253話 学園への入学
「今年の一年、バケモン揃いらしいぞ」
「名門のエルザード家に隣の国の王女、それに加えてグレイス王国の王女に……」
「あ、来た。アイツだ」
「あれが入学試験総合1位のバケモン、ゼファル・バルドーランか」
壇上に上がったゼファルの姿を見て上級生たちが噂する声が聞こえる。
入学試験総合1位、それだけじゃない。ゼファルが今世界中から注目を受けている理由。それは……。
「何でも初めて複数の能力が観測された人間らしい」
「それって能力強度とかどうなるの?」
「分からんが、少なくとも学園においてある測定器じゃ測れなかったらしいぞ」
「バケモンすぎだろ。何だよそれ」
複数の能力を有する、それは王国の伝記をさかのぼっても一人たりとも例がない。まさしく史上初の複数能力持ちであるという事実が能力測定時に判明して一気に世界中から注目を受けた。
本来なら王女である私が入学生代表の挨拶をさせられるところだったのが、ゼファルが選ばれたのにはそこに理由がある。
私は挨拶とか全然したくなかったから別にそこに不満はない。まあバルドーラン家がエルザード家の分家だからっていうので若干エルザード派閥の貴族からは疎ましく思われているらしいけど。
「お疲れ、ゼファー」
「いや~緊張したよ、フィー。まさか僕がこんな大役任されることになるなんて思ってなかったからな。てか普通この役目は君だろ」
入学式の式場から教室へと向かう道中、ゼファルと合流した私が労いの言葉をかけると向こうからは若干恨み節の効いた言葉を投げかけられる。
基本的にあまり人前に立つのが得意ではない彼にとって今日の挨拶はさぞ重荷であっただろうことがその顔色から窺える。
こうやって歩いているだけでも周囲からの視線が凄いからね。よっぽどプレッシャーはかかってることだろう。
それでグロッキーになってるゼファルを見るのは面白いけどね。
そんな感じでゼファルを慰めながら教室へと向かっていると、私の前に進路を遮るように数人の男子生徒が出てきてその場で跪く。
「な、なに?」
「急で申し訳ありません殿下。私の名前はゴルドー・エルザードと申します。この度はご入学おめでとうございます」
「あーエルザード家の。ありがとう。それじゃ」
何となくいつもの面倒な雰囲気を感じ取った私はそれだけ伝えると足早にその場を後にしようとする。
その様子を見てかゴルドーと名乗った男の子はちらりと私の隣に立っているゼファルを見てこう言ってくる。
「殿下。何故そのような者とお戯れなのでしょう?」
「そのような者ってどのような者よ?」
「言いたいことは分かるでしょう? そのような身分の低い者という意味でございます」
はあ、エルザード家が権力に対して強欲だってのは知ってたけどまさか息子までこうだとは思わなかった。
一応、私の兄上がエルザード家の跡継ぎと懇意にしているっていうしあんまり波風立てたくないんだけど、どうしてもこういう絡み方されちゃうとムッとするよね~。
「学園では身分なんて関係ないのではなくって?」
「それは表向きの話でございます。そうしなければ平民から選りすぐりの優秀な者が入学してこなくなってしまいますから。かつてのエルザードのように」
エルザードが昔、平民から大貴族にまで成り上がれた話ね。エルザードの家の人って毎回この話してきてうんざりしちゃうんだよな。
「放っておいてくれない? 学園がそうだとしても私がそうは思ってないだけだから」
「……何故。何故なのですか? 本家である私ではなく分家のこいつなんかに」
「あのさ、政治絡みのお話をしているんだったら他所でしてくれない? そういうところだと思うよ。さっ、行きましょう。ゼファー」
「え、あー、うん」
そういって半ば強引にゼファルの腕を引き、私は教室へと向かう。
せっかくの学園生活だっていうのに腹の探り合いなんてしたくない。
それを感じさせてこないゼファルとの日々が楽しくって仕方がない。学園に入学した当初の私はそんな日々がずっと続いていくのだと思っていた。
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