表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
254/270

254話 日常の急変

 学園に入学してから1年が経過した。私の周りにはパーティで出会うような貴族の子達ではなく、腹の探り合いをしなくても良い平民の子や下級貴族の子達が集まっていた。

 お城から学園に通ってるからもちろん帰ったら護衛が常に付いて私を監視してるみたいな感じ。

 でも学園内ではいつも監視の目から解き放たれて友達とお話をしたり、一人で本を読んだりと王女ながらに中々学生生活を謳歌できているという自負があった。

 ただ、以前よりもゼファルとあまり行動しなくなってしまった。

 というのも私がロボット工学研究会っていう部活動に入って忙しいのもあるけど、それよりもゼファルっていう規格外の存在に多くの専門家達が学園に来て色々と対応しなくちゃいけないらしくそれで忙しいという方が大きい。

 1年の最初の頃はずっと二人で行動してたからちょっぴり寂しくもあったりなかったりして。


「うわ、またゼファルの奴が表彰されたらしいぜ」

「なになに。へえ~4つ目の能力が見つかったってか。こうなってきたら最早意味が分かんねえな」

「こんだけ跡取りが優秀なんだったらバルドーラン家の将来は安泰ね。ね? フィー」

「え、あ、うん。そうだね」


 クラスメイトに反射的にそう答えるも私の中では少し不安が残る。

 最近、ゼファルの躍進をあまりよく思っていない派閥が居る。それが私の父親を支持している国王派の貴族達だ。

 私はそういう政治とか嫌いだからあんまり知らないけど、最近バルドーラン家の悪評を矢鱈と広めている貴族たちの動きが嫌でも目に入るし、そのせいもあってゼファルに何か起こらないかが心配になっている。

 あっと、国王派とかいきなり言っても分かんないよね。今、グレイス王国は国王を支持する国王派と大貴族のメルディン家を支持するメルディン派っていうのが存在するらしいんだよ。

 で、メルディン派の中でもひときわ大きい家のエルザード家、その分家であるバルドーラン家が今滅茶苦茶株を上げてるせいで国王派の人達が起こっているんだってさ。

 まったく。豊かで対外的な争いがなくなった国ほど内部で争いが起きる仕組みはホントに何とかしてほしいよね。

 ま、それは我が兄上に託して私はのほほんと暮らしていくつもりなんだけど、その渦中にいるのが私の友達だから困ったものだよね。


「じゃあ私は部活があるから」

「はいよーまたねー」


 そうして私は教室から出て一人部室へと向かう。ロボット工学研究会の部員数は僅かに三名という少なさを誇っている。

 私とゼファル。そしてロボット工学研究会を立ち上げた偉大な先輩であるフリードさんで合計三人だ。

 実は私たちが入る前は部活存続の危機だったらしい。だから入った時はフリードさんから泣きながら歓迎されたものだ。


「お疲れ様でーす……ってまだ誰も居ないか」


 がらんとした部室に鞄を置き、ロッカーの中から工具を取り出す。今日は人間の身体を増強できる装備を実際に作ってみようとワクワクしてたんだよ。

 そう! 誰しもが憧れるパワードスーツ!

 王女特権によりロボット工学研究会はあり得ないほど潤沢な部費を得ることができるため、それを実現することができるのだよ。

 こういう時は王女でよかったって思うよね~。ま、普段の自由が少ない分、こんくらいの贅沢は許してよ。


「さ~てと。どんな能力を盛り込もうかな~」


 授業中に書いた落書きみたいな設計図を眺めながら工具を手に作業を進めていく。

 

「……って、あーしまった。ヘルメラが足んないよ」


 ヘルメラというのは透明な鉱石の事だ。グレイス王国でのみ精錬できる素材なんだけど、能力強度とかを流し込めば多彩な能力を装備とかに付与することができる貴重な鉱石。

 これを加工するのも意外と腕が要るらしいけど、私はなぜかすぐに加工できるようになって常用している。

 

「でもたっかいしすぐには買い揃えられないか~。ま、この辺で切り上げるか」


 誰も来ないし。ゼファルは最近はいつもの事だし不思議じゃないけどフリードさんは何でだろ?


 そう思っている時であった。ダンッと大きな音を立てて部室の扉が開く音が聞こえる。

 驚いてそっちを見るとそこに居たのは肩で大きく息をしているフリードさんの姿であった。


「どうしたんですか? そんなに慌てて」

「はあ、はあ、君には伝えておこうと思って来たん、だ」


 そうして息を整えながらいつもの穏やかな雰囲気とは異なる真剣な眼差しに緊張を覚える。


「ゼファル君が倒れた」


 その言葉を聞いた瞬間、私は部室から飛び出していた。

ご覧いただきありがとうございます!


もしよろしければブックマーク登録の方と後書きの下にあります☆☆☆☆☆から好きな評価で応援していただけると嬉しいです!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ