を表す点は女子寮では無かった。どこか別の場所、少なくとも学園内ではない。


「なんだ、出かけていらっしゃったのか」


 恐らくはガウシアとかその辺と一緒なのだろう。


 それにしても早起きだな。昨日は俺よりも疲弊していらっしゃった気がするんだが。


 カードを机の上に置きなおし、俺はまたベッドに寝転がる。こういう何もすることが無い時はいつもこうやって二度寝を楽しんでいるのだ。


 そうしてベッドに寝転がって少し経った頃、俺のカードが鳴りだす。


 連絡をかけてきたのはガウシアであった。


「あれ? リア様と出かけてるんじゃないんだな」


 俺はそう思ってカードを操作して連絡を受け取る。


「おはよう、ガウシア」


『く、く、クロノさんですか!?』


「そりゃ、俺のカードにかけてるんだから俺だろ。そんなに慌ててどうしたんだ?」


『お、落ち着いて聞いてください!』


 お前が落ち着けよと心の中でツッコむ。


『リアさんがいなくなっちゃいました!』



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