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34話 あの時、カリンは①

 あの日、私は実家のイシュタル家にて能力を伸ばす特訓のようなものを行なっていた。丁度、昨日能力強度を測ったところ私の数値が高かったらしく、そのせいで今日はいつもよりも特にキツイ。


「では、カリン。ここいらで今日の特訓を終える」


 私の専属の講師が特訓の終了を告げる。


 ようやく特訓が終わったのか。イシュタル家はエルザード家という勇者の家系の分家と言われているが、実際は勇者の弟子の家系だということで血の繋がりは無いらしい。


「クロノ、どこに居るかな~」


 昨日、クロノも能力強度を測ったらしい。結果は聞いてないけどクロノなら多分凄い結果が出ているんだろうな。


 いつものようにエルザード家の門をくぐり、庭に入っていくと、珍しい顔に出会う。


 私と同じくエルザード家の分家の一つ、アイザック家の長男、エヴァン・アイザックであった。


「よう、カリン」


「え、ええ。こんにちは」


 ただでさえエルザード家に顔を出すのが珍しいうえに、いつも不機嫌でこちらが挨拶をしても無視をするくせに今日は何故だか挨拶を向こうからされる。


 よっぽど機嫌が良いのだろう。


 取り敢えず、気味の悪い笑みを浮かべているエヴァンをスルーしてエルザード家の中に入り、クロノの部屋を目指す。


「なんだろう?」


 中が少し慌ただしい。いったいどうしたんだろう。


 私は疑問に思い、近くに居たエルザード家の使用人に尋ねる。


「ねえ、何かあったの? 皆忙しそうにしてるけど」


「あ、ああっ、カリン様ですか。カリン様はあまり知らない方がよろしいかと……」


「どうして? 私が子供だから?」


「まあ、そういうことです」


 そう言うと、その使用人は終始私の質問にお茶を濁しそそくさとどこかへと歩いていってしまう。


「変なの」


 私が知らない方が良いってどんなことよ。子供だからって嘗めてもらっちゃ困るわ。


 このこと、クロノに言っちゃお。


 そう思ってクロノの部屋へと再度向かい始めると、またもや珍しい顔が地下室から出てくる。


「あら、カリンさんではありませんか。今日はどうしてこちらに?」


 丁寧な口調で話しかけてくるのは分家の一つ、イズール家の長女、セレン・イズールであった。


「別にいつもと同じよ。クロノに会いに来たの。というかそちらの方がどうしてここに居るのよ? 普段、来ないでしょ?」


 私がそう言うと、セレンは意外そうな顔をこちらに向ける。


「その様子ですとカリンさんは何も知らないようですね」


「何よ。さっきから皆して」


「皆、ですか。ああ、カリンさんに対して隠しているんですね、あのことを」


 そう言うと、セレンは得心がいった顔をしてこちらを向く。


「カリンさん、私達の間で最も強く誉れ高いあなたが知る必要のないことですよ」


「最も強く誉れ高い? 何それ?」


「直にわかりますよ」


 そうしてセレンまでもが意味深な台詞を残して去ってしまう。


 最も強くて誉れ高いってどういうこと? 本家のエルザード家長男のクロノが居るのにどうしてわざわざ私に向かって言うんだろう。


 何か嫌な予感がする。


 私はクロノの部屋に向かっていた足を徐々に速めていく。気付いたときには、エルザード家の木製の廊下を走っていた。


「クロノ!」


 私は普段から行き慣れているクロノの部屋のドアを思い切り開き、クロノの名を叫ぶ。


「……クロノ?」


 荒くなった息を整えながらぐるりと部屋を見回す。


 そこには居るはずのクロノの姿が無いうえに、置いてあった机や椅子などの家具すらも見当たらない。


 まるで人なんか住んでいないかのようであった。


 どうして? どうして私を安心させてくれないの?


 より一層強くなった嫌な予感が私の胸を締め付ける。


 私は勢いよく部屋を飛び出し、クロノの姿を探し始める。


 どこ? どこ?


 少しすると、庭に辺境伯様の姿と父の姿が見える。


 何を話しているんだろう?


 もしかすると、クロノのことかもしれない。そう思って耳を澄ます。


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― 新着の感想 ―
[一言] 大陸を恐怖に落とし入れた魔王として世界に認識されてるんだよな。だったら表向き何でもない新興で、実は復活を望んでいるってのが納得できる。魔神教団とか名を知られてる時点で何処かの国か宗教団体の庇…
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